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レセプション

「おお! オーサキ辺境伯!! 探したぞ!!」


 おおぅ。用事済まして会場に戻った途端。第一王子に捕まちまったわ。

 一仕事終えたせいで、ちょっと気を抜き過ぎてたわ。今から【隠形】やっても不自然だよなぁ。


「……少々、近隣の領主と話し込んで居ましたので」

「う~む、堅いなぁお主は」


 普段は軟らかいよ、フニャフニャだよ。むしろアンタ限定かもしれんよ。距離置きたいんよ、分かれよ。

 って心の中で言ってても、伝わらんだろうが。言葉の裏を読もうとかしねぇし、この人。


「そんなナリではあるが、私とそれ程年も変わらんと言うではないか、むしろそれでドラゴンスレイヤーを成し遂げたというのだから、私なぞよりよほど立派ではないか?」


 公称では15才、もうすぐ16才だけんどもよ、実際は5才だし精神的にはアラフィフよ? それで18才の相手とか正直どうしたら良いのか分からんのよ。前世だと、取り敢えず白いあん畜生のプラモ作ってるとか言っとけば話繋がったけど、異世界だとそれ通用しねぇしさ。


「は、過分な栄誉をいただいております」

「私としてはもう少し胸襟を開いて話をしたい所なのだがなぁ」


 こっち来てから常にこんな感じで、良く言えば気さくなんだろうけど、王族としてどうよって感じなんだわ。国王様は、その辺の切り替えキチっとやってたんだがねぇ。


 話を聞いてると、この王子様、親衛隊や兵士の訓練にも、こんな感じで参加してるらしい。当然軍務卿が許可したからだが、一兵士に混じって訓練に参加するって、王子としてどうなんだ? ましてや第一王子。本来なら次期国王と見做される筈だろ? 多分、王太子として指名されてない理由には、その辺の事も含まれているんだろうな。


 個人的に友諠を結ぶ事に関しては否はないんよ。第一王子自体に思う事は無いからな。だが、コイツの所為で下らん政争とかに巻き込まれるのは勘弁願いたいんよね。

 目指すは楽しく愉快でちょっと刺激(冒険者)的な辺境暮らしなんでね。国王様(セルヴィスおじさん)はその辺分かって俺に自由裁量与えてくれてるんだし。


 実際に接してみて、第一(セルゲイ)王子が善良な人間だって事は良く分かるんだわ。ただ、王に据えるには良い人過ぎるって事で。

 考え方も若干浅いってか、人の悪意に疎いってか、まぁ、軍務卿が神輿にしようとした理由が良く分かった。言い方は悪いが傀儡にし易そうなんよね。脳筋だし。


「オーサキ伯はこの領地も治めているのであろう? 大変では無いか? 私も父の政務を手伝わされているのだが、ちんぷんかんぷんでな、殆どベイルの奴に投げておるよ。やっぱり私は、兵士に混じって身体を動かしている方が合っておるようだ」


 ……ベイルってのは、後ろで苦虫を嚙み潰してるお付きの兄ちゃんの事かな? 俺が王子に付けたアルフレドが肩を叩いて慰めている所を見ると、旧知の仲なんだろう。

 そもそもアルフレドだって、本来なら第一王子派なんだから。何故か俺ん所来たけど。


 しっかし、何か言葉の端々に第一王子としての自覚が足りてない発言がチラホラ見え隠れしとるんじゃが? どうしたら良いかね。いや、どうもしねぇか。てか、俺がどうこうする必要もねえし。

 取り敢えず苦笑して流しとこう。変に言質とか取られたくねぇからな。


 ただ、第一王子が態々俺に掛わって来る理由が良く分からねぇ。何か期待する様な視線を感じてはいるが、具体的に何かを要求して来る様な様子もない。

 俺と会話をしながらもチラチラとベイルとかってヤツの方を見ては睨まれ溜息を吐いて居る。

 ただ、会話的には「兵士の訓練は」とか「個人の武勇よりも全体的な兵力の底上げが」とか、そんな話題が多い。まぁ、受け流すけど。

 こっちとしても訓練を見てみたいとか言われると困るんだよな。今、戦闘狂が家の訓練場に居るから。

 のらりくらりと会話を躱す事数分間。第一王子が大きく溜息を吐いた。


「ふう、オーサキ辺境伯、時間を取らせて悪かったな」

「いえ、お気になさらず」


 そう言うと、心なしトボトボと第一王子が立ち去った。アルフレドとベイルが目礼をしてそれについて行く。いや、ホントに何が目的で俺に話し掛けたんだ?


 ******


「え? 俺と手合わせをしたかったの? あの王子」

「はい、マイロードが自分を軽くあしらったという話は結構王宮内でも話題になってましたからね」


 レセプションも終わり、アルフレドに話を聞くと、そう言う事だったらしい。いやまぁ、それでやけに訓練とかの話で粘ってたのか。


「流石にジョンベイルに止められていたので、直接は言いだせなかった様ですが」

「そりゃ、そうだろう」


 あのお付きの人ジョンベイルってのが本名なんだ。後ろの方取ってベイルなんな。

 それは兎も角、アルフレドの話だと、俺がコイツを()()()話は、王宮の中で結構有名らしい。まぁ、見物人多かったからな。

 その事で第一王子、そんな俺に興味があったんだが、ほら俺、基本王都とかいかねぇし、会う機会が無かった訳だ。


 で、今回、国王代理で俺の領に来たって事で、どうしても手合わせをしたかったんだと。


「ですが、祝いに来てるにも拘らず、怪我をするのもさせるのも……」

「まぁそうだよな」


 いや、なんか気苦労絶えなさそうだな、ベイル君。後で胃薬差し入れてあげよう。

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