まぁ貴族は色々と面倒くさい
そう言えば、タウンハウスなんて物も必要だったんだなと気が付いたのは、ついこの間の事。
そもそも王都に詰めるって発想が無かったんで、そんなもんの必要性を感じんかったんよ。
「ダメよ、トールちゃん。辺境伯なんだから、王都で宿なんかを使ってたら安く見られるわ」
「できれば貴族街に居を構えられれば良いのですが、無理であれば、ある程度の郊外に大きな邸宅を構えるのが宜しいかと」
そんなもんかねとは思うが、第二夫人とジョアンナの指摘だし、公爵令息に確認とっても「そうですね、宿を取るのは止めておいたほうがよろしいかと、マイロード」とか言ってたんで、邸宅を探さにゃいけん事になったんよ。
とは言っても、俺が直接物件を見て回るって訳にもいかんので、国王様にお手紙出して適当な物件を紹介して貰う事に。こんな事に国王様を使って良いのかって疑問も頭をよぎったが、他に伝手とかってねぇしな。国の土地管理の部署ってのはあるが、いわゆる市井に不動産屋みたいなものもねえし。
基本は自分で管理部門に行って、登録されてる土地の中から主不在の物件を探すか、知人に紹介して貰らって申請しに行くらしいんだわ。
王都内は建物一件探すだけでもコネが必要なんね。とか思ったけど、俺も公都の教会に関しちゃ、不法占拠からのグラスに登録して貰うってぇ流れだったわ。
そう考えれば、さほど変わらんか。
王都に行くってか夜会に参加するにあたってもう一つの懸念事項が出てきた。いや、なんか夜会で格式を保つためにはエスコートする相手が必要なんだと。
女性の方は兎も角、男の方は絶対の必須ってぇ訳じゃぁないんだが、それでも、居ると居ないのとでは雲泥の差らしい。
「これって、イブじゃダメなんですかね?」
「肉親なら問題は無かったんだけど……イブちゃんが良い子なのは分かるのよ? だけど貴族って格式や威厳に拘る所があるから」
「せめて、イブ様が高ランク冒険者であれば恰好が付いたのですが」
と言うかそもそもが準冒険者だ。ワイバーンを単独で大量虐殺できるのに、“準冒険者”って事で、未だにランク外なんよね。
俺がDランクって事も含めて、ランクって何だろうかってしみじみ思うわ。
もっとも、俺の場合、ランクアップの試験を受けて無いってのもあるからなぁ。グラスから散々勧告は受けてたけど、全部突っぱねてたし。
それは兎も角、問題はパートナーな訳だ。俺の辺境伯ってぇ家格に合ってる相手で、出来れば貴族じゃなく高位冒険者の方が良い。
こう言う夜会のパートナーってのは、基本的に婚約者だったりするんで、親族ではない相手だと、連れてった相手は、まぁ、そう言う相手として見られる訳だ。
そうなると、下手な貴族の紐が付いた相手だと、面倒くさい事にしか成らないんよ。
特に今の俺は新興ホヤホヤな上、色々と話題に成った事もあって取り込みたがってる派閥も多いらしいからな。
下手に貴族とは繫がりを作れんのよ。その派閥に入った様に見られるんで。
うんまぁ、その辺りに関しちゃ、やらかしてる自覚が有るんで、なんともなぁ。
「私がトールちゃんのパートナーに成ってあげられれば良いんだけど……」
「奥様、流石にそれは……」
「そうよねぇ」
まぁ、なんぼマナーの先生だからと言っても、未亡人でもない既婚者をパートナーにするのはマズイだろうさね。
「それに関しちゃ、こっちも伝手を頼ってみますよ」
「そぅおぅ?」
つっても、ルールールー、ルーガルー翁経由の国王ホットライン頼りなんだけれども。




