狐とか狸とか騙し合いとか
明けての翌日。まぁ、領主達の話は聞いてみたんだけんどもね。泣き言だけ言ってる様な輩は論外だと思うんだわ。
「その街道のせいで収入が減ったら、どうしてくれるんだ!!」
今日は殺気を込めても居ないんで、俺の姿としてはどこにでも居る5才児状態。いや、発育は良い方なんで、見た目10才前後と言った所だろうかね。その所為か物怖じせずに忌憚ない意見を頂戴してる訳だが。
あの第一王子も、これだけ胸襟を開いた会話をしたかったんかね?やったらお付きの者に無礼討ちされそうだが。
おっと、ちょっとばっかし余所事を考えちまったわ。言ってる事が、あまりにも阿呆らしくて。
そもそも ソレの予測を立てて対応策を考えるのが領主の仕事ちゃうんかい!
『いや、知らんがな!!』って言えたら楽なんだが、今回の場合はそうも言えないのが辛い所。
「何とか、言ったらどうなんだ!!」
気勢を上げるのは良いが、もう、昨日の事を忘れたんかね? まあ、今日はってか、昨日も別に脅しをかけるつもりなんざ無かったんだが。
それはそれとして、俺ん所は基本、魔人族国と公都を繋いでるだけだから、そこを移動する者以外って使用しない訳なんよ。そもそも、そこで儲けられるとか思ってないんで、街に入る為の料金とか、かなりお安く設定してるし、冒険者は証明書を見せれば無料。商人も証書があれば割引って感じ。
むしろ通過する人間よりも、大森林内での依頼で立ち寄る人間の方が多いんじゃないかって言う予想なんだわ。
だからこそ冒険者ギルドを誘致したし、どちらかと言えば長期滞在型の宿なんて物も準備してる。こいつは宿ってより、前世のウィークリーマンションとかコンドミニアムの方が近いか。
個人個人で生活できますよ。何ならクリーニング業者と食堂併設で。みたいな。
俺ですら、その程度の対応はしてるし、予測を立てて動いても居る。
「どう、って言われてもね、なら、具体的にはどの位収入が落ちそうなのか提示して貰わないと、具体的な方策も金額も出せないんだが?」
「そうだな……」
随分とあくどい顔をしてらっしゃる。ふっかける気満々って所だな。因みにルーガルー翁やエクスシーアに協力して貰って、その辺の試算も具体的方策も練ってある。
「いや、もし、あの街道を使う人間がが居なくなったとしても、街道を使っている人数からすれば、金貨で3000枚程になるのは分かってるわだがね、流石に各町でどれ程使っているか迄は把握できていないんだよ。それに、どの程度の期間で復帰出来るものなのかも、ね」
俺の言葉を聞き、領主達の顔が強ばる。予想通り、俺にタカる事で、うまい汁を吸うつもりだったんだろうが、これで、下手に予想上限近い数字を提示すれば、自分の領が魅力のない領だと喧伝する事になるし、期間が長ければ、自分が無能だと言っている事になる。
「な、何でそんな物が分かる!!」
「国境と王都、それとその途中の街の出入りから平均を算出して、実際の宿代やら何やらから、おおよその使用金額を出した。その上で1つの領で使う金額を計算したんだ」
まあ、半分ブラフだが。そんな計算で正確な数字なんて出ない。実際、そのあたりも調べはしたけど、ルーガルー翁に王都に提出されている納税額と内訳を教えて貰って、その倍位を言ったに過ぎない。
さて、これで、面子にこだわるご貴族様は、どの位を提示してくれるかね?
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それでも、何の具体的な数字も提示せずに、兎に角、売り上げやら税収が落ちるんだから保障しろとかって、何だかんだと言って来る領主とかも居たんだが、取り敢えず、エクスシーア商会の支店置かせて貰って、売上の中から少し色を付けた売上税を払うって形で話をつけた。
それ以上は自分等で努力してくれって事で。
多分、自分達で腹案はあるのに、それを提示して無いだけだろうし、本気で何も考えてない無能だったら、それこそ知ったこっちゃ無いからな。
中には、エクスシーア商会の誘致が最初から目的だったっぽい領主も居たようだが、それならそれで素直に来てほしいって言えば良いだろうに、何をどうすれば家の領地叩きに成るんだか。
ツンデレと言うには頭悪すぎと言うか何と言うか。多分、オーナーである俺が平民出身、現高位貴族って事で、潜在的には見下しつつも頭を下げなきゃいかんって事でのジレンマ的な何かが有るんだとは思うが、やり方が可笑しすぎるだろうよ。
どうも、コレで俺が打撃を受けてから、これ見よがしに上から手を差し伸べる形で恩を売る様な算段だったらしいが、それって何処のマッチポンプ?
名誉と恩と根回しが常の貴族社会って、ホント複雑怪奇だわ。




