夜会が始まる
やけに多いよな、面会者。とか思ってたら、王都だけじゃなく主だった都市の商人さんとかも、新年の夜会合わせで来てたかららしい。
それでも、幾人かの商人さん何かがトラブルで遅れたりして随分と年内で顔合わせにゃならん相手の数は減ったんだとか。
何か途中で野盗に襲われたとか、魔物に襲われたとか。取り敢えず取引先って事なんで、エクスシーア商会名義で見舞い金を送っておく様に手配しといたが。
いや、待て待てルールールー、今より多かったて、どんなスケジュール組んでたんよ、おまいは。ちょっとオジサン、膝詰めでOHANASHI合いをしたくなったんじゃが?
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夜会のパートナーは結局エリスが務める事に成ったんだがね、取り敢えず女王と言う身分は隠してってか、魔人族国のクリムゾンローズ女公爵として。
イブやラミアーもエリスの御付きとして王城入りはしているけど、会場自体は下位貴族や商人何かが集まっている方に行ってる。
エクスシーアとマァナ、彼等の御付きとして入場したルールールーも当然そっち。夜会に来れなかったキャルが、血の涙を流して悔しがってたが、そもそも王都にすら連れて来なかったヴィヴィアンよりはマシだと思って貰おう。
屋敷の方にも料理は用意したんだ。そっちで楽しんで欲しい。そもそも、こっちだと貴族とか居るんで、気ぃ休まらんぞ、と。
さて、この公爵位、エリスの持っている爵位の内の1つなんだが、まぁ、つまり、隣国の貴人であり、俺も魔人族国の伯爵位を持っているって理由で、エスコートの誉れを賜ったってぇ体な訳だ。
要は、俺ん所を大使館扱いにして、『自国の貴族の所にお世話になってますよ、女王って訳じゃないんで王城にお世話にならなくても構いませんよ』ってぇ建前を通したって事だな。その上で女公爵と言う地位。つまり魔人族国女王代理ですからってぇ詭弁。うへぇ。
今日のエリスは珍しく髪をアップにして、家の『ゴールデンウール』を真紅に染めて仕立てたドレスを纏っている。
『ゴールデンウール』はウールと言いつつも、絹もかくやと言う艶のある金色の生地で、染め上げても、その輝く黄金の色が下地として見て取れる。
その為か、反射される光が、まるで揺らめく焔の様に見え、あたかも紅蓮を纏って居るかの如くに思えた。
「くふっ、良いであろう? オヌシ様とおそろいなのじゃ」
うん? 俺は紺地の肋骨服なんじゃが? パートナーのドレスを引き立たせるってな意味を込めて、俺の装いは艶の無い紺色。どう見ても焔の様な赤ではないのだが。それに、屋敷から出て来る時は『クリムゾンローズと言う家名に掛けておるのじゃ』とか言ってなかったか? おまい。
俺が首を捻っていると、エリスがぷくうっと膨れた。いや、淑女のする顔じゃねぇぞ? それ。
「オヌシ様は普段から赤を纏って居るではないかなのじゃ!!」
纏う? あぁ、身体能力向上の事か。まぁ、それに近いっちゃ近い色だよな。
いや待て、そう言えば第二夫人に、『パートナーの髪色や瞳の色のドレスや装飾品を身に着けるのが婚約者としての暗黙の了解なのよ』とか言われてたっけか……って、うおおぉいぃ!! 別に俺等、婚約者とかじゃないんじゃが!? 何シレッと既成事実作ってんのよ!!
しかももう夜会の会場入り寸前だから、ここから引き返す事も最早叶わん。うぬぅ謀られた!! ってか、聖王国の時もだが、外堀から埋めていくの好きだな!! お前は!!
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新年夜会は国王陛下に挨拶した後は基本自由。まぁ、一回は踊っとこうかって位か。
「オヌシ様よ、もう一回踊るのじゃ!」
「いや、お前、2回以上踊るの、婚約者とかだってのは俺だって知ってるんだからな!!」
「チッ、なのじゃ」
だからシレッと既成事実積み重ねようとするなや!!




