放て!!
閃光が分裂し魔物達に降り注ぐ。空中、地上とまるで雨の様に降り注ぐ攻撃は、その一撃で結構な量の魔物を駆逐して行く。成程、確かにこりゃあ殲滅向きだ。
「通常攻撃なのに広域攻撃で必中攻撃とかヤバすぎるだろう」
『【満悦】お褒めに預かり恐悦至極ですわ! ですがこれも【個体名】トール様のプラーナの量と質が有っての事ですわ!!』
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聖弓が自分を使えと言った時、当然の事ながらファティマとジャンヌは猛反対したんだがね。
『【論証】ですが、地上、空中一遍に攻撃でき、尚且つ物的被害を最小限にするならば、ワタクシが一番適任ですわ。聖斧と聖槍で攻撃する場合、どちらか一方になりますし、貴女方の広域攻撃は被害が大きいですから』
『【口惜】ぐぬぬ……』
ぐぬぬて。ただ、まぁ確かに俺がファティマを振り回しても、空中だと範囲が限られるし、地上だとクレーターが出来ちまう。空中だとジャンヌの【ファイアボール】でも結構な数は行けるだろうが、地上に放てばボコボコにしちまうのは同じだし、【エクスプロージョン】とか周囲の被害もが大き過ぎるからな。ただ、弓矢も大量攻撃手段のイメージは無いんじゃが?
表情から俺の思考を読んだのか、聖弓が『【期待】それはワタクシを使ってみてのお楽しみですわ』と口にした。
性能的な所を理解した訳ではないが、あのファティマが、ああまで言われても反論できないって事を考えると、その言葉に誇張やらはないんだろう。
住民の避難も大体は終わっているが、それでも家から離れたくないと、何故避難なんかしなけりゃいけないんだと粘っている人とかも居るらしいやね。
まぁ、王都付近は殆ど魔物の被害とかも無かったらしいし、その辺の危機感が薄いんだろうさね。俺だって何度も魔物は狩ってはいるが、最初の頃の、何度も死にかかった記憶を忘れちゃいないし、忘れちゃいけないとも思ってる。
何度も魔物と対峙したからこそわかる。魔物にとって人間てのは最も効率の良い魔力吸収の為の餌でしかないんだ。
ファティマ曰く、人間ってのは他の生き物に比べても魔力を保有できる量が大きいんだそうな。だが、その割に魔力を自然放出する量も消費する量や機会も少ない。つまりは溜め込みやすいって事だ。他の生物は生きている中で魔力を消費し、それ程溜め込む事も無いらしく、そんな生き物を襲うよりは、人間を襲った方が効率が良いって話なんだわ。
魔物ってのは普通の動物よりも、確かに魔力量がけた外れに高いが、その分消費する量も桁違いに多い。だからこそ、魔力含有率の高い人間ってのは特上の餌に映るらしい。
この所、何が起こっているかは分からんが、魔物は増加傾向にある。実際、魔物に襲われた所為で夜会に参加できなくなった商人や貴族もそれなり以上に居るって話だからな。
ファティマ曰く、『【推測】魔物が増えた所為で魔力の取り合いが起こっているのでしょう。その為、人間を求めて王都を襲って来たと推測できます』って事らしい。
さて、魔物自体は既に目視できる距離まで近付いてきちまっている。国王様からは、俺の判断で間引きはして良いってぇ話なんで、ボチボチ始めときますか。
「聖弓!! 準備は?」
『【肯定】大丈夫ですわ!!』
それじゃ、見せてもらおうか!! 聖弓の威力とやらを!!




