息抜きだって必要だよな
「酷いのじゃぁ!! ワシを放置して戻って来ないなんて、何をしておったのじゃぁ!!」
うん。ぶっちゃけ忘れてた。色々あったんだよ、色々と。
俺が風呂に汗を流しに行った後、『すぐ戻る』と言った俺の言葉を信じて、犬達とドッグランで遊んでいたらしい。
だけど、いくら待てど暮らせど戻って来ない俺に痺れを切らして、一人で館内を探索していたところをファティマに見つかり、スマキにされて、貴賓室のベッドに転がされたんだとか。朝まで。
放置してた俺が悪いとも言えるが、隣国の領主館を勝手にウロウロするってどうよ? せめて、メイド娘の一人でも捕まえて同行させて居れば、こんな悲劇は起こらんかったんじゃが?
そして、相変わらずのファティマの容赦の無さがね。隣国の女王相手にしてるってるのに、全くブレがねぇ。
その上、キッチリと聖弓の方にはネットワーク通じて、泊まってくとか連絡入れてるってぇ、そつの無さがホント。
「兎も角!! 謝罪を要求するのじゃ!! 誠意を見せるのじゃ!! 今日はワシに付き合って貰うのじゃ!!」
「いや、申し訳なくは思ってるから、付き合うってのは吝かではないんだが、お前、仕事は?」
俺がそう言うと、コイツ、露骨に目を逸しやがった。もしかして昨日も、打ち合わせにかこつけて逃げてきたんじゃ無ぇだろうな?
それで結局、泣きを見るのは自分だからな?
「兎に角!! 今日は遊ぶのじゃ!! 反論は認めぬのじゃ!!」
まぁ、良いけど。
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はい、と、言う訳で遊戯室に来たわけなんですが。
いや、昨日来た時に、思いの外設備が充実してたんでな。俺もちょっと遊びたくなったんよ。
書類整理に関しては……明日の自分に期待って事で。
「フオォォォォ!! 何じゃ? コレは、どう言う遊具なのじゃ!?」
うん? そう言や、転生した後、こう言った遊具とか見てねぇってか、遊ぶ様な場所すら行った事なかったな。
てか、同年代と遊んだ事すら……
いや、移民の子等とは遊んだか……ただなぁ、あれはジャンケン大会だったからなぁ。
それでも遊んだっちゃ、遊んだことになるのか?
……ここにある遊具も、あんま一般的な子供の遊び道具じゃねぇよなぁ。かろうじてTCG位?
いや、コレもこの世界的には一般的とは言い難いか。
うん。ブランコとかシーソーとか、そう言った遊具も作ろう。うん。
それはさておき、俺もここで遊ぶのは初めてだからな、コインって、普通に通貨使って構わんのじゃろか?
「あ、それはわたしが両替します」
ルールールーに言われて両替をする。へぇ専用コインがあるんだ。
「表面の凹凸が大きすぎたり、コインの薄さだマチマチですと、遊ぶのには向いていないので」
「そう言うもんか?」
「下手をすると詰りますよ?」
ああ、成程。ってこたぁ、結構、研究してるんだな……いや、だからまだ、遊戯室出来てから半年くらいしか経ってないんじゃが!?
いつ、そこまで研究してた!!
「遊び終わったコインは、プールしておく事も出来ますし、景品と交換もできます」
「……有るの? 景品」
「ドワーフの皆さんが習作等を提供して下さっています」
へぇ、ドワーフの習作か……いや、何でコレ領主の館の中でやってるかね?
普通に遊戯館として街に置けば、ストレス発散の場として活用できね? できるよね? 俺、そう言った嘆願書とか見た覚えないんじゃが!?
何で、俺ん所まで、報告上がってきてねぇの? ナゼナニホワイ!?
「何をやっておるのじゃ? 早う来て、やり方を教えるのじゃ!!」
エリスの言葉に、ハッとする。グルグルと考えてる場合じゃなかったな。今は、エリスと一緒に遊んでやらねぇと。
そう、思い直し、俺は彼女と一緒に、思いっきり、楽しむことにした。




