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常識は必要だが縛り付けるのはなんか違う

 何とかと天才は紙一重とはよく言った物だわ。いや、目的だけに邁進して、その結果にまで思考が及んでいなかったってのが敗因で、アイデア自体は悪くないんよ。せめて楽譜の音符全て分のゴーレムを作るなんちゅう馬鹿な事をやらなけりゃな。

 せめて音階分だけなら一楽器につき12~3体程で……いや、それでも充分多いな。やっぱり却下だ。


「そもそも何で全部人型にしたんよ、嵩張ってしょうがないじゃろ?」

「え? 師匠、本気で言ってます?」

「うん?」


 ちょっとドン引きしたマトスンの話によると、『ゴーレムは人を模した物』であって、そこから必要な機能だけを取り出して使うってのは、体の一部だけを切り取って使う様な、言わば、猟奇的発想ってな感覚らしいんだわ。


「なにそれこわい」

「当たり前じゃないですか」


 いや、その割には魔物素材とか使ってるんよねこの世界。

 そこの線引きは人間か否かって事なんだろうなぁ。中々に業が深いわぁ。


 

「ん? なら、ファティマ達が【変形】するのも気味が悪い状況なんか?」

「いえ、それは別に」

「どゆこと?」

「例えるのが難しいんですが。こう、手を拳に変えたり、手刀を作ったりする感じに近いと言うか」


 うん。その違いが良く分からん。取り敢えず一部を切り取ったり切り出したりだとかしなければオッケーらしい。


「それは兎も角、作るのはオルゴールぐらいの物で良かったんでリテイクな」

「……はい」

「別に作る事自体は構わんのよ。けどな、どうにも『せっかくなら』で要らん物追加したりとかって暴走をしがちなんよ、お前はさ」

「でも、出来るなら完璧を……」


 俺だって物作りは好きだからさ、より良い物、完璧な物ってのを作りたくなる気持ちは分かる。


「確かに完璧を目指してから軽薄短小化していくのが機械として正しいのかもしれんが、もっと使用する状況に思考を巡らせて欲しいんよね」

「使用する、状況……」

「うん、今回で言えば『踊りを踊る為の伴奏』が必要だったんだから、その伴奏が踊る為の場所をひっ迫するってのは本末転倒なんよ」

「うっ」


 流石にあの状況を見た後じゃぁ、反論も出来んらしいわ。

 ただ、ちょっと凹んでるらしいマトスンを見て、言い過ぎたとは思わんがフォローはしとくかなぁとか思わんでも無い。

 委縮されて動けなくなっても才能を潰しかねんからな。

 別に俺は使いやすい手下が欲しい訳じゃないんだから。


「さっきも言ったが、作る事、目指す事自体は良いし、さっきのアイデア自体は面白いとは思ったんよ? ただ俺なら、楽器の機能部も分割してゴーレムに付与してコンパクトにするし」

「!! そうか!! 音楽で使う音の数自体は上限も下限もありますから、手と足の指の数が有れば十分足ります!! 楽器を楽器そのものの形を維持しようと考えなければ、確かに一体のゴーレムで一つの楽器はカバーできます!!」


 金管楽器にしろ木管楽器にしろ、音の高低を決めるのは基本の振動とその後の管の長さなんよね。だったら、その音階を出すだけの楽器を作ってしまっても構わんとは思う。まぁ、応用性とか多様性には欠けっちまうけど。

 何と言うか、ハンドベルを必要数用意して手足の指すべてにセットして使用する様な物か。人間がやったなら滑稽以外何物でもないが、ゴーレムならその限りでも無いだろう。


 何かアイデアを思い付いたらしいマトスンが、いそいそとダンスホールから出て行く。

 ちょっとばっかし心配ではあるが、元気になった事を良かったと思っておこう。凹ましたのも俺だが。


 そうだな、今度はレコード的な物の存在を示唆しとくか。振動が音で、意味のある振動が言葉だって事位なら理解できてるだろうし、イヤホンやコンデンサは作れたんだから、それらを発展させてスピーカーを作る事なら出来る気がするし。

 そっちが出来るのならその逆にマイクを作る事も出来るだろうし。問題は記録装置の方か。ロウ管位なら出来そうだけど、磁性体と成るとなぁ。

 和蝋燭のロウはウルシ科の植物由来だったか? 後でそんな感じの植物に心当たりが無いかヴィヴィアンに聞いとくか。

 まぁ、後は丸投げで。


 うん。マトスンには自由な発想で今後ともやって貰うのがいちばんかね? 常識から外れたらそれを修正するのがこっちの役目だと諦めてなぁ。

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