そう言うプレイ
「う、嘘だ!! 辺境伯? ここがスルフォブルーローズの隣国だと!!」
俺の正体を知ったアリウスがガチガチと奥歯を鳴らしながら、そう叫ぶ。
フッフッフ、この俺が上位貴族四天王の内最弱の“伯爵”と言う事で油断したか? 上位貴族が『大公』『公爵』『侯爵』『伯爵』の四人だけだと誰が決めた!! そう!! この俺こそが四天王の五人目!! 『辺境伯』だったのだぁ!!!!
って、阿保なノリはここまでにしとくか。
『【疑問】四天王なのに“5人目”なのですか?』
『【困惑】上位貴族は別に四人しか居ない訳じゃないと思うデス』
おおっと、脳内で遊んでる所に態々【念話】でツッコミを入れて来るのは止めてくれるかな聖武器さん達よ。マジで恥ずかしいから。
ともあれ、目の前の王子様は、どうにか逃げ道はないかと視線を彷徨わせている。
どうやら、自分のしでかした事が結構な問題だって事に気が付いた様だな。ふむ、それ程、馬鹿って訳でもなさそうだ。
ちゅうか、当たり前だけど、他所の国でも魔人族って居るんだな。それも王族に。
隣国って事だから、婚姻による繋がりの強化か、攻め入らないってぇ安全保証の為の政略結婚だったのか。まぁ、それはどうでも良い。
現実問題として、こいつは不正入国をして、同盟国でもなんでもない他所の国の、しかも領主館に押し入って来てる訳だ。まぁ大体エリスのせいたけど。
だから何度も何度も、正規のルートで訪問しろと!
その辺ちゃんとしとけば、便宜くらいはかれるってのに、まったく。エリ太くんはしょうがないなぁ。
うんまぁ、それは良い。取り敢えず、エリスは“パスがあった”って事にしとくさね。
顔パスもパスの内って事で。
『【報告】国境の砦からは、貴人の通過は……【個体名】エリステラレイネ以外の確認は無かったと、それ以外は彼女を追っていた何かが居たと報告されています』
うん、予想通り予想通り。てか、砦の対空戦力の見直し、本気で考えんとな。それと、誰でも使える通信機の開発も。今の所、送信側にコボルトが居ないと発信が出来んのよね。それだとコボルトの特異性がバレっちまうからなぁ。
「さて、どうやら自分がどんな事を仕出かしたかの理解は出来た様だな」
「だが!! それはエリステラレイネ陛下が!!」
「あの方はこの街に迄に限って自由に通行できる権限を持っておられる。理由は、分かるだろう?」
まぁ、嘘だがな。それでも、緊急時にはとか何とかってぇ理由はつけられる。俺が魔人族国の伯爵位を持っているからとかな。
「ぐっ」
「悪い様にはしない。ここで大人しく捕まるのならな。抵抗する、逃げ出すと言った事をすれば、むしろ困った事に成るのはアンタの方だってのは理解出来るな?」
この場には聖犬と黒鎧も来ている。つまりは俺も空中疾走が出来るって事だ。
確かにアリウスは空を飛べるかもしれんが、俺からは逃げられないって事だ。むしろ逃げたら捕縛の為に攻撃する理由を与える事に成るからな。動く事は出来まいさ。
いや、むしろ『知らなかったのか? 辺境伯からは逃げられない』とかって出来るのか。うん。むしろ逃げてみてくれんかね?
『【質問】何故、辺境伯からは逃げられないのでしょうか?』
ファティマさんや、脳内遊びに質問せんでくれんかね? ……いやまぁ、『知らなかったのか?』から続く定型文があって、それに俺の地位を当てはめたってだけだから、とくに意味がある訳じゃないんじゃよ。
うおお、ゲームの前提条件由来のメタミームの説明とか、恥ずか死しそうなんじゃが? 何、今日は俺の羞恥プレイの日なんか!?
『【謝罪】すみませんなスター』
『【謝罪】そんなつもりは無かったデス』
いや、良いけど。今後は俺の脳内遊びに反応しないでくれると有難いです。マジで。
俺達がそんなどうでも良い事を【念話】で遣り取していると、アリウスは抵抗する事を諦めたのか、ガックリと膝から崩れ落ちた。
ふむ、素直に捕まるって事にしたことに免じて、地下留置場じゃなくて、貴賓室に軟禁って位で済ませてやるか。一応、王子様のハズだし。
ってか、この国の王子に始まって、この所王子づいてるなぁ。いや、王子づいてるて何よって自分でも思うが。
「よし、じゃ、この王子様は連れてってくれるか? ファティマ」
貴賓室に。
『【了解】分かりましたマスター』
そう返事をして、ファティマが連れて来た騎士にアリウスの連行を命じる。アリウスは、それに素直に従い、執務室から出て行った。
「……ルールールー、国王様ん所に口頭報告しといて。報告書は後で提出するけど」
処遇については国王様とも話し合わんとなぁ。国元に抗議はするとして、その他諸々も。
あぁ、エリスにも話を聞かんとな。




