第二射!! 撃てぇ!!!!
全力でもない通常攻撃でこれだけの成果を出せるってのは、何ともまぁ、あれだけ自信満々で『自分を使え』とか言う訳だわ。ただ、威力として絶対的に高いって訳ではないらしく、ハーピーの方は落下してようやく絶命している風だし、コカトリスの方には一撃で打ち倒すこの出来なかった個体もチラホラ。まぁ、そう言った取りこぼしは、ジャンヌや既に防壁上に上がって来ている兵士が潰して行ってくれてる様だが。
俺の横でモップを構えているファティマから、手を出せないが故の憤懣の感情が流れて来る。いやお前近接戦闘用じゃんか。
『【不満】だとしてもマスターの一助に慣れない口惜しさを消す事は出来ません』
俺はファティマの頭に手を乗せると、軽く撫でてやる。まぁ、これで終わりって訳じゃないし、多分この後、お前を使う機会はあるからさ。
そう【念話】を送りながら、再び魔物の群れの方を睨む。魔物の群れは、百や二百程度の数では収まらない程に押し寄せている。下手すりゃ千を超えてるかもしれんわ。攻撃を受けたからなのか何なのか、ハーピーがギャァギャァと喧しい。そう言えば神話に出てくるハーピーも晩餐の時に襲って来たんだったか? いや、そんな事はどうでも良かったわ。
結構な数は見えているが、ただ、これで全部なのかってのはちょっと予想が着かんのよ。
何せ、今来てるのは殆どが鳥型の魔物。つまり、足の速い魔物な訳だ。
例えば、これが第一陣で、この後足の遅い、力の強い魔物が来ているとしたら?
ネガティブは禁物だが、最悪を想像できない奴は早死にするんでな。予想は立てておきたい。
そもそも、単一ではなく複数の魔物が押し寄せる状態ってどういう事なんじゃろか? 見た所、共生関係って訳でも無さそうなんだが。いや、今はそんな事を考えてる場合じゃないか
「聖弓、連射はどのくらいできる?」
『【計算】同程度の威力と範囲で有れば10秒のチャージで行けるかと思いますわ。すみません、魔力変に時間がかかってしまい……』
それはしょうがない。むしろ魔力を持っていない俺の方が申し訳ない位だ。聖弓の言葉をそのまま捉えるなら、彼女に流すのが魔力であるならほぼノータイムでの連射が可能って事だしな。
『【否定】それはマスターが気にする必要はないと思われます。魔力変換に時間がかかるのは聖弓が……』
『【狼狽】すぐにチャージを始めませんと!! こうしている間にも魔物が!!』
「うん? うん、そうだな」
どゆこと? まぁ良いけど。 俺は、先程と同じ様に魔物の群れに狙いをつけると、プラーナを聖弓に流し込む。
『【快楽】んん!! ふうんっ!!』
『【軽蔑】……ムッツリ』
『【憤怒】っ、黙らっしゃい、かまとと』
……何で言い合い始めるかな? 前も思ったが、仲悪すぎだろ聖武器達。
そうこうしている内に右手に感覚が来る、そのまま引き絞る様に右手を引くと、構えた俺の右手と、弓上部の弦を掛ける末弭、同じく弓下部の本弭部分を繋げるように弦代わりの赤光が走り、次いで、同じく右手から握りに向かって矢型の赤光が形成された。
『【完了】準備、出来ましたわ』
聖弓のその声で、俺の視界にターゲットマークが映り、俺の視線に合わせて魔物達に次々にマーキングをしてゆく。
『【限界】ターゲッティングMAXですわ!!』
その声に合わせ、俺は、光の矢を放った。解き放たれた光の矢は高速で飛んで行き、その途中で無数の閃光へと分裂する。
そしてその後は、最初の一射目と同じ様に魔物達へと降り注いだ。
『【称賛】流石は、【個体名】トール様ですわ!!』
「いや、それを言うなら聖弓だろう?」
俺自体は弓を使った事なんて無い、それでも必中しているのは偏に聖弓の能力故だ。
『【反証】いいえ、先程も言いましたが、普通の人間なら、ここまで大量の矢の生成も、ワタクシの能力を引き出す程の純度の高いエネルギーも持ってはいませんわ! これも【個体名】トール様の力が凄いからですわ!!』
え? 何? 普通はここまでの能力は発揮できないの? その辺どうなの? ファティマさんや。
『【肯定】通常であれば、ここまで能力を発揮できません。何せ聖弓は、矢の生成やそのリモートコントロール等に所持者の魔力を使うのですから、下手に魔力所有の少ない、魔力を練る事の出来ない者が所有者と成れば、“弦”を顕現させる事も出来ずに、魔力切れで倒れている事でしょう』
怖わっ!! え? 何? 聖弓の本来の力を使う為には魔力ドカ食いさせんといかんの?
で、現状、聖弓がここまでの能力を発揮できてるのは、俺から大量の魔力ってかプラーナを奪えているから、と。
うへぇ、流石はファティマとジャンヌの姉妹。方向性は違えど、同じ様に使う人を選びますなぁ。
『【剣呑】何か?』
いえ、何でもアリマセン。ファティマ、サン。




