そう言う事になった
結局ね、来るんだって第二夫人。何でも、近隣領地の新興貴族へのマナー指導を王家からの依頼で行う為って名目で。
王家主催の新年パーティーってのは貴族であれば必ず出席せんといかん類の物であるらしく、俺の社交界デビューはその時にする事になった。
本当は貴族子女には貴族子女たちの為のデビュッタントの為にセッティングされた夜会ってのがあるらしいんだが、流石にそこには俺は不参加だったし、今から礼儀やらダンスやらを仕込んで間に合いそうな参加必須のパーティーがソレだったんだわ。
あるぅぇ? 可笑しいなぁ、俺、そう言った物に関わらんでも良いってお墨付きを貰ったハズなんだけどなぁ。国王陛下に。
何か大事に成りそうだし、面倒事と厄介事も舞い込んできそうなんで、『そこまでの事では無いし、夜会に絶対に参加しなくても良いって許可も貰って……』って、そんな事をツラツラ説明して見たんですがね。
うん。押し負けましたとも第二夫人とジョアンナの圧力に。どうも第二夫人、俺を息子だって自慢できない事に結構なストレスを溜めていたらしく、まさかの駄々っ子ムーブで意見を押し通されたんだわ。
いや、だから、二人も子供を産んだご婦人のやる仕草じゃ……いや、可愛かったけれども。
マザコンの気があるんかね? 俺。
表向き中立貴族で、俺の領地の近隣領地の中で、辺境伯に物怖じしなさそうな地位を持っていて、社交界やマナーに明るい、既婚の女性。
だから、第二夫人が選ばれたと言う建前。
実際、気鬱ぎから立ち直った後、社交界で頑張って立場作ってたし、元お姫様何で、マナーにも明るい。
その上で既婚者。未婚の辺境伯にレッスンするなら、これ以上ない適役な訳だ。
……どっかの文官肌の次男以下じゃ駄目だったんかね?
え? 家の領、文官不足なのバレてるから、ヘッドハンティングされるのを防ぐ為に、軒並み断られた、と、言う設定なのね。佐為ですか。
まあ、そんなこんなで、俺が領地に戻ってから1ヶ月位経った後、第二夫人が俺の館までやって来た訳だ。
『【緊張】御義母様に御目文字叶うのは初めてなので、緊張します』
『【奮起】最初が肝心デス。ここで認めて貰えれば、今後優位になるデス』
何言ってんの? てか、母親って事、オフレコだかんな!?
「ん?」
「むぅ……」
ほら、イブとラミアーが反応してるし!! なんかピリピリし始めたじゃんよ!
「マ、マナーのせんせいなのですよね? やさしい人だと、うれしいです」
「大丈夫ですよ、主に躾られるのはトール様ですし」
確かにティネッツエちゃんに言ってる通りだが、別に躾とかじやねぇからな? ルールールー。
てか、おまいらも習ったって構わないんじゃよ?
「うう、高位貴族の方に会うのは初めてです。キンチョーしてきましたよぉ」
居たのかヴィヴィアン。いや、むしろお前は何でここに居る?
そしておまいの目の前にいる俺も、辺境伯なんじゃが!?
「ねぇねぇ!! 高位貴族の人って、豚骨ラーメン食べるかなぁ?」
「食べない事はないと思うけど、アレを出すのはどうかしら?」
うん。マァナの言う通り、それは避けたほうが無難だキャル。ってか、物怖じしないのはおまいの良い所だが、ちったぁ礼儀を気にしてくれ。
「マァナ、館の管理、頼んだ」
「分かってるよ」
「あたしも頑張るよぉ!!」
「……程々にな」
「何でよ!!」
そんな会話をしてると、公爵家の紋章を付けた馬車が入ってくる。
それを俺は一歩前に出て、迎え入れた。
ドアが開き、第二夫人が降りてくる。
「お待ちしておりました公爵ふじ……」
「きゃー!! トールちゃん!! 来たわよぉ!!」
……ちょっと空気読んでくれませんかね!? 第二夫人!!




