冒険者ギルドの礎
国が遺跡を管理しない理由は、色々とあるが、このダンジョンの場合、生きているってのが、その理由らしい。
拡張を停止しているダンジョンなら兎も角、生きている場合、リアルタイムで罠等の位置なんかも変わる。ゲーム的に言うならば自動生成型ダンジョンと成る訳だな。
通常であれば、一度罠を解除すれば、そこは安全地帯に成るのだが、自動生成型となれば、入る度に罠は復活し、その上場所すらも変わってくる。下手すりゃ通路の位置まで違うらしい。
そうなると、事故や怪我と言ったリスクは格段に高まる。ってか、確実に起きるだろう。事故と怪我。だってその為の罠な訳だし。
確かに、ダンジョンは未知の技術やオーパーツの宝庫だが、確実に事故が起こると分かって居るなら、下手に保護は出来ない。
何か有った時、その責任は誰が負うのかって話。
だけど技術やオーパーツは欲しい。
その為の冒険者ギルドへの丸投げな訳だ。『買取はする。だけど探索は自己責任で』ってこったな。
******
「アイラルの街へようこそ、まぁ、死なない程度に稼いでいきな、坊ちゃん達」
街の門番にそう言われ、門をくぐった。
キャンピングカーの御者台に皆が身を乗り出し、街中を興味深そうに眺める。公都や家の街以外にも、余所の街を見た事はあるだろうが、ここまで冒険者特化な町ってのも初めてなんで、興味が尽きないらしい。大通りは、ダンジョンでの出土品だろう品物を運ぶ荷馬車が行き交い、その合間を縫う様にいかにもな冒険者達が闊歩し、その冒険者目当てだろう屋台が道の端に連なってる。
俺の領地も冒険者率は高いが、ここまで冒険者冒険者した冒険者達が冒険者丸出しの格好でのし歩いては居ない。
何と言うか活気と言うか熱気が凄いやね。
ダンジョンを売りにしているだけあって、俺のギルドカードですんなり町に入る事が出来た。まぁそれはそれで楽で良いんだが、俺のカードだけでこの大人数がオッケーて、ゆるっゆるだなここのセキュリティー。
それ以上に……
「なぁ、ここ、別の大陸なんだよな? 何で向こうのギルドカードが通用するんじゃ?」
『【説明】主にダンジョンの所為です』
ダンジョンの? ……あぁ、そう言う事か。
俺の隣で聖武器以外の仲間達が揃って首をかしげる。なんだろうこの可愛い生き物たち。
『【口惜】なんかオーナーの好感度がアップした気がするデス。今から参加してボクも好感度を上げるデス』
それは口に出したらダメな奴だジャンヌ。
取り敢えず、ジャンヌの事は放置しとくか。良く分からないらしくイブ達は未だに首をかしげ、困惑した様にお互いに顔を見合わせている。
『俺が答えて良いか?』と視線で訊ねると、ファティマがコクリと頷いた。うん。俺の考えで合ってるらしい。
「なぁ俺達は、どうやって新大陸まで来た?」
「“扉”?」
イブが答え、ラミアーとティネッツエちゃんが頷く。
「うん、家の国やエリスん所とかは、基本、ダンジョンって国が管理してるだろう?」
「いぶいぶ、そう、なの?」
「んっ」
「そうなんですね!!」
ラミアーの問いにイブが頷くと、ティネッツエちゃんがキラキラした目で俺を見て来る。いや、そんな目で見られる程、凄い情報じゃないからな?
ダンジョンってのは資源でもある。それも特一級の、だ。
通常の鉱山なんかは国以外にも領主や大商人なんかの資産家が管理下に置いてるってケースもあるが、それでも、発見され次第、国が管理下に置く場合ってのはある。例えば、金山なんかはそうだな。そしてそれはダンジョンも当てはまる訳だ。何せ、物によっちゃ、その内容物だけで国と喧嘩を始められる場合だってある訳だからな。
ファティマやジャンヌなんて良い例だ。
『【反論】ボク達だけで国と喧嘩なんてできないデス。そんな無茶を通せるのはオーナーだけデス』
……エクスシーアやラミアーだって大概強力だしな。
だが、そんなダンジョンだが、国が管理して無いって場合がある。ここのダンジョンみたいに生きてる奴もそうだが、それ以上に多いのが未発見のダンジョンだ。
「冒険者ってのは、未知の領域に飛び込んで、そこの資源を取って来るってのが仕事だろ? そうなると、まだ手付かずのダンジョンを“発見”するって事もあるだろうさね」
「!」
「未知の“扉”?」
イブとラミアーも気が付いたらしい。
“扉”ってのはつまり転移ゲートだ。未知のダンジョンの未知の“扉”なんて、何処に飛ばされるか分かったもんじゃない。
そう言った事に対処する為には、つまり、冒険者が必ず登録しておく場所が、どこでも全世界共通の仕様に成って居れば良く、もっと言えば、それ等が独自のネットワークでつながって居れば更に良いだろう。
それこそが冒険者ギルドであり、そう言った仕組みから作られたのが今のギルドの体制の礎なんだろうさね。
まぁ、つまりは、そう言う事だ。
そんな事を説明すると、ティネッツエちゃんの目が、更に輝き出した。
「さすが、さすがです!! とーるさま!!」
いや、俺が凄いんじゃ無いくて、その仕組みを考えた昔の人が偉いんじゃよ、ティネッツエちゃん。




