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起こるべくして起こった事態

 中庭に用意された、テーブルを囲む様にセッティングされた繊細な造りのウッドチェア。見てみぃこれを!! ドワーフ御謹製やぞぉ!! と。


 初めて会った設定のはずなのに、ここまで親しげだと何か有るようにしか思えんだろうし、念話の所為か感付いてるらしいファティマ達がちょいちょい失言してる事も有って、多分そろそろ限界じゃないかなぁと思う、膝の上のポニョっとしてるトール・オーサキです。


 まぁ、ここに居る面子は、ヴィヴィアン除いて信頼の置けるヤツだけなんで、バラしても良いかなぁって感じなんだが。そもそもルールールーなんかは事情知ってる集団からの派遣なんだし。

 あーいや、ヴィヴィアンが信用できないって訳じゃないんだ、ただ、コイツはウッカリ洩らしそうな感じがしてなぁ。日頃の言動って大事だわ。


 そんなヴィヴィアンとは逆に、むしろエクスシーアには聞いといて貰いたい懸案なんじゃがなぁ。今ここにおらんが。

 そういやグラスにはバレてるんだったか。なんだかんだでカンの鋭い元A級冒険者だと褒めておいてやるわ!! 心の中だけで!


 けど、う~ん、ティネッツエちゃんに背負わせるには、俺の事情はまだまだ重い内容かもしれない。だからと言ってこの状態からヴィヴィアンとティネッツエちゃんを余所に行かすのも、仲間外れ感が酷いしなぁ。


 そんな風に現実逃避してたら、何か事態が動いてたんだわ。今日は何時ものメイドスタイルではなく、白ブラウスに紺帯と同色のプリーツスカートと言う、DTに対しての攻撃力高めで、お嬢さん然とした格好のイブが、椅子を第二夫人の横まで態々持って来て座ったと思えば、こちらも何時もの白ワンピではなく、白のセーターに紺のフレアスカートと言う、DT特効がついてそうな恰好のラミアーがその逆サイドへ。あ、DTってのはドラゴン・タートルの略だから。だから俺に対しての攻撃力が高い訳じゃないから。


 で、ファティマとジャンヌが第二夫人と言うか、その膝上の俺の左右斜め後ろに(はべ)って、ミカとバラキも椅子の足元へ。何この布陣。


「あ、あたしも近くに行った方が?」

「わ、わたしもでしょうか?」

「うん。そのまま向かい側に居てくださいオネガイシマス」


 何か移動しようとするヴィヴィアンとティネッツエちゃんを押し止める。全員が同じテーブルの場所に固まるティータイムって何よ。記念撮影じゃないんだからよ。


「プークスクスクスクス、プークスクスクスクス」


 うぉいぃ、笑い声が漏れてるぞキャル。


 と、何かミカと第二夫人が見つめ合ってるんじゃが? もしかして母親同士で何か通じ合う物が!? とか思ってたら、ミカが視線を外して俺の方を見る。何か嬉しそうだな。よしバラキ、視界に割って入って来るの止めようか。

 膝上にまで圧し掛かろうとするバラキを押し留めていると、第二夫人がホウと息を吐く。


「随分と、貫禄のある犬ねぇ? トールちゃんのペット?」


 うん。え? ああ、ミカの事か。別に通じ合ってた訳でも無かったみてぇだわ。


「……家族ですよ」

「ふうん? そう、家族なのね? 御免なさい、ペットなんて言ってしまって」

「アオン」


 俺が何か言う前に、『気にしないで』とばかりにミカが答え、第二夫人がフフフと笑みを零しながら「ありがとう」と礼を口にした。


 あれ? やっぱり通じ合ってる? やっべぇ、お互いが『ウフフ』『オホホ』みたいなオーラ出してて心情が読み取れねぇ。何だこれ?


 そんな中、始まっちまったティータイム。


「では、お茶をお注ぎしますね」


 何事もない様にお茶を出すマァナだが、ちょっと手が震えてるぞ? ダイジョブじゃろか? 第二夫人が来るまでは普通だったと思ったんだが、やっぱり高位貴族相手って事で緊張しとるんじゃよね?

 けっして、今の雰囲気に()てられたって訳じゃないと信じたい。


「はーい! キャル特製パウンドケーキだよぉ!!」


 そしてこっちは変わらんなキャル。と言うか、少し笑いをかみ殺し切れんで口の端がピクピクしとるぞ? てか、今回はパウンドケーキかよ。着実にお菓子のレパートリー増やしてやがんな。

 その隣で給仕をしてるルールールーなんて『わたしに振らないでください』とばかりに無表情を貫いていらっしゃる。


 あっるぅえぇ? 軽いティータイムのつもりだったんじゃが? 何だろうこの雰囲気。

 和やかなのに緊張感が迸っているって言う二律背反。


 決してお互いに悪い雰囲気ではないにも拘らず、その上で引けない“何か”が前面に出てるってか、むしろ全面に押し出してファイティングポーズを取っているかの様な?


 いや、分かってる、分かってるんだどうしてこんな雰囲気になってるかなんて。

 ただな、()()を自分の口から言うには自意識過剰すぎると言うか、ナルシズムが行き過ぎると言うか、何と言う羞恥プレイかと!!


「いやぁ、トールちゃん、愛されてますなぁ」


 うん、そうなんだけど、もうちょっとオブラートに包んでくれキャル。

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