そしてその当日
好事魔多しと言うか、運命の悪戯なのか、第一位王子が領地に来訪され、近隣の領主が集まってるこの時を狙っていたかの様に大森林の魔物達が押し寄せ得る魔物暴走が!!
って言う事にもならず。そんなん起ったら、何の為に日頃から大森林内の巡回と、訓練と称した間引きを行ってると思うんよ。
街道を安全に通行できる様にする為に、どれだけ苦労してる事かっ!!
そんなこんなで開通式当日。ちょうど砦同士の間って場所に集まり、これから開通しますよ、関税の取り決めはこんな感じで、通行に関してのルールはこんな感じでって言う契約書にお互いにサイン。
と言ってもこっち側の代表俺だし、向こう側の代表エリスだし。
「いや、こう言うのって砦の指揮官がやるんじゃねぇの?」
「何を言って居るのだ? オヌシ様。そちらの砦に詰める騎士達の上官はオヌシ様であろう?」
「ならそっちの代表が女王様ってのはどう言う事よ」
「仕方あるまい。魔人族国の方はその為の再編が途中なのじゃ」
だとしても女王様が出てくるのか?
「仕方なかろう? そちらの砦の規模を考えれば、こちらとしても早々、小規模の砦と言う訳にはいかん。それなりの規模の砦にせねば、釣り合いが取れんのじゃ」
って事で、再編をしないといけなくなり、その結果、女王様が出てきたってぇ事らしい。あれぇ? 俺の覚えてる限り、砦作り始めたの魔人族国の方が先だったんじゃが?
こっちの方が向こうの砦の大きさに合わせて作ったような記憶が……あ、いえ、何でも無いですよ女王様。
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開通式の調印を終えると、とんぼ返りで家のダンスホールってか最早迎賓館に舞い戻って記念パーティー。
「忙しないよな、あっち行ったり来たりさ」
「別にこの場でパーティーでも構わんのじゃが、ただ、ここはまぁ見事に何も無いのじゃ」
周囲を見回す。うん。見事に草原に成ってて、何も無い。信じられるかい? ここ、元は森の中だったんだぜ?
まぁ、この辺の木、根こそぎ切り倒したの俺だけど。
前世だと、こう言う所でも屋台並べてお祭り会場にしたりしてたけど、流石に第一王子や他の御貴族様にここで軽食取らせたり踊って貰ったりって訳にはいかんか。
確かにガーデンパーティーとかって野外でやるけど、あれって、足元とか環境とかはちゃんと整えてあるしな。
まぁここ、冒険者やら旅人やらが歩いて4、5時間くらいの場所なんで、馬車だと30分位で戻れるし、構わんか。
さて、戻って来たぞと迎賓館。このパーティー、基本レセプションの時と同じなんだが、今回はダンスも有りなんで音楽が鳴っている訳なんだが、マトスン、頑張ったなぁ。
まさかのゴーレム楽団に来場者の度肝が抜かれてたわ。今回はダンスホールの半分以上が埋まるとかって事もなく、きちんと演奏ができてたわ。
魔人族国の貴賓客も含め、驚かなかったのなんざ、最初っから知っていたエリス位か。
そんな来場者を横目で見ながら、前回と同じくオードブルをパクつく。ダンス有りと言ったって、俺はまだデビュッタントもしてないんで踊る事は辞退させて貰ったんでな。
今回は第一王子だけじゃなくエリスも取り囲み対象に成ってた。まぁ、女王様だし、独身だし。
何か意味ありげにこっち見てるけど、それも王族の勤めなんで、諦めて相手してやんなさいよ。ゴスロリ女王様。




