お仕置き中
腕立て伏せをしているエリスの背中の上には、成長著しいバラキが鎮座している。今、体重30kgぐらいか?
「アオン!!」
おっと、乙女の体重を気軽にしゃべったらダメだったな、済まん済まん。
「さて、言い残すことはあるか? エリスよ」
「うぬ! とっととオヌシ様がワシと婚約してくれればこんな事にはならなかったのじゃ!」
ほほう?
「ミカ、追加で」
「オン!」
エリスの背中に、さらにミカが乗る。
「うぬぅ!!」
ウエイト追加で更に重くなったにも関わらず、歯を食いしばって腕立て伏せをこなすエリス。
何が彼女をここまで駆り立てるのか? まさか、最後までこなせなかったら、速、強制送還が嫌だからって事じゃないよな?
まぁ、必死でお仕置きをこなすエリスを見守ってる訳だが、あんな華奢なエリスの背中でバランスとってるミカとバラキも何だけど、律義に乗せてるエリスも何だよな。やらせてる俺が言うこっちゃないが。
「ほ~ら、後247回だぞぉ。頑張れ頑張れ」
「ふぬぅ~!!」
いま、エリスには反省させる意味を込めて、腹筋、腕たせ伏せ、スクワット各500回をやらせている。犬達をウエイト代わりに。
成犬二体で大体成人男性一人と同じだからな。結構きついだろう。
だが、続けさせる。
「潰れたら最初からなぁ」
「鬼じゃ!! 鬼がおるのじゃ!!」
黙らっしゃい!! 今までなぁなぁでやってた所為で、国際問題になる所だったんだぞ、と。
「この際、お前が家に来るのは顔パスって事で通すとしても、窓から入って来るのはいい加減止めれ」
防衛的な観点からも、空飛んで入って来られるってのは問題があるからな。
砦の方にバリスタを設置する事も考えんとだよなぁ。
「今回の事で、空からの侵入に対する防衛を本気で考えんと成らんくなったわ」
「うぬぅ……」
「そうなると、たとえお前相手だったとしても、空から押し入ろうとしたら、警告後には撃ち落とすつもりで攻撃する事に成るからな? 正規に入って来る様にして貰わんと、お互いに困った事になりかねんのよ」
腕立てを途中で止めて、エリスが唸る。流石に今回の事については色々と思う所がある様だな。もっとも、もうちょっと早く自重して貰いたかった。
話に聞いた所、あのガチロリコン男、マジでエリスとの既成事実を作ろうとしたらしく、どうにか二人っきりに成れる様に動き回ってたらしい。
流石にエリスもそこは王族だけあって、二人っきりに成るって事の危機感はあったらしく、それをのらりくらりと躱して居たんだが、向こうが強硬手段に訴えかけて来たって事も有って、逃げて来たんだそうな。
「お前がヤバいって時は、こっちだって受け入れるさ。その時は聖弓経由で助けを呼んでくれたって良い。もしこっちに逃げ込む時には、なるべくすんなりと来れる様に手配もするしさ」
「うむ……」
それこそ、砦の門は最優先で使える様にはするし、そっちを使ってくれれば、追って来た奴が強引に飛び越えようなんてすれば、問答無用で攻撃も出来る。むしろ、その方が安全面では上のハズだ。
こっちの防衛的にもな。
しばらく思案顔だったエリスだが、やがて顔を上げると口を開いた。
「オヌシ様の屋敷の敷地に入ってからなら、窓から入っても良いかの?」
「何でやねん」
「幼馴染としてそこは譲れんのじゃ!!」
そこまでか!!




