噂の中にある真実
何そのこっぱずかしい二つ名は!!
「ほら、戴冠式でのニセ司祭の件が有ったじゃろう?」
「あー。俺が聖王国に飛ばされた時のな」
なるほど、アレ、偽物って事になったんか。
まぁ、あれでエクスシーア配下に出来たし、結果として販路も拡大出来たし、悪い事だけじゃなかったよな。
「そう、その時のやつなのじゃ!!」
『【説明】漆黒の鎧の中から、輝く様な美貌の天使が炎を纏いて飛び出し、新王を救い祝福を授けたとして、一躍話題に成ったのですわ』
ちょっとまて、百歩譲って、俺の正体がバレてたってのは、良いとしよう。実際、身バレはしょうが無いと思ってたし。
なのに、何で天使なんて話になってる!!
「オヌシ様は普段、赤褐色の肌をしておるのじゃ。その為に、目撃された証言と、オヌシ様との実情が噛み合わず、あの姿は、天使の写身だったと言う話に纏まったのじゃ」
「いや、纏まったて……」
『【補足】そもそも、光教会に於いて『白』は“神”を表す色なので、アレは天が遣わした【天使】だとなったのですわ』
いやいやいや、それは理論が飛躍してないか? それに、その理屈だと、単に俺に天使とやらが宿っていた、もしくは俺を触媒にして降臨したって話に成っても、“俺”が天使って事には成らんだろう!?
「うむ、その辺の詳細はワシにも分からんのじゃが、何か普段は天使の姿を隠した仮の姿であるらしいと言う話になっておるのじゃ」
いやぁ!! 何か隣国で俺の正体、正確に把握されてるんじゃが!? 流石に天使では無いが! 何も知らんはずなのに何故ここまで真実に近い答えが導き出せるのか!!
「……何なら、ワシの名で【天使】ではないと公式に触れを出しても良いのじゃが?」
「それ、公式に認めるのと一緒だからね?」
苦悩している俺を見て提案してくれたんだとは思うけど、それ、いっちゃん言っちゃダメな事だから!!
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犬達と狩りをして心を落ち着ける。うん。ストレスたまった時には、やっぱコレだよな!
「トール様、野菜がちょっと不足気味ですので、どこかで買い付けませんと」
「マジか、良し、山菜取りに行くか」
バラキを見ながらそう言うと、彼女も「オン!」と同意する。
「いえ!! これ以上、旅程を遅らせると新年セレモニーに間に合わなくなりますので!!」
「うん? このまま行っても、結構余裕をもって到着するよな?」
俺がそう言うと、イブもコクコクと頷いた。そもそも旅程自体がかなり余裕をもっていた筈だ。
「王都に着いてからの予定も有りますから」
「マジか」
ルールールーの話によれば、王都に着いてからエクスシーア商会の取引先との顔合わせやら何やらと色々とあるらしい。俺だけ。
いや、まぁ、商会オーナー俺だけどさ。
その間にイブやラミアー、エリスやらにはドレスや装飾品、小物何かを購入したり注文したりと、そっちはそっちで忙しいんだとか。
いや、てか、何でエリスもこっちの予定に組み込まれてるんよ。エリスはエリスで王城の貴賓客として向こうに行くんじゃねぇの?
「大丈夫!! そっちはちゃんと断ったのじゃ!!」
「断るなよ!! お前女王だろ!? 他国の王族との交流も仕事の内じゃねぇんか!!」
断るべきはそっちじゃねぇよ!!
「それに、交流は交流でちゃんとしておるのじゃ」
俺の事をジッと見ながらエリスが言う。交流って俺とかよ!! 確かにこの国の高位貴族ではあるけんどもよ!!
ただ、多分、他国への引き抜き的な事を警戒してるんだろうが、国王様からも距離を保ってくれ的な事、言われてるんよな。
しかし、むしろ俺、むしろ国内の貴族との交流の方が少ないんじゃが?
結構な付き合いがあるのって第二夫人くらい? あ、グラスも一応貴族だわ。
あれ? そう言う意味では、俺の方が他貴族と友誼を結ばんとあかんのか?
でも、そう言った面倒が嫌で辺境伯の地位引き受けたって面も有るんだがなぁ。
まぁ、ウチはウチヨソはヨソって事で。




