建前って必要なんよ
第二夫人は活動の拠点を完全にこっちに移す事に決めたらしく、俺の屋敷とは別にエスパーデル公爵家名義での屋敷も建てる事になった。
「でも、ちゃんと、トールちゃんのお家で一緒に暮らすから大丈夫よ?」
「あ、はい」
何が大丈夫なのか分からんのじゃが!?
仲間内で、俺の実年齢を知っている者の中で、特に信頼のおける相手には、第二夫人が俺の母親だって事は打ち明けた。イブとかエクスシーアとか。そもそもファティマとジャンヌは勿論の事、ルールールーなんかも知ってはいる訳だし、俺自身が身を守れる程度には力を着けた訳だし。
そもそも、国王様は知ってるしな。別に仲間って訳でもないのに係わらず。
まぁ、それは兎も角。基本は家の方に滞在して、時折公都に行くって様な生活サイクルに成るらしい。そんな生活で、今までは精力的に社交界での人脈造りをしていたのに大丈夫なのかとも思うんだが、夜会のシーズンを王都の方で過ごしてさえいれば、早々頻繁にお茶会を開くって様な事はしなくても大丈夫っぽい。
「むしろ、珍しい品物を扱ってるトールちゃんの所に居る方が有利って面もあるのよ?」
「そうなんですか?」
「トール様、珍しい物を手に入れやすい、貴重な品を手に入れやすいと言う事は、貴族にとって、自らの財力や、影響力を示すパラメーターでもあるのです」
俺の疑問にジョアンナがそう答える。
考えてみれば、エクスシーア商会で取り扱ってる商品って、貴族の間で人気のある商品が多いし、聖王国のリティシア嬢との取引もあるから、向こうの真珠やら香辛料やら美術品やらの取り扱いもしてる。
それに、元々大森林の奥深くに有るって事も有って、珍しい植物や魔物の素材なんかも流通しやすい上、コボルト達が貴重な鉱物を掘り出してもくれている訳だ。そしてそれらを加工してる、ドワーフって、華麗で華美な細工品を作る事で有名なんだったか。
そう言った商品を割と手軽に知り合いに送ったりできるってのは、成程、強みに成るのかもしれない。
「そう考えると、確かに高いステータスを示す指針として良いのかもしれませんね」
「そうなのよ。それに、私自らが、そう言った品々を吟味する為に滞在してるって言い訳も立つから、こうして長期間トールちゃんの所に居ても不審がられないのよ?」
ああ、そう言った事も考えてくれてるのね。
確かに対外的には、俺は新興貴族の若い当主でしかないし、第二夫人は公爵家の人間だ。
下手すりゃ若い燕って風にも見られかねないもんな。だけど、それに貴重品を取り扱ってるってバイアスを嚙ませれば、多少は言い訳も立つからな。




