護る為の戦い
魔物の群れは、無秩序にギャアギャアと騒ぎながら王都に迫って来る。ここまでくると流石にその姿もはっきりして来るな。
コカトリスの方は、尾長鶏を思わせるシルエットと配色で、長い尾羽をたなびかせる様にしながら、お互いに喧嘩し、暴れつつも進行して来ている。ただ、全高で言えば2mは軽く超えていて、ダチョウサイズの鳥が暴れながら迫って来ていると言えば伝わるだろうか?
ハーピーの方はシルエットこそ人の上半身に似てはいるものの、それはやっぱりシルエットだけで、何と言うかマスクタイプの女性型ロボットっぽい顔と、両腕ってか羽と下半身以外は、その模様故にか、女性の様に見えはするんだが、やっぱり鳥は鳥なんだよなぁって感じ。前世で言えば何に近いんだ? ハゲタカとかハゲワシとかそんな感じか? もっともその大きさ的には人間位のサイズはあるし、両翼を広げていると5、6m近くはありそうだがね。
そんな鳥が無秩序に飛び回りながらもこちらに迫って来ている訳だ。
『【完了】次、いけますわ!!』
「オケ」
第三射を放つ。結構な数の魔物の群れを倒しているにも関わらず、その量が減っている様には全く見えねぇんだわ。何処にこんだけの魔物が居たんだ? って疑問に思えるレベルで。
王都の周辺は平原が多い事も有って、そこに蠢いてる魔物がよく見える。前線がコカトリスで、その後ろにまた別の魔物が群れでるのが見えるんだが、ありゃ、コカトリスの硬化毒を警戒してるんかね?
だとすれば、地味に役に立ってるな。いや、迷惑ではあるんだが。
こう、あの場所に足止めして閉じ込めて置ける様な手段があれば、地上の方は余裕が出来そうなんだがね。まぁ、そう、上手くも行かんか。
聖弓での攻撃が効いてるのか、ハーピー達が距離を保ちながらも、そのヘイトは俺の方を向いているっぽい。
俺が大量に撃ち落としながら、それでも抜けて来ようって輩をジャンヌや兵士さん達が撃ち落とす。
ひっきりなしに襲い掛かって来るハーピー達に、それでも果敢に兵士は矢をつがえ、狙い打つ。ただなぁ、やっぱり多勢に無勢感は否めない。やっぱり、数は暴力だよ兄さん!! ……兄さんって誰だ?
四射、五射と重ねて行くが、減った様に見えないってか、後から後から追加されてる? よくよく見ればハーピーじゃない鳥も混じってるし。
『【確認】あれはセイレーンですね。よく聞けば、ハーピーよりも鳴き声が綺麗です』
知らんがな!! この状態で鳴き声聞き分けるとか、何処の鳥博士だ!!
『【解説】鳴き声だけではありません。セイレーンは水に潜って魚を捕らえる事でも有名で、そのついでに漁師なども良く襲われています!』
知りたくも無かったわそんなトリビア!! てか、漁師襲う方がついでなんかよ!!
『【肯定】主食は魚らしいので』
そんなん、大人しく魚だけ取ってろと言いたい!!
『【残念】魚だけでは魔力補填量が少ない様で、人間も襲ってきます』
だろうね!!
『【完了】次、撃てますわ!!』
「オケ!!」
通常攻撃だとは言っても毎回プラーナを消費してる訳だから、これだけ撃てば、結構一気に消耗させられるわ。余裕は……うん。結構あるな。俺のプラーナ量ってどんだけあるんじゃろ? まぁ、日頃、魔力庫の方にせっせと溜め込んでたおかげも有るんだけどさ。
『【助力】ボクも、魔法を切り替えるデス!!』
そう言ってジャンヌが、魔法を【ファイアボール】から【インフェルノ】に切り替える。
確かにここまで接近されると、飛距離の長い【ファイアボール】より、飛距離自体は短いが、広範囲に炎をばら撒く【インフェルノ】の方が良いかもしれない。
地上に被害が出ない様にして貰いたいが、この際多少は許可して欲しいが、それは俺が決められる事じゃないからなぁ。
でも、もしもの時は、俺がなんとかしよう。
しっかし、どんだけの数が居るんじゃろか? 矢を射た数は、すでに二桁に入っている。防衛線的には、防壁の方まで押し込まれてる感じか。
声を上げている兵士の言葉を聞けば、避難誘導に行ったまま、戻って来てない兵士もチラホラと出ているらしい。コカトリスの硬化毒にやられたか、それとも別の理由か……
『【提案】マスター、ここは私が』
そんな兵士たちの話を聞き、ファティマが俺に許可を求める。
……確かに、ファティマならコカトリスの毒の影響は受けんか。
「頼めるか?」
『【了解】サー! イエス、サー!!』
そう言うと、ファティマが防壁から身を躍らせた。




