久しぶりだぜ冒険家業
いや、まさか今更こんなテンプレートな展開に成るなんて、誰が思うよ。
「オウオウ、随分と別嬪さん連れてるじゃねぇか坊主」
「いや、兄貴、この坊主も随分と綺麗な顔してるじゃねぇですか。オレ、こっちでも……」
「まぁ、何にせよここは坊主みてぇな餓鬼が来る場所じゃねぇんだよ」
「そうそう、お前みたいなお子ちゃまは、帰ってママのオッパイでも飲んでろっての!!」
「ふん! 餓鬼が遊び半分で来られると迷惑なんだよ!!」
冒険者ギルドで絡まれるて、何度目だろうなぁ。それでも最近は無くなって来てたから油断してたわ。
まぁ、確かに、この場所じゃ、初見も良い所だろうけどさ。
「むう」
「やる?」
「オン?」
「アオン?」
『【嘆息】力量差も見抜けないのでしょうか?』
『【苦笑】仕方ないデス。人間9割は視覚に頼ってるデス』
「が、頑張ります!!」
そして家の娘さん達も何でこんなにやる気なのよ。いやまぁ、最初にガツンと行っとくのは構わんと思うのよ。所詮、冒険者は実力世界だし、嘗められたらケチが付くし?
ただなぁ、君達年頃の娘さんなんだから、もうちょっと、御淑やかさとか慎ましやかさとかそう言うのをだね……
結構な戦闘種族の聖武器二人や、狩猟本能バリバリなミカとバラキ、それと魔物なラミアー、冒険者としての自覚も高いイブさんは兎も角として、今日初めて冒険について来たティネッツエちゃんも何かやる気満々って、どうよ?
別に女の子だからって話ではなく、この世界、ある一定以上の地位に居る人間に求められてるもんがね……
「オウ!! 何とか言ったらどうなんだよ!! 坊主!!」
あー煩い。ちょっとは思案とかさせてくれねぇかね? マジで。
新大陸らしき場所で、さっそく絡まれてます。俺達。
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「そろそろ、状況も落ち着いて来たから、冒険に出ようと思うんよ」
「……もしかして自分が領主だって事忘れてます? トール様」
忘れて無いよ? ちょっとそれ以上に冒険者だって事を忘れてないだけだよ? ルールールー。
干渉受けない為に辺境伯に成ったのに、忙しくて自由に成れないとか本末さんが転倒してると思うの。
うん。今考えたら、適当に木々を切り倒したりして『開発中ですよ~』的なポーズをして、のんべんだらりとやってりゃ良かったんだよ。
何で俺、本気出して都市開発とかした? まぁ、家の孤児共とかコボルト連中とか見てた所為で、安住の地とか用意してやりたいなぁとかって思っちまったからだろうけど、だったらもうちょっと慎ましやかでも良かったんだよな。ただなぁ、前世ではシミュレーション都市ゲームとか結構好きだったんだよなぁ。よくよく考えるとあのゲーム、原発爆発してもその周辺で普通に生活してんのよな。
現実だったらそこでゲームオーバーだと思うんだがね。
まぁ、それはそれとして、やっちまった事はしょうがねぇ。何かこの言い回しだと俺がメルトダウンさせちまったよな感じになるがそっちの事では無く。結構立派に都市作っちまった方で。
思う所は有るが後悔はしていないって感じで。
「領主兼冒険者として遺跡の調査を……」
「それこそ冒険者を雇っては? ほら、あのテモ何とかっていうS級冒険者の方も暇そうに家の騎士団しごいてますし」
いや、それ、特級の地雷だからな? 多分アイツは戦闘無いと納得しないと思うの。下手すりゃ、俺に攻撃仕掛けかねんからな? そもそもあんな危険物、ダンジョンに送ったら、高確率でそこのダンジョン崩壊する未来しか見えんのよ。
「……好意で見てくれてるんだから暇人扱いは止めてやれ、それにアイツはアイツで依頼中の筈だから」
「そうなのですか?」
そうなんだよルールールー君。見えないだろ? アイツ、俺の監視の依頼してる筈なんだぜ? 傭兵国のギルド長に頼まれて。
そのギルド長が魔族だって事も含めて外に出せない裏事情。少なくとも俺は傭兵国の国王はその事実を知っていて使ってると踏んでるんだがね。
魔族って自身の欲望に忠実な分、変に刺激しなけりゃ、十分に共存は出来るからな。まぁ、時折、居るだけで国が滅びそうになる事があるだけで。
「そうなんよ。なんで、俺が行った方が早いの。大丈夫だって、ダンジョン探索なら結構こなしてるしって言うか、調べるの、俺が昔修行してたダンジョンだから」
「って言う設定でしたよね? 実質一回行ったきりの。ラミアーさんを発見したダンジョンでしたか」
そう言や、ルールールーはそう言った裏事情は知ってるんだったか。まぁ、孫に甘いルーガルー翁の事だから、そう言った事も含めてよろしくやってくれって事なんだろうけどさ。
修行させてやってくれって言う割にはそう言った保険掛ける辺りで駄々甘だと思うんだがね。まぁ良いけど。
「そう言う事だから、秘密保持的な観点からも、俺が行くしかないってのも有るんよ」
俺がそう言うと、ルールールーが顎に手をやり眉根を寄せ、須臾の間悩んでいたようだが、やがて溜息を吐いた。
「確かに、それだとトール様が行く他ない様ですね。分かりました。ですが、万全の体制でお願いしますよ?」
「分かってるよ」
良ぅし!! これでしばらく書類仕事とはおさらばできるぜ!!




