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お~じさ~ま

 事前通達があったおかげで、第一王子御一行様が泊る宿に関しちゃ問題無く建築が済んでた。いや、自分で言ってて可笑しな状況だとは思うんだがよ。第一王子と護衛の人数聞いてから建築始めて建屋が立つのが間に合うって。

 まぁ、そんだけ、この街の職人と冒険者の熟練度が高いって事でもあるんだけんどもよ。特殊建築技能が高い冒険者って何ぞ? って思わなくもない。

 とは言っても、領主館付近のお高めに設定した屋敷を改装しただけなんだが、基本ブロックの塊なんで、改装もスムーズだったわ。


 そんなこんなで到着した第一王子。迎えたのは領主館の前。一応、門前まで騎士団が迎えに行っての案内で。流石は王子様御一行。兵士やら親衛隊やら使用人やら侍女さんやらの大行列。ちょっとしたお祭り騒ぎになったわ。


 行列を成していた馬車の群れの、一際ゴージャスな馬車の中から出て来たのは、思ったよりシンプルな装い、とは言っても結構な装飾の洋服を着た国王様によく似た面差しの男性。

 出迎えた俺に対し、鷹揚に頷きながら「そなたが辺境伯か」と声をかけて来る。


「お初にお目に掛ります。私がオーサキ領領主、トール・オーサキ辺境伯でございます。お目に掛れ、光栄です。デストネーチェ王国第一王子、セルゲイ・ラウズ・フォン・デストネーチェ殿下」


 そう言いつつボウ・アンド・スクレイプで臣下の礼をする。


「ああ、かしこまらなくて良い、オーサキ。貴殿が元冒険者だと言う事は知っている。楽にせよ」


 脳筋だとか聞いていた割には、ちゃんと礼儀も分かってるんな。いや、第一王子、今年で18とか言ってたか。それで礼儀が成って無い方が問題があるか。

 てか、俺は“元”じゃなく、現役冒険者なんじゃよ。

 だとしても、どの道こんな言葉は社交辞令として受け止めるしかない。例えどんなに王子が本気だったとしても、だ。その気になって態度くずしたりすれば、馬鹿を見るのはこっちだし。

 とは言え、心遣いに感謝の念を表さないってのも問題なんよね。


「は、ありがたく」


 俺の言葉に『困った奴だ』的な視線を投げかけて来るけど、アンタは後ろで気を張ってる部下に気付いてくれ。

 第一王子派だからなのか、ついて来たのは兵士及び王子の親衛隊。俺がアルフレドをぶっ飛ばした時に見ていた輩も多いっぽくて、やけに緊張した面持ちでピリピリとした雰囲気を放っている。


 ああ、面倒臭ぇ。勝手に喧嘩吹っ掛けてきといて警戒するとか阿保じゃなかろうか? と。


 とは言っても、第一王子の世話役はアルフレドにやって貰うんだがね。これは別に忖度したって訳じゃなく、家の身内で俺に次いで地位の高いのがアルフレド(こいつ)ってだけの話なんよ。公爵令息って事で地位的には侯爵と同等。つまりは辺境伯である俺とも同等。だけど当主なんで、若干俺のが上って感じ。


 アルフレドの案内で、第一王子が彼の為だけに解放した、お高い屋敷の方へと向かって行く。改装したのは兵士とかが詰める為の方な。一応、隣接する様にしたんよ。屋敷塀の一部を壊してお互いに出居る出来る様にしたりとか、兵士の詰める屋敷の庭を訓練場にしたりとかしてなぁ。


 あんま、家の訓練場の方には行って貰いたくなかったってのも理由の一つ。だって、居るじゃん。S級冒険者の戦闘狂が一匹さ。正直、あれと合わせるのは不安以外の物が無いからな。特に第一王子脳筋らしいし。


 さて、で、何で俺が第一王子の世話を焼かないかって言えば、王子より身分の高いゲストが居るからだ。


 うん。エリスな。

 本来なら向こうの砦で準備しとくべきなんだろうけど、仮にも女王なんで、基本、報告を受けてサインをするだけなんよね。

 なんで、前日どころか、式典まで1週間くらいあるのに既にこっちに来てるって言うね。因みに魔人族国側の統括は聖弓(ロボセイント)がやってるっぽい。成程、【念話】が有れば本人居なくても指示は出来るもんな。とか思ってたんだが、エリス、聖弓と【念話】出来んらしいんよ。


『【当然】お互いの“絆”が高く無ければ【念話】は出来ませんので』

『【前提】そもそも名前も付けて貰ってないデス』


 そう言や、そうだったわ。

 あれ? じゃぁ、どうやって指示出してるんだ?


『【嘆息】聖弓が判断して指示している様です』


 いや、それってどうなんよ。


「……ワシが指示を出すより、よっぽど的確なのじゃ」

「あ、うん。ソウナンダ」


 家にいる間は、ちょっと優しくしてやろう。うん。

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