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魔人族国の教育ってどうなっとるんじゃ!!

「実際、政務自体は聖弓と聖剣がやり取りしておるので、書類のサインを入れて判を押すだけなのじゃ、それも定期便で事足りるのでな、ワシがこちらに居ても何も問題は無いのじゃ」


 キャルの焼いたマドレーヌをパクつきながら、エリスがそう言う。だからと言って、砦に滞在し続ける理由にはならんのだがね。

 ってマドレーヌうまっ! また、腕上げやがったなキャル! 恐ろしい娘!!


「そもそも、城に居る方が面倒事が多いのじゃ」

「うん? どんな」


 俺がそう訊ねると、こっちをジロリと見た後、エリスは面白くなさそうに顔を顰めた。


「ご機嫌伺いだ何だと、謁見の申込みが多いのじゃ。その割には王族の義務がどうとかと、とにかく煩いのじゃ」


 王族の義務? あぁ、そゆこと。うわぁ、断ってる手前、話題に触れ辛いわぁ。

 つまりは『ウチの弟を息子を従兄弟を婚約者に』ってな感じで、親族を王配にどうですか? ってな貴族の申込みが多いと。

 『うへぇ』とか思って眉根を寄せると、俺の考えてる事が分かったのか、ローテーブルを乗り越えて、エリスが身を乗り出す。


「ちょっと、視線を逸らさずにワシの目を見るのじゃ。オヌシ様よ」


 いやだって、それって俺に婚約者にってぇ流れじゃんかよ。だから俺は今は婚約とか結婚とか(そういうこと)考えられねぇんだってばよ。

 俺の頭を掴んで強引に自分の方を向かせようとしていたエリスだったが、俺が動かないと分かると諦めたのか溜め息を吐きながらソファーに戻り、しかし、ビシッと俺に指を突きつけた。


「ぬう、まったくイケズなのじゃ、オヌシ様は。だが、覚えておくが良いのじゃ!! 魔人族の淑女(おんな)は、一途で諦めが悪いのじゃ!!」


 あ、はい。


 ******


 あれから遊戯室で遊び倒した後、夕食まで食べてエリスは帰って行ったわ。結局何しに来たんだ? アイツ。俺? 俺は執務があったから付き合わんかったよ。

 その代わりイブとキャルが最後まで付き合ってた様だが。結構仲良いんよな、あいつ等。


 で、そんなエリスが再び俺の執務室に来たのは、翌日の昼前の事だったんだわ。


「ちょ、オヌシ様!! 匿ってくれなのじゃ!!」

「……お前は無断入国せんと死ぬ病気かなんかなのか?」


 腕をクロスさせ、窓から俺の執務室に()()()込んで来たエリス。開いてっから。ガラスとか嵌ってないから。なぜ防御姿勢で飛び込んできた。

 ソファーで寝てたラミアーが一瞬ビクリと目を覚ましたが、エリスの姿を認めると、『ああ、何だえりえりか』と、また目を閉じて眠り直した。

 本気で対空戦力考えんといけんか? これ。


 いつになく慌てているエリスに溜め息を吐きながらそんな事を考えて居たんだが、埒もあかんので、視線でファティマにエリスの案内を頼む。

 チラリと窓の外を睨む。多分、エリスが慌てて俺の執務室にまた窓から飛び込んで来たのは、()()が、原因だろうな。


『【了解】分かりましたマスター。【個体名】エリステラレイネ、こちらに』

「うむ、済まぬのじゃ」


 バタバタと二人が執務室の隣部屋へと去って行ったのと同時に、()()()が、執務室の窓から室内に降り立った。

 輝く様な金髪に青空を切り取った様な碧眼。切れ長の目に高い鼻梁。何ちゅうか、絵に描いた様な白馬の王子様だよな。その二本の捻じれた角と蝙蝠の様な羽根を背に背負って無ければ。


「済まないが、こちらに僕のお姫様が来ていないか?」


 間違いなく魔人族の高位貴族。当主か子息かは知らんけどな。てか、どいつもこいつも不法入国と無断侵入せんと気が済まんのか? 魔人族の連中は。それも窓から。普通にどれもこれも法律違反だかんな?


「初対面の相手には挨拶からってのは教わらなかったのか?」


 俺の言葉に、少し不快そうに眉を顰めた男だったが、しかし、次の瞬間には気を取り直したのか、右手を胸に添えると軽い会釈をした。


「僕はアリウス、アリウス・ゲルベゼーテ。お姫様の……エリステラレイネ陛下の婚約者だ」

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