公都周りのエトセトラ
あの後、普通の雑貨屋でアクセサリーを全員分購入して教会に戻ったわ。
いや、ファティマとジャンヌはアクセサリーってどうよ? とか思ったんだが、『【平気】秘密のカーゴスペースがありますので(デス)』って事で結局なぁ。いや、秘密のカーゴスペースってなによ。なんか、はぐらかされたんだが?
当然、犬達にも新しい首輪を買ったさね。
んで、今の拠点は、公都に残った一部の冒険者連中と、公都で働き口を見つけた女の子達が使っているんだがね……
「何か、増えてやがるんだよなぁ……」
人の数もそう。冒険者連中がパーティー組んだ相手を連れ込んでるからな。そういう意味ではなんか寮じみて来てる。
集会所や食堂の様な共用部と男子寮女子寮みたいな感じで。
これ、ちょっとリフォームも考えんとだな。まぁ、だがそれは良い。
むしろ俺が驚いたのは、イグディの事なんだ。
「お前、引き籠もりの癖に、何処で嫁さん見つけたんだよ……」
そう、引き籠もり犬ことイグデイな、嫁さん連れ込んでた挙げ句、子供まで出来てたんよ。
いや、年齢考えれば、居ても可笑しかないんだがよ、どうしても『いつの間に』って思いが拭いきれんのな。
その上、飯やらなんやらは、教会に残ってる連中が与えてるから、なんかもう、悠々自適なスローライフ状態。ナニソレうらやま。ちょっとその位置代われや畜生!! おっと、少し取り乱してしまった様だ。紳士的に行こう。
まぁ、番作って子供も設けてって事自体はお目出たい事だ。昨日教会に着いての初対面ではミカやバラキ達も興味津々といった感じで、鼻を利かせていた。流石に子供を産んだばっかりの母犬んとこに特攻かます阿呆は居らんかったわ。うん、母犬に特攻かました事がある俺が言うなやって話ではあるんだが。反省はしているが後悔はしていない。
何だかんだでイグディ、この教会の最古参の一頭だからなぁ。ある意味最初から落ち着いた生活をしてたとも言える。
けど、だとしてもホント、どうやってこんな美犬と知り合ったんじゃろか?
そんな風にイグディの嫁さんを見てたら、何かミカとバラキが頭を擦り付けて来た。
ああ、うん。新入りをあんまジロジロと見るもんじゃ無いよな。
取り敢えず二人を新開発の『耳周りから始める愛犬可愛がり48手』を駆使してモフっておく。
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社交界に立ち位置を確立したって言ったって、それで対人関係のストレスが無くなる訳じゃない。
うん。相変わらずの膝上に抱かれてクンクンスリスリされてる訳だ。第二夫人に。
何つったっけ? こう言うの。アニマルテラピー? 違うか。
いやまぁ、こんな事くらいで、ストレス発散出来るんなら、いくらでも付き合う所存だよ。
社交界だと、やっぱり俺の噂がそこかしこで聞かれるらしい。まぁ、ピンキリらしいが。
基本、平民の冒険者出身って事で、あんまり好意的な噂は聞かないんだそうな。差別的な意味でな。
第二夫人も、その辺りは忸怩たる物は有るらしいが、それでも貴族として培った建前を貼り付けて、俺がお願いした『オーサキ辺境伯中立論』だけを蒔くに終始してもらってる。
あんま、 俺との繫がりを勘繰られても何だしな。
それでなくても、俺の見目が王子達に似てるって事でも噂に成ってるらしいし。
うん。考えてみりゃ当たり前だわ。国王とか公爵以前に、もっと年齢の近い有名人が居るやん。
まぁ、似てるって言っても、俺はこれまで王家に発現した事も無けりゃ、取り入れた事も無い赤髪と赤褐色の肌、赤眼の子供で、ぶっちゃけ、俺以外では見た事も無いオンリーワンなユニークキャラクターだからな。今の所、他人の空似って事で落ち着いてるらしい。
それでも、“火のない所にも煙を立たす”社交界。誰の隠し子だとか庶子が何だとかと、醜聞が積み上がってるんだそうな。
「トールちゃんは、私の息子なのにぃ!!」
あ、そっちですか、そうですか。




