増援が!
ファティマを見送り、迎撃を続ける。いや、これ確実に種類も増えてるんじゃが? 何か地上の方でもコカトリス以外の魔物とか混じってるし。
ああ、コカトリスの方が結構減って来てるんな。それで毒に対する耐性の高い魔物が進出して来たって所か。
まぁ、だとしても俺に出来る事なんて、こうして攻撃し続ける事ぐらいなんだがな。
これが、魔力の取り合いで起こっている一種の暴走って事なら、絶対数が減らにゃ治まらんだろうし。しかしそれは、枯渇と言える程の量でなく成れば、治まるって事でもある。
魔物って言ったって生き物だ。絶対的強者が相手だと分かれば、逃亡だってする。俺もゴブリンには近づいただけで逃げられるし。まぁ回り込んで絶望させたうえで狩るんだが。
知らなかったのか? 大魔王からは逃げられんのだよ!! って、誰が大魔王か!!
とは言っても、防衛戦を始めてから既に30分以上は経っている。俺以外の兵士は既に疲労困憊だし、矢の数も足りなくなって来てる。既に尽きてしまって、槍を構えている兵士もいる位だ。
後ろに逸らさない為にも俺達の頭を超えて行こうとするハーピーやセイレーンを優先的に矢射る。
例え鳥頭だったとしても、俺と言う障害を何とかしなくちゃ無辜の市民に辿り着けないと理解したのか、こっちを排除する為に集まって来ている。
よし、うまい具合にヘイトを取れている様だ。兎に角、射て、射て、射る。
そうやって上空から襲って来る魔物に対し、兵士達も必死に槍を突き入れる。ただ、王都の兵士は、やはり魔物とやり合うのに慣れていないらしく、人間を相手にするのとは違う感じに戸惑っている様子がうかがえる。
冒険者を招集できれば多少は違うんだろうが、あっちは任意な上、王都は依頼がそれほど多くない所為もあって冒険者自体の絶対数も少なければ、等級の高い冒険者の数も少ない。普段、魔物の数も少なく、治安が良いって長所が裏目ってやがるわ。
そんな事を考えながらも、ちょっと強引に聖弓にプラーナを注ぎ込み、矢の数マシマシで、矢を射るマシンに徹っする。
『【懇願】こ、これ以上増やされますと、ワタクシの処理能力がぁ』
「大丈夫、ファティマもジャンヌも、これより大量に注ぎ込まれた事あっから!」
『【悲鳴】ひぃん!!』
しっかし、本隊の到着も待ち遠しいが、魔物の群れがいつ尽きるのか分からんのが疲労感を激しくさせるな。せめて交代要員でも来てくれんと、戦線を維持するのも儘ならんく成るんだが!?
矢も尽き、必死で槍を振り回していた兵士達だったが、だいぶ動きが鈍くなっている。当たり前だ。慣れない上空からの攻撃の所為もあるだろうが、人間が全力で動き回れる時間なんざそう長くはない。その上、こう引っ切り無しに攻撃され続けりゃ疲労は溜まる一方だからな。
「な!!」
兵士の1人が声を上げ、俺もそっちの方に視線を送る。どこかで見たシルエットと、不規則な動き。
『【確認】ワイバーンも出て来たデス』
それでも兵士が倒せているハーピー、セイレーンと違って、ワイバーンは耐久力も高い。だが、ジャンヌの【ファイアランス】なら、迎撃できるはずだ。そうなると、他の飛行型の魔物に対する攻撃が薄くなる。だが……
「なぁ、聖弓。これ以上プラーナつぎ込むってのは行けそうか?」
『【覚悟】頑張りますわ』
『【了解】ボクはワイバーンの方に切り替えるデス』
良い、根性だ!!
そう覚悟を決めた次の瞬間。俺の後方から無数の【ファイアランス】が飛んで行き、ワイバーンに風穴を開け、不可視の力が、別の一匹を吹き飛ばす。
「良く、戦線を維持してくれた」
そう言って防壁上にあがって来たのは軍務卿、と、その脇を駆け抜けて、俺に抱き付いて来た二つの影。
「イブ! ラミアー!!」
「ん!!」
「むん!!」
いやぁ、随分と頼もしい援軍が届いたもんだわ。




