群れのボス
俺が戻ると、キマイラ達は身を寄せ合いつつも、俺からなるべく距離を取ろうとしてその都度、ミカ達に吠えられている。
そんなに俺が怖いか。いや、それ程怯えるなら最初から襲い掛かって来るなや。
キマイラリーダーは、何か諦めの境地ポイ感じで、俺の側でぐったりしている。
…………
「メエェ!?」
キマイラリーダーを掴んでいる所からプラーナを注ぎ込んでやる。あぁ、やっぱり魔法を使うだけあって、魔力形質が複雑だわ。
だが、この程度ならまだ対応出来るな。伊達に日々、ジャンヌとかにプラーナを注ぎ込んでは居ないのだよ!!
早送り再生の様に、パージされていた瘤部分が塞がり育って行く。ふうん、これって何度でも再生するんだな。蜥蜴の尻尾と言うよりは鹿の角の方が近いのか? 同じ鯨偶蹄目だし。いや関係無いか、魔物だもの。
このダミーヘッドに生え変わりと言う物が有るのなら、どんな状態になるのかちょっと見てみたくなったな。一斉に生え変わるとすると、その辺生首だらけに成るんじゃろか? 結構なスプラッタだと思うが、いや、そう言えば出血とかして無かったな。そうなると首が転がるだけ? いや、それはそれで結構なホラーだとは思うが。
俺が治したキマイラリーダーが、自身のダミーヘッドを見上げ、キョトンとしている。胸の方の羊顔は瞳がつぶらで愛嬌があるな。
キマイラと言えば、獅子と山羊と竜と蛇と蝙蝠の合成獣な訳で、山羊は兎も角、羊は居なかった筈なんだがね? 胸のってか本来の顔は……羊だな。獅子にも竜にも見えん。
ただまぁ、キマイラでな無く、もう一方の呼び名であるキメラであるなら、複数の生き物の特徴を持った生物的な意味合いにもなるから、そっちでなら合ってるかも知れんが。
******
『【苦笑】懐かれた様デスね? オーナー』
「むう」
「……」
「ワン!!」
「アオン!!」
「メエエェェ」
さっきからキマイラリーダーが俺に対して身体を擦りつけて来ている訳だ。
懐かれたと言うか媚び売られてる? まぁ、気持ちは分からんでもないが。
自分達では絶対に敵わないであろう強者で尚且つ傷を治してくれた恩人って感じなんだろうな。その傷、付けたのは俺だけど。
何と言うマッチポンプ!!
魔法を使ったりとか、敵わないと見るや即座に撤退して見せたりとか、結構な知能の高さを見せただけに、逆らっちゃいけないリストの上位に俺を位置づけたんだろう。
ただまぁ、こんな風に懐かれると、このまま殺しちゃって、美味しくいただきましたって感じには出来ないやな。計算だとしたら正しい計算高さだ。
まぁ、狩らないなら狩らないで、このまま守護者として、ここの“扉”に続く通路を守って貰おう。
うん。キマイラって事と相まって中ボス感半端ないわ。
そうなると、ラスボスは俺って事かぁ?




