キマイラと言うか何と言うか
噴射口にプラーナを更に注ぐと、一瞬のタメの後、一気に加速する。てか、Gが! Gが凄い!!
そのまま持ってかれそうな両腕をプラーナで強化し、ファティマを構え直す。
この辺、やっぱり自分で走るのとは感覚がまるで違うわ!
一足飛びで追いついた俺に驚いたのか、キマイラリーダーが嘶く。いや、ホントどっから声出してんの?
並走し、進行方向を塞ぐ様に、ファティマを前に出す。それをキマイラリーダーは横っ飛びで躱す。首のない状態で、何でこんな事が出来る?
そもそも首を斬り飛ばしたのに何で生きてるんだ? ニーズヘッグの時みたいに群体って訳じゃないだろう。この身体的構造で群体だったらそれこそ驚きだわ。いや、首が無いのに動いてる時点で充分驚きなんだが。
まさかアンデッドか? いや、だとしたらプラーナを纏ってるファティマと接触した時点でもっと反応があるだろう。多分。
だって、プラーナって生命力その物なんだぜ? それに無反応って時点でアンデッドってぇ事は無い、だろう、多分、恐らく……
あれ? 自信無くなって来た。うん。まぁ良いや。取り敢えず捕まえよう。
肩の噴射口にプラーナを注ぎ込み、こちらもキマイラリーダーに追従する。それを嫌い左右にステップを入れるキマイラリーダー。だがね、こっちもその為にオファニムを改造したんだよ!!
俺の身体能力向上にしろケルブとの合体にしろ、直線での加速と言う一点では高い能力があるが、小回りと言う点では難が出て来る。高速故の弱点だな。
慣性さん仕事し過ぎです。
それ故の改造。それ故の噴射口。正直、俺の魔力装甲に、そう言った細かい操作は出来んかったんよ。結局あれもプラーナの制御と言うより力ずくで押し込んでる様なもんだからな。そりゃあ細かい制御なんざ出来んわ。
一応魂も有って生きている判定のオファニムにそう言った改造を施す事に思う所が無くは無かったんだが、ファティマ曰く『【通訳】僕はマスターの為に存在してるんだから、もっとマスターの役に立てるんなら、改造だって何だってしておくれよ。と、言っていますマスター』との事で、有り難く改造施させて貰った訳だ。
ええ子や、オファニム。
「その気持ちにも応えんとな」
背部噴射口の出力をさらに上げ、キマイラリーダーの一歩前にまで抜きん出る。左足を軸に、肩、脹脛の噴射口を使い回転を加速させ、ファティマの側面でキマイラリーダーをハエ叩きよろしくブッ叩いた。
「メェ!!!!」
面でぶちのめされ、もんどりうって転がるキマイラリーダー。いや、胸元のモコモコから血ぃ吹いたな。え、何で? 切れる様な攻撃なんざしてないんじゃが!?
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「……あーダミーヘッドか」
キマイラリーダーを引き摺って皆の所に戻ると、散っていた筈のキマイラ達がウリ達に唸られ右往左往していた。牧羊犬かな?
そして、俺が切り飛ばした筈のキマイラリーダーの頭を見分したんだが、まぁ何と言うか、ソレが頭の様に見える瘤だと判明した訳だ。
いやね、吹っ飛ばしたキマイラリーダーの事、良く見てみたら、胸元のモコモコの中にもう一つ顔が有ったんよ。うん。本物の顔な。こっちは何ちゅうか山羊じゃなくて羊っぽい感じの。
じゃぁ、斬り飛ばした方の頭は何だったんじゃろか? って事での確認。
よくよく観察してみたら、あれだ、皮と脂肪の塊で、山羊の頭っぽく見えてるだけの代物だった訳だ。
前世でも居たわ。尻尾が頭部っぽくなっている様な蛇とか蜥蜴とか。
コイツは哺乳類っぽいけど、まぁ、魔物だし。
皮だけじゃなく脂肪も有るって事は、普段は駱駝とかと同じ様にここに脂肪を溜めて栄養を蓄えて居るんだろう。で、外敵から逃げる時は、このダミーヘッドを囮にする、と。
いやはや、変な進化してるよな、魔物って。




