騎士団発足
眼前には白銀の鎧を着こんだ騎士達。それも式典用の見栄え重視の奴……に見える。ただ、コイツ等の鎧はちょっと特別で、式典用ではあるけど実用に耐えられるってぇ代物。うん、ドワーフのオッサン共に言ったら嬉々として作ってくれたわ。
実用品でもあるんで、ある程度の軽量化もしてあるんだが、それでも40kgくらいはある。良くそんなもん着込んで動けるな、と、感心するわ。これも日ごろの訓練のおかげかね?
コイツ等に訓練を付けてくれてるバフォメットに感謝を……したくねぇなぁ。そもそもアイツの主目的、俺の監視だし。
え? オファニムも鎧じゃないのかって? あれは一種のゴーレムだから。
まぁ、それは兎も角。
「ゲーグレイッツァ・ブラウヴォルフ!! 貴殿を我が『誓狼騎士団』団長に任命する!!」
「ハッ!! 謹んでお受けします!!」
住人の数も増えて来た事だし、騎士団の任命をやっておく事にしたんよ。本来なら、鎧やら馬やらって持ち出しが基本らしいんだが、それらの維持費なんかもこっち持ち。限りなく兵士に近い騎士達なんで、正式な騎士待遇は隊長格だけだけどな。
ゲーグレイッツァの肩に剣を置き、次いで耳を剣の腹で撫でる。後ろで見ているファティマとジャンヌが不満そうだが、いや、これを戦斧や槍でやる訳にゃいかんだろうよ。
首打ち式が終わりゲーグレイッツァが改めて首を垂れる。
「ん!」
「がんば」
「アン!」
「アオン!」
俺が応える前に、周囲の少女達が、そうゲーグレイッツァに声を掛けた。
あー、今の俺な、一応式典用の正装をしている訳なんだがね。ミカとバラキを侍らせ、ラミアーに圧し掛かられイブと手を繋ぎながら。うん。威厳もへったくれもねぇ。
キャルが馬鹿笑いしてやがるし、第二夫人も視線を逸らして扇で口元を隠してるんだわ。
まぁ、身内だけの式典だし、構わないっちゃ構わんのだがよ。
いつもなら聞き分けてくれるラミアーが我を通し、それにイブが対抗してって、まぁそんな感じ。いや、別に良いけど。
さて、騎士団なんだがよ、最初の予定通り、コボルト自警団と希望者の冒険者にオスローやジョン達をメインに構成して、豚骨騎士団とアルフレドもそっちに組み込んだ。団長を自警団から引き継ぐ形でゲーグレイッツァにして、騎士団を率いていた経験のある豚骨騎士団長と、腐っても公爵令息であるアルフレドにサポートにまわって貰う形だ。
オスローやジョンは、まだ従騎士扱いだな。
ただ、豚骨騎士団の内、文官向きな輩は領の運営陣に引き取らせて貰った。足りんのだよ文官。そもそもコイツ等引き込んだメインの理由はそっちだし。
これでようやっと最低限の体制は揃ったかね?
騎士団の名前は『誓狼騎士団』にさせてもらった。最初『オーサキ騎士団』とか『倒竜騎士団』とか馬鹿な事言ってたんで、領主権限でこうさせて貰ったんよ。
まぁ、俺に宣誓した狼の|騎士団、みたいな感じで。今回、騎士団に組み込まれてる狼達にも掛けさせて貰ってる訳だな。
で、ゲーグレイッツァの名前にくっついてる『ブラウヴォルフ』は準貴族の騎士の団長になったからって事で、今回付けさせた。ぶっちゃけ箔付けだな。
とは言っても、命名は俺。だって、『俺じゃぁ、考えつかないから、何か良い感じに付けてくれよアニキ!!』って言うんだもの。
まぁ、ドイツ語読みで『青狼』。かなりまんま。コボルトって確かドイツの妖精だった筈だから、ドイツ語でそう付けた。
……この世界の言語的にはそのまんまって訳じゃないから、平気だろう。多分、きっと、恐らく。ばれないばれないコボルトだなんて。多分、恐らく、きっと。
騎士団とは別に、住人から志願者を募って警備団を組織する。騎士団は俺直属の組織だけど、警備団は代表者組織の直下って位置付けで、主に町中を見守って貰らう感じ。今まで自警団がやってた仕事を引き継ぐ形だな。
逆にと言うか、騎士団は外回り。街道の警らやら大森林内の間引きとか。騎士の仕事と言うよりは兵士の仕事な気もするが。
そもそも騎士団と言う割には騎乗する馬の数が圧倒的に足りてないしなぁ。
「なぁ、馬の数も足りてんし、いっその事、兵士団でも良くないか?」
「「「「「是非、騎士団のままでお願いします!!」」」」」
「そうか……」
“騎士団”って所に意味があるらしい。まぁ、さっきも言ったが騎士ってのはその装備や馬は持ち出しで、騎士に成れるってのはそれだけで経済力があるって事でもある。ウチは違うけど。
確かに騎士の誓いは兵士のソレと違って領主本人に行う物で、つまりは“俺”に忠誠を誓うって事でもあるんだ。
そう言った事からも対外的には騎士団を持つって事はそれだけの富とカリスマがあるって事でもあるんだがね。
因みに豚骨騎士達、国から騎士としての地位は得てたんだが、何とかって第二王子からは、まだ、忠誠を誓っても良いぞって許可を得られてなかったらしい。
それも有ってちょっと焦ってたんだろうな。で、暴走の末豚骨の沼に沈んだ、と。
それで良いのかね豚骨騎士達。
「我々は目が覚めたのです!! 真に仕えるべきは、箱庭の中で権力争いをし、互いの足を引っ張り合うだけに腐心する様な者ではなく、民の為に身を粉にし、未来に導く者であると!!」
えぇ……何がコイツ等をそこで搔き立てるんかね? やっぱりあの豚骨ラーメン、何か中毒性のある物が入ってんじゃないのか? いや、俺達も普通に食べては居るんじゃが。
「「「何なら軍馬も我々で調達してきますので!!」」」
そこまでか!




