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第二夫人が来たんよ

 ここは身内しか居ないし、緊張感を和らげる為という言い訳をする第二夫人(ママン)


「いや、だとしても、挨拶くらいしてからにしてくれませんかね?」


 皆、ポカンとしてるじゃんか。


「あのね? トールちゃん。マナーというのは、使い分けが肝要なの。時と場合と場所によって切り替えられるのもマナーの内なのよ」

「えぇーー……」


 言ってる事はごもっともなんじゃが、この実例はどうよ。


「と言うか、折角、公爵家の目の届かないトールちゃんの所に来たんだから、全力で羽を伸ばします!」

「ぶっちゃけた!!」


 えぇ、良いの? そんなんで。そこん所、どうよ? ジョアンナさんよぉ。

 そんな意志を乗せてジョアンナを見る。


「奥様が生き生きとされて居て、私も嬉しゅうございます」


 うん。駄目だこの人。


 ******


「正直に言うとね、ダンス以外にトールちゃんに教えられる事って、もうあんまりないの」


 マジか、いや、そこは礼儀に煩いわりに、マナーがガバガバだった日本で40年近く生きていた事があるって自分の基礎教養の高さに納得しとこう。

 マナーって結構必然的に決まる物だからな。形骸化するものも勿論あるが、そう言う意味だと、結構似通った様な物になりがちだし、実際、この世界のマナー、前世でのソレに近しい感じだったしな。


 それは兎も角、ちゃんと挨拶くらいはして欲しい所。取り敢えず仕切り直しと行こうか。


 背筋を伸ばした後、右手を胸に添え、左手は軽く横に出し、手の平を地面と水平に。頭は腰から曲げ、15°程度に下げる。

 第二夫人に教わった目上の者に対して行う正式な礼。ボウ・アンド・スクレイプだ。


「公爵夫人、改めまして、オーサキ領、領主、トール・オーサキ辺境伯です」


 それを見た第二夫人は、微笑を湛えた表情で、両手でスカートを軽くつまんで広げるようにしながら、左足を引いて軽く沈み込む様な、優雅なカーテシーを披露する。頭を下げないのがこっち方式らしい。


「エスパーデル公爵、グランドル・レスティア・ド・ベスビアン=エスパーデルが第二夫人。へカテリーナ・エスパーデルです。お目に掛れて光栄です、オーサキ辺境伯」


 ちなみにこれ、どちらも身分が下の側からの挨拶方法。目上の方は軽く目礼する程度なんだそうな。

 俺が辺境伯当主で、第二夫人が公爵家夫人なんで、なんやかんやあって身分としては同程度らしいんだが、家柄やら、夫人と言う立場やらでお互いに下からの挨拶。それでも、当主って事で俺の方が若干立場として上なんで、挨拶をするのは俺からに成るんだとか、ややこしいよな。


 その間、メイドやら使用人やら、いわゆる身分の低い人達は、女性なら腹部に両手を合わせてのお辞儀。男性ならボウ・アンド・スクレイプに似てるけど、左手は腰に付けてのお辞儀をして、呼ばれたりするまで頭を上げちゃいけんらしい。封建制度封建制度。


 まぁ、今はそこまで厳しくやらなくて良いっぽいんで、全員を紹介。

 ジョアンナも皆に挨拶を済ませる。


 一先ず旅の疲れもあるだろうから、第二夫人を客室に案内して、軽くティータイムをする事になった。んじゃが……


「いや、これは流石に……」

「ぬぅ」

「むぅ」

『【流石】これが先制攻撃と言うヤツですね』

『【驚嘆】そこにシビれる憧れるデスゥ!』


 当たり前の様に俺を膝の上に乗せる第二夫人。

 それを見て、俄に沸き立つ少女集団。目を輝かせるキャル。


 何、この緊張感。いや、それ以前に、マナーとしてどうなんだ? これ。


 その辺どうなのよ、ジョアンナさんや。と、言う意志を込めて彼女を見る。


「奥様が生き生きとされて居て、私も嬉しゅうございます」


 うん。駄目だこの人。

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