さあ、狩の時間だ
コカトリスの数が減っていた事も有って、防壁外へと兵士が飛び出して行く。迫って来ている魔物の数自体は地上の方が多く、飛び回っている魔物も増援で来た者達で何とかなりそうだったことも有って、俺は地上の方にまわる事にした。
「何だ!! あの少女とゴーレムは!!」
「何と言う数の【ファイアランス】だ!!」
「馬鹿な!! 魔法が魔物を追尾して行くだとぉ!!」
「いや、あの白い少女を見ろ!! 何をしているのかさえ分からんが、彼女に近寄って行く魔物が次々に落ちて行くぞ!!」
……何か張り切ってるイブとジャンヌ、ラミアーが居るしな。一昨年位に渓谷に居たワイバーンを殲滅した実力は伊達では無いのだよ!!
『【挑戦】ワイバーンリベンジ! デスゥ!!』
「ん!! 百匹、倒、す!!」
「んう? ふむん!!」
うん。頑張って。
体内循環を活性化させ、【アドアップ】と【ブースト】を起動し、濃く、限界まで濃ゆく、早く、強引に押し流す様に加速させ、プラーナを体の隅々に細胞の一片にまで行き渡らせると、纏っているオファニムの全身のスリットから漏れ出でる赤光は高速で明滅し循環しながら、光量を増して行く。
俺は、腰下に接続されているケルブの脚に力を込めると、防壁屋上の床を蹴り、眼下の魔物の群れの中に飛び込んだ。
『【悲鳴】ひやぁあああぁぁ!!』
あ、聖弓掴んだままだったわ。
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改めて聖弓を背中にマウントし、【エクステンド】で両手にプラーナの刃を纏わせると、それを延長し、表面を高速で循環させる。
その姿は両手がチェーンソーと化したケンタウルス。いや、下半身は犬型だから犬タウル……いや、止めておこう。これは事故る懸案だ。
兎も角、両手を凶器と化した俺は、何故か、俺の周囲で一歩を踏み出せなくなってる魔物達に向かい、襲い掛かった。
走り抜け、切り刻む。怯え、後ずさる魔物も居るが、大概はこっちに向かって襲い掛かって来る。そもそも王都を襲って来たのは向こうだ。躊躇してやる理由なんざない。そうでなくとも、素材に成るんだ。躊躇う様な理由なんざ無いが。
「おん!!」
「アオン!!」
「ワンワン!!」
「アオーン!!」
おう、ミカやバラキ、ウリとセアルティも合流して来た。赤い閃光が戦場を縦横無尽に駆け回り、翻弄し、殲滅する。
振り下ろされる棍棒を弾き、逆の手で腕を切り飛ばす。ミカ達が押え込み、俺が斬り伏せる。
コカトリスが全滅した後に残った魔物は、足は遅いが力の強いタイプが多い。オーク、オーガの様な馴染みのあるやつもいるし、トロールの様な滅多に見ない奴もいる。
だが、俺達の前に出て来たってだけで同じく“獲物”だ。等しく狩られるが良いぞ?
「オーサキ辺境伯に続けぇ!! 我々の日頃の訓練成果を今こそ見せるのだぁ!!」
「「「「「おう!!!!」」」」」
とこかで聞いた様な声だと思えば、アルフレドやん。率いているのは誓狼騎士団の面々か……一部知らん顔が混じってるんじゃが?
まぁ、良いけど。後でどう言う事か説明してくれるよな?
流石に第一王子は、ここまでは来ていない様だな。むしろ来られたら困るが。
俺と犬達が切り崩した一角に、誓狼騎士団がなだれ込み広がる。
基本、狼達が撹乱しつつ三対一に成る様に立ち回っている。この辺りはミカ達の仕込みだな。
そして王都の兵士達がその更に開いたスペースに潜り込み逆扇状に展開し、多数で一匹を取り囲むようにして魔物達を殲滅して行く。
良いね。無駄に冒険するような場面じゃない。ここで逆に追い詰める様な真似をしたら、手痛いしっぺ返しを喰らうかもしれんからな。逃げ道は作ってやりつつ着実に追い立てて行けば決着は着くさね。
まぁ、俺は殲滅しつつ追い立てて行くんだがね。反撃なんぞする隙など与えんよ!!
確かな手応えに、兵士達の士気も次第に上がって行く。そうなれば殲滅速度も上がって行くと言う好循環。見れば逃げ帰る魔物もチラホラと出だして居る。良い感じだ。
そしてここに来て、冒険者連中も混じってきた。流石に利に聡い冒険者。危険度が低くなったと見るや、勝ち馬に乗りに来たってぇ所か。
もっとも、その事が逆に、この事態が終息に向かってるってぇ証左でもあるんだがな。
「よっしゃぁ!! こっからは魔物を狩り放題!! ボーナスステージだぁ!!」
一人の冒険者がそう叫ぶと、欲望でギラ付いた瞳で、他の冒険者も逃げる魔物の背を追って駆け出した。
うわぁ、こう言うとこ見ると、欲望ってのは際限ねぇなぁって思うんだわ。
そして、何か歴戦っぽい雰囲気の冒険者が、『全く若い奴等はよお』みたいな事を呟きながら、それを眺める様に大剣を担ぐ。
いや、格好付けてるけど、おまいも趨勢決してから来てるよな?
「フッ、勝ったな」
おい、バカ、止めろ。ソレは、フラグだ!




