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思い出は夢の如し

「ずばりぃ!! トールさんとはぁ、どういう関係なんですかぁ?」


 藪をつついて蛇を出すってぇ諺知ってるか? ヴィヴィアンさんよ。

 まぁ、王家からの依頼で初めて会ったなんて建前、この状況で通用する訳きゃねぇよな。分かってた分かってた。


「ウフフ、どんな関係に見えるかしら?」

「思わせぶりは止めてください()()()()()()()()


 俺の言葉に、少し不機嫌になる第二夫人。事前に初対面設定は打ち合わせてた筈だが? まぁ、開口一番で『トールちゃん』とか言ってた時点でその前提は崩れちまってるんだけんどもよ。


「あー、あれだ。以前、臥せってる御婦人の世話をするって言ってただろ?」

「ん、きいて、る」

「アウン!」

「アンアン!」


 イブとミカ、バラキは思い出したのか、肯定的な返事をしたが、ラミアーは首を傾げた。


「……んう?」


 いや、ラミアー、おまいが来る前の話だからな? 知らなくて当たり前だからな?


「あー、キグルミトールちゃん作った時?」

『【興味】【個体名】キャロライン、その話詳しく!!』

『【関心】映像は、映像は無いのデス!?』

「ほほう? 何やら面白そうなぁ、話ですねぇ」

「き、きょうみあります!!」


 やめれ! それは黒歴史だ!!


「ウフフ、可愛かったわよぉ。あの時のトールちゃん」

「見つけた瞬間だけは年相応に見えたのですがね」


 第二夫人(ママン)にジョアンナさんも止めてください。俺のHPは、もう0よ!!


「兎に角!! そんな感じで知り合ってたって話なんだよ!!」


 そう言って、俺が話をぶった切ると、不意にファティマの声が頭に響いた。


『【確認】()()()()と言う事で良いのですね?』


 【念話】か。いや、第二夫人が俺の領地(ここ)に居る内には説明をしときたい。ただ、その相手はある程度限定して。

 俺が公爵(エスパーデル)に捨てられた子供だとか、センセーショナル過ぎるし、色んな所に影響が有り過ぎるからな。特に男児だし、ここまでの功績を上げていると、担ぎ出そうって勢力が出んとも限らん。

 これで、公爵が情に厚くて、(かぞく)の事を守ろうってタイプならそれ程気にしなくても良いんだろうが、あの男、()()()()()だからなぁ。


 家系を繫栄させ守る為なら平気で切り捨てかねん。かつて俺にそうした様に。


 その為にも秘密は守らんとあかんし、その秘密を守る為にはある程度の周知をして無いと、何か工作をされた時に違和感に気付けないって場合もある。だからこそ最低限の人員には情報の共有をしておきたい。


『【了解】わかりました』

『【承知】オッケーデス!』


 独りで出来る事なんてたかが知れてる。どれ程手が広くても取りこぼしなんて必ずあるし、個人的な思考の幅なんて実はそれほど多くはない。だからこそ仲間は必要なんだし多様性ってのも必要なんだ。そう言った取りこぼしを防ぐ為にもな。


 これが、全くの俺個人の問題で、俺だけが口を噤めば良いなら兎も角、すでに、知って居る者は何人か居るって状態だと、グラスみたいに現状証拠から事実に気が付く人間だって必ずいるはずだ。


 特に公爵側で言えば、公爵本人と俺を取り上げた産婆、その時手伝っていた使用人達やメイド。俺の方を捨てる事を占った占い師。そしてソレを実行した侍女。

 それ程多くはないにしても十数人の規模で確実にそれ等の人間が係わっているし、口止めだって絶対な訳はないんだ。


 古今東西、『ここだけの話』とかって口を滑らせる人間の存在なんて枚挙にいとまがない。それこそ、どんなに金を積もうが、脅していようが、な。


「その時! ガラス戸がスッと開き、愛らしいくも凛々しい顔が覗いて、そして私に語りかけたのです『貴女を救いに来ました』と、高い塔に囚われて居た私は、その時確信したのです! これは、運命だと!!」

「ほうほう!! それでそれで!!」


 何やら熱弁してる第二夫人に、目をキラキラとさせてる女子達。いや、ジョアンナさん、何でハンカチで目頭押さえてるんよ。


「しかし、翌朝、私は目を覚まし落胆しました。そこにあったのは見慣れた天蓋。『あぁ、あれは絶望にくれる自らが幻視した淡く幸せな夢だったのか』、と」


 え? 何? 何の話してんの? 俺が思案に耽っている間に何が起こった?


『【説明】夫人による即興語り『騎士トールと私の愛の物語(出会い編)』だそうです』


「しかし、次の瞬間、それが夢ではなかったのだと理解しました。我が胸に確かに在る温もりと鼓動。私の胸に抱かれるままに寝息を立てるトールちゃんの存在によって!!」


 って!! うおぉぃ!! 何か耽美な感じに捏造されてんぞ!! 第二夫人ん所に行った時の事!!


「そしてトールちゃんは言いました『これは一時の別れ、私はまた、馳せ参じましょう。愛しい貴女の元へ』、と。そしてトールちゃんは、私の手に口吻を1つ落とすと、朝日に溶け込む様に消えたのです。その時、私は確信したのです!! あの方こそ、天が私の元へと遣わした、“天使”であると!!」


 ちょっと待って!! 俺の知らん俺との思い出が増えてるんじゃが!?

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