やり過ぎだ!毎度毎度!!
「最近、何か面白そうな事を始めた様ではないかっ!! ライッバルッ! トーーーーールよっ!!」
書類仕事も落ち着いて来たんで、ようやっと自分の鍛錬にも手が出せる様に成ったんだが、その訓練場でバフォメットに絡まれた。そう言や居たんだったな。コイツ。
コイツの言う面白そうな事って戦闘関係だよな? そんな物始めた覚えは無いんだが?
「フフフッ、秘密の特訓であるか? しっかっしっ!! その以前とは見違える様な身体のキレッ!! 吾輩の目は誤魔化されんぞっ!!」
「……秘密の特訓? あー社交ダンスか」
体のキレと言われて思い浮かべたのが、あの緩急を作るコツだ。
なんで、俺がそう言うと、あからさまに落胆した様にバフォメットが溜息を吐いた。
「何だ、お遊戯であるか」
「……ソウデスネ」
いや、前世ではダンスに偽装して練習を重ねたって逸話の有るカポエイラってぇ格闘技とかもあるし、剣舞とか闘いの踊りなんてのもある訳なんだが、コイツに興味持たれる方が厄介な気がするんでな。ここは話を流すって方向で。
下手に興味を持たれて『吾輩も顔を出す』とか言われてもな。今は、好意的な様子だが、コイツはあくまで“魔族”だ。
訓練場で上手くやっていけてるのは『向上心』や『闘争心』と言ったモノがコイツの“好物”だからであって、決してバフォメット自身は人間と上手く付き合おうとか思っている訳じゃない。
その事を忘れちゃならんし、だからこそ、あの場所に行かせる訳にもいかない。
確かに向上心って物自体はあるかもしれないが、あそこに闘争心なんて物は微塵もないからな。
特に第二夫人は戦いの場に赴いた事なんざ無いだろう。むしろ戦いに対して否定的ですらあるかもしれない。彼女自身、和平と友好の為にこの国の公爵家に嫁がされた訳だしな。
そう言う意味では、バフォメットの存在理由とは水と油だ。
自身の意見とは合わないってだけの事で、同族であるはずのガープはあっさり見捨てたし、思い上がりが癪に障ったって事でベルゼブブを叩きのめした。
なんだかんだ言っても、そう言う所はコイツも魔族だよなぁとか思う。
だからこそ、バフォメットと第二夫人は会わせたくないんだよな。
「まぁ、忙しかったとしても鍛錬をサボってた訳じゃねぇし」
「クックック、そう言う所がっ実っに!! 好まっしいっのだよ!! ライッバルッ、トーーール!!」
あと、単純にコイツのノリ鬱陶しいから、普段からお疲れ気味の第二夫人の身体に障りそうなんで嫌なんだわ。
******
目の前の自動演奏機を見ながら、俺は少しばかり困惑していた。
「いやぁ、ふいごを呼吸代わりに使うアイデアを思い付いた時は、自分が天才なんじゃないかと思いました!!」
「……そうか」
俺の目の前に居るのは楽器を構えたゴーレム達。
うん、言わばゴーレムオーケストラとでも言うべき代物だったんだわ。
成程、こう来たか。
確かに、この世界のレベルのゴーレムでも、単純な作業は行わせる事が出来る。できるんだが、流石に演奏の様な複雑な動きは不可能だ。
それをマトスンは、音階全てを分担してやらせる事で解決しやがった。
確かに、オルゴールも、ピンが一音を弾く事で音楽を奏でる訳だ。うん。原理的には同じだろう。だが、それをオーケストラでやるとか、何と言う労力の無駄使い!!
「てか、一言良いか?」
「何でしょう!! 師匠!!」
「場所取り過ぎなんじゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
何でダンスホール半分埋めた!!
これなら普通に楽団雇った方がコンパクトなんじゃあああぁぁぁぁ!!!!




