遺跡の最奥
お宝探しが目的って訳じゃないんで、ほとんどの部屋はスルー。
マトスンの土産に成るかとも思ったんだけど、遺跡のお宝は基本ギルドの買い取りだし、あんまりオーバーテクノロジー過ぎると、あいつの糧には成らんしなと思って、態々探して回る様な事はしない事にした。
まぁ、喜びそうではあるから何か持ってってはやろうとは思ってるが……この辺のタイルとか剥がせねぇかね?
監視カメラの死角を潜り抜け、無線ハッキングで鍵を開き、警備ドローンを息を殺してやり過ごす……いや、本当にファンタジー世界でやるダンジョン探索じゃないと思うの。
むしろやってる事はスパイか怪盗かって言う。
『【真理】冒険者も盗賊も似た様な物ですから』
違うよ? てか、それ断言したら、色んな所に敵作るからね? この辺に居る一攫千金だけを夢見てる様な冒険者共は兎も角、家の領に来てくれてる商人さんの護衛や、魔物やら危険な害獣を駆除してくれてる様な冒険者の皆は真面目にお仕事してる人達ばかりだからね?
とかやってるうちに、所謂最奥にまで辿り着いた訳だが。
「予想通りと言うか予想外と言うか」
その騒音に、イブやラミアー、ティネッツエちゃん達が耳を塞いでいる。犬達は、最初の一瞬だけビクッと身を竦めはしたが、今はまるで対抗するかの様に吠えまくってるな。
ガガガガ、ガキョンガキョンと音を立てながらツルハシを振るいタンピングランマーで地固めをしてるのは岩から切り出した様な武骨なゴーレム。
その手前で足場を立てて骨組みを岩盤にアンカー打ちして、それに金属パネルを取り付けてる、細身だがやはりどちらかと言えば武骨なゴーレム。
正直ね、ゴーレムとかが拡張工事してるって予想はついてたんよ。何となく。ただね、それの指揮ってか監督をしてるのが……
「あれ、おまいらのお仲間?」
『【否定】別会社の製品です。マスター』
そうか、別の会社か。カーキ色の厚手のシャツとカーゴパンツの、ファティマ達と同系統な美術品タイプのゴーレムってかロボット少女。確かに可変とかしなさそうだし。
そしてその拡張工事を守るかの様に建てられているオレンジと黒のA型バリケード。工事現場でよくある『安全第一』とかって書いてあるアレと、更にその前で守っているらしき青白ツートンカラーに赤色灯を付けた四つ足の警備ドローン。
やべぇ、思ってたより手堅く安全第一で普通に地面の中の拡張工事してる。何か、もっと土魔法でババ―ンってな感じのファンタジーな方法か、特殊作業車使ってるってぇイメージだったわ。
コレだと、むしろ俺のやり方の方が力任せで危険なやり方な気がするわ。
そんな感じでほへーっと作業を眺めてたら、不意にロボ監督がこっちを見て、目元を擦り二度見した後こっちに歩いて来た。
『えっと? 今日見学の予定とか入って無かったと思ったけど?』
そりゃ入って無いだろう。多分このロボ監督、俺の後ろに控えてるファティマとジャンヌを見て、同業者だと思ったんだろうが、そもそもそこから間違ってるんだがね。てか、同業者って何じゃろ? 自分で言ってて訳が分からんわ。
『【肯定】我々は最奥に有る拡張工事の見学に来ては居ますが、関係者ではありません』
『え~と、それってつまり、冒険者って事?』
『【肯定】その通り、デス!!』
『え、えぇ~~~~~~……』
ロボ監督は現場と俺達を交互に見た後、片手をバッっと振るうと、見栄を切って来た。
『フハハハハハ!! よく来たな冒険者の諸君!! この私こそが、このダンジョンを与るボスである!!』
いや、この状況とその恰好で、大ボスっぽい事言われてもなぁ。




