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申し訳無い。

 ズシンッ、ズシンッなんて可愛げのある物じゃねぇ。ドッドッドッドッって言う地鳴りと地震。地面なんざ走ってたら、まともに走行なんざ出来んわ!! こんな物!!

 地面スレスレ、僅かに浮いた状態ってぇ省エネモードで、空を蹴りながら俺は疾走する。


 BUMOOOOOOOOOOOOO!!!!


 大気すら震わせる、怒り狂った牡牛の雄叫び。まばらに逃げていた筈の魔物達がそれで硬直し、哀れ不運な魔物は、逃げる事も叶わずに牡牛に踏み潰され命を落とす。


 これはあれか? さっきも兵士やら冒険者やらが硬直してた所を見ると、魔族の【恐怖(フォビア)】同様の、精神に作用する硬直系のスキルみたいなもんなのか?


『【完了】準備出来ましたわ!!』

「オウッ!!」


 聖弓を構え()へと撃ち出す。弧を描いて牡牛の方へと飛んで行く赤い光弾(エネルギーボルト)は、先程よりも時間があった分、威力は増している物の、しかし、牡牛に大きなダメージを負わせる事は出来ず、足止めに終始している。コイツが今、空中疾走ではなく、省エネモードでの疾走をしてる理由でもある。


『【謝罪】申し訳ありませんわ【個体名】トール様! ワタクシがもっと貴方様のプラーナを受け止める事が出来て居たら……』

「しゃぁあんめえよ、お前はまだ、魔力変換にも慣れちゃいないんだからさ」

『【感謝】……有難う御座いますですわ』


 まぁ、情けない事だが、牡牛を倒す算段が“まだ”付いてねぇんよ。

 最初っから、壊れても良いって位にぶん回してたファティマと違って、聖弓はあまり無理をさせられないからな。エリスんのだし。

 問答無用でプラーナを注ぎ込んでたファティマやジャンヌと違って、聖弓(こいつ)はまだ、それ程大量に注ぎ込まれる事にゃ慣れてないだろう。多分、俺の魔力庫と同じで、現界を超えて注ぎ込む事でキャパシティーを増やせるんだろうが……痛いからな、アレ。

 そう考えると、ファティマ達程のキャパシティーが無いのはしょうがない事だろうさ。


 それに、これは俺の鍛錬不足って側面もある。【エクステンド】はある程度なら体の外側に伸ばせる訳なんだが、伸ばしすぎれば拡散してしまう。だが結局これって、俺のプラーナの圧縮率がまだまだ甘いってぇ事でもあるんよな。それは牡牛に対し、かすり傷程度しか付けられないのも同じ事だろうし、多分、もうちょっと時間を掛ければ、【エクステンドドリル】を威力マシマシで穿てるんだろうが、それを即時で出来ない程度にしか集中できていないって事でもある。


 こうなってみると、随分とファティマに甘えてたって事が分かるわ。

 っても、この状況で嘆いてたってしょうがない。手持ちのカードで何ができるかを考えんとな。


「……なぁ、矢の形状ってのは変えられるか?」

『【肯定】ある程度なら』

「なら、回転ってのはさせられるか?」

『【肯定】はい、たぶん大丈夫です』


 この場で即座に出来る方法なんざ、そうそう有りはしない。ありきたりな手ではあるが、やらんよりはマシだろう。

 聖弓を構える。

 さっきまでと同じ様にプラーナを注ぎ込むが、それで出来る形状を(たま)ではなく(たま)の様に成るよう指示する。

 そして回転。その形状を維持したまま回転する様に。


 ギュルギュルと、おおよそ矢の出す様な音ではないモノを響かせながら銃弾型へと凝縮されたボルトが、引き絞った右手と弓を構えた左手との、その丁度中間に回転しながら浮かんでいる。


「なんか、シュールな光景だわ」


 大きさ的には、銃弾と言うよりペットボトルロケットと言った感じに形成されて行く。

 聖弓も、今までの攻撃が威力不足だとは分かっているんだろう。細かい呻き声を出しながらも、先程まで以上に俺のプラーナを受け入れ、凝縮し……


『【完了】……準備、出来ましたわ』

「オウ」


 俺は上半身を捻ると、こちらに猛突進してくる牡牛を凝視する。

 目を血走らせ、涎を垂れ流しながら鼻息を荒くしている。あぁ、効いていないと、致命傷に成っていないと思っていたが、確かにそれらは牡牛に、痛みと苛立ちとを募らせるには充分だった様だな。

 俺は怒り猛る牡牛に向かい、ギュルギュルと唸りを上げるソレを解き放った。


BUMOOOOOOO!!!!


今までの雄叫びとは違った確実な悲鳴。分厚く硬い皮膚を貫き穿ち、その()()は、確実に牡牛の身体に突き刺さった。


「聖弓、まだ、行けるか?」

『【肯定】……勿論ですわ』


 あからさまに足の遅くなった牡牛を横切るように走りながら、2射、3射と足に撃ち込んで行く。

 ドスンッドスンッと歩みが遅くなり、そしてついにはその膝をついた。


 ブルルッと、首を振る牡牛。しかしその瞳には、未だ闘志が宿っている。

 一撃。一撃で落さなければ、回復されてしまうかも知れない。だが……

 指先から感じる聖弓の震え。恐怖ではない。恐らくは幾度も限界を超えたが故の疲労。

 最後の一撃を確実に穿てるかどうか……


『【平気】大丈夫ですわ。ワタクシを使って下さい』


 こちらの動きが無い事を見て取った牡牛が、立ち上がろうと身を震わせる。


 さて、どうする?

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