テンプレ回収しました
「ふん! 餓鬼が遊び半分で来られると迷惑なんだよ!!」
何処行っても有るんだよなぁ。こう言うの、今更過ぎるが……
冒険者ギルドは、酒場併設の一般的なタイプ。まぁ、役所の奥に食事処が有る光景を思い浮かべれば、それ程外れちゃいない。
俺達は、そのギルドの開け放たれたままの入り口から入った直の所で、こうして難癖をつけられてる訳だ。
はいはい、テンプレテンプレ。まぁ、傍から見れば子供集団だからな、俺達。
多分、一番年上のラミアーですら外見年齢的には12才前後って所か。俺が実際は6才でも10才前後に見え、イブは年相応の9才。ティネッツエちゃんに至っては4歳児な訳だ。
それ以外は犬とゴーレムと言う、言わば色物しか居ないパーティ―。
その上、魔術師用ローブを着てるイブ以外はティネッツエちゃんが申し訳程度に皮鎧、それも動きやすさ重視のソフトレザーの胸当てとコルセットにガントレットとロングブーツを履いてるって位で、俺とラミアーは普段着だしな。
『【自信】こだわりの【絶対領域装備】です。マスター!!』
張り切って装備作らせてたもんなティネッツエちゃんの。
ラミアーは遠距離支援型で、防御は【念動障壁】なんで、防具要らねぇし、俺は近距離白兵型だけど、戦闘時はオファニム着込むか魔力装甲纏うんで、鎧とか必要ないんよね。
ちゃんとした冒険者装備してるのが冒険者には成れない10才未満の子供で、冒険者資格を持ってそうな二人は普段着と言うね。
これでまぁ、俺達が薄汚れてて申し訳程度でもガチガチの装備だったら違ってたのかもしれんが、この通り、良い所のお子様に見える訳だから、興味本位のお遊びに見えても仕方ない訳だ。
TPOって大事だよなぁ。例え異世界でも。
まぁ、それに合わせてやるつもりも無いが。
そもそも魔法なんて手段がある世界で、装備の見た目に拘るのもどうなんじゃろ?
「おい!! 何とか言ったらどうなんだ!!」
おっと、このまま放置も不味いか、受付に話を通しても無い状態で問題起すのもどうかと思って様子を見てたんだが、俺より先に娘さん達が暴発しそうだわ。
「……なら、子供を恫喝するのが冒険者の仕事なのか?」
「あぁ!?」
受付に居る職員達に視線を送ってみるが、どうやら口を挟むつもりはないっぽいな。冒険者同士のいざこざには口を挟まないのが不文律なのか、単に厄介事に関わりたくないだけなのか。
まぁ、良い。いざと成ったら権力を使わさせて貰うだけだし。そう言った時に使ってこその権力だし。
「俺達が、ダンジョンの“扉”で飛ばされて来ただけの子供だって可能性は考えなかったのか? 元の場所に戻る為の情報収集と言う可能性は? そうなれば、その為の依頼人と言う可能性だってあるだろう? にも拘らず、頭ごなしに否定と暴言を飛ばすと言うのは、むしろ、こっちの方が聞きたいくらいだ。なぁ『どう言うつもりだ?』」
冒険者風の格好をしている仲間が居た事で、“ガキの冒険者風情”って言う思い込みが有ったんだろう。俺に別の可能性があるって事を指摘され、男達が言葉に詰まる。もっとも今回に限っては、俺達は冒険者な上に嘗めた格好に見えるのも本当な訳だが。
「まぁ、もし依頼をする事に成ったのなら、お前等だけは外す様に頼む事にするがな」
「は、あ、いや、お坊ちゃんよぉ、オレ達、ちょっと誤解が有った様だ。な? ちょっとゆっくり話合わねぇか?」
「あのな、出会いってのは基本一期一会だ『どうしたんだ? こんな所へ』的に穏やかに話し掛けるってぇ選択も有ったにも拘らず、口頭一番でそれをぶち壊しにして来たのはそっちで、それに対する誤解なんざねぇよ」
けんもほろろに俺が突き放すと、男は取り成す様な態度から一変し、眦を吊り上げて俺に殴りかかろうとして、隣の男を殴った。
あ、ラミアーさんが半目で見ている。成程【念動力】か。流石にこういう時はポーズ付けないんな。
「おま!! 何で!!」
「い、いや、俺にも何が何だか!!」
同じパーティーであろう男に食って掛かられ、俺を殴ろうとした男がしどろもどろで言い訳をしているのを脇目に、俺達はとっとと受付の方へと向かった。
荒くれ者の男が多いせいか受付も屈強そうなオッサンばかりだな。家の領のギルドには受付嬢も置いて貰おう。うん。何か男共ばっかりだと、多少の荒事が有っても構わない様な雰囲気に成るって事が良く分かったわ。
男子体育系っぽい雰囲気と言うか。褒める時も怒る時も取り敢えず一叩きしてからって感じの。
こう言う所で受付嬢って、男性受け狙ってるラノベ展開のテンプレだとか思ってたけど、こういう雰囲気を払拭する為にはやっぱ必要だわ。
何事も理由ってのはあるもんだな。
俺が受付のオッサンの所に行くと、露骨に顔を顰められた。厄介事は嫌だなぁって表情で語ってるわ。
『【確認】潰しますか? マスター』
何でやねん。いや、このオッサンの態度は褒められたもんじゃねぇけど、分からんでも無いからな?
まぁ、目の前で恫喝まがいの事しててもスルーしてるのどうかと思うし、そう言う態度が、ああ言った輩を増長させてるんじゃねぇの? とか、言いたい事は山程あるんだが。
「……何か?」
「ダンジョンについて聞きたいんだが」
そう言ってギルドカードを出すと、オッサンが少し目を細めた。まぁ、俺の公称年齢からすれば、それ程可笑しかないランクだが、恰好とは合ってないだろうからな。
「って、おい!! 無視して行ってんじゃねぇ!!」
さっきの男が再び掴み掛って来るのを手首を掴んで放り投げると、そのまま縦回転での片手お手玉へ。
その尋常ならざる光景にギルド内に居た連中が呆気にとられる。
「どうでも良いから情報をくれねぇかね?」
俺がそう言うと、受付のオッサンは、『え?』ってな表情で俺を見た。




