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異世界で前世の黒歴史を見た

 食堂で冷やした果実水を飲んでいると、ティネッツエちゃんがひょっこりと顔を出して嬉しそうに笑顔を見せた。

 さっきのキャルの話もあったからなぁ。一瞬、どういう顔をして良いか分かんなくなったわ。


「トールさま! お見せしたい物が有るんです!!」

「見せたい物? 俺に?」

「はい!!」


 やけに元気だわ。まぁ、見せたい物が有るってんなら、見せてもらいましょうやね。

 俺が『良いよ』と返事をすると、『こっちです!!』と手を引いて案内してくれた。いや、ここ、俺も暮らしてる場所なんだから、手を引いて貰わんでも迷う事たぁねぇんだが? 嬉しそうにしてるから態々指摘はせんが……あれ? これがもしかしてキャルが注意してた事か? いや、好きにするって決めたんだから、まぁ良いのか?


 そんなこんなで連れて来られたのは、屋敷の遊戯室って事で作った部屋だった。確か、カードゲーム用のテーブルとかお試しで作ったピンボールとか置いておいた場所だったな。()()()ゲーム機と、ボードゲーム()()を幾つか増やしたとか言ってたっけか。

 そう言や、遊具を運び込んだ以降、足踏み入れるの何気に初めてだわ。


 中に足を踏み入れた俺は、一瞬、(まばた)きを繰り返した後、目頭を揉んで二度見した。ん? んん~~~~?


 俺の記憶に有る遊戯室はさっき言った通り、テーブルといくつかの遊具がある程度の部屋だった筈だ。それが……


 この屋敷に住んでいる元孤児達、現執事メイド達は元より、コボルト自警団の者達やドワーフ達。果ては冒険者に至るまでが、思い思いに寛ぎ、ゲームに興じている。


 セキュリティー的にどうなんだと思わんでも無いが、まぁ、それはまだ良い。全員が全員、顔知ってる連中だし。


 そいつらが興じているゲーム、それが問題だ。ええっと? あれはスロットにパチンコ、ルーレット、それとコイン落としか? それらが複数台。流石に電源使用のゲームは置いて無いが、何時の間にこんなに増えた?


 それにあれはビリヤード台か? いや、それ等はまだ良い。むしろ見間違いを疑ったのは、壁に作られた棚にミッチリと並ぶボードゲームの群れ。


 ……この屋敷建ってから半年は過ぎてねぇよな? 何だあの量!!


 それと、その奥のテーブルでやってるカードゲーム、どう見てもT(トレーディ)C(ングカー)G(ドゲーム)なんじゃが? トランプとかそう言うのすっ飛ばして何故にそっちへ行った!!

 ってか、TCG(それ)が作れるって事は、印刷が出来てるって事だよな!? まさか、1枚1枚手書きって事ぁねぇだろうし!


 てか、こんな事できるんなら、書類を定型化するのが先じゃねぇかな!?


 何? ティネッツエちゃんが見せたかったのって、これか?


「トールさま、こちらです」


 と言って、テーブルの置いてある一画を指さした。あ、うん。この光景自体は彼女にとって特筆すべき事じゃないんな。自分の屋敷だってのに、こんなん成ってる事に気が付かんかった、俺の方が可笑しいか。

 いや、そもそも、この屋敷大きすぎるんだってばよ。それに遊戯室、奥まった場所にあるから、ここ目的じゃ無きゃ基本来ねぇし。


 その上、この屋敷ん中居る時って基本書類仕事で、書類仕事をしてない時って、旅の空な訳じゃん? で、帰って来ては溜まった書類仕事をこなしてって、自分お屋敷に居る時が一番心が休まらんてどんな状態だよ。


 うん。ただの愚痴だ。自分で仕事増やしてる手前、文句も言えんからな。


 それはそれとして、ティネッツエちゃんが案内してくれたテーブルにはコボルト族の若い子供達が仕切りを隔てて向かい合っている。……潜水艦ゲームって訳じゃねぇよな? いや、ここのゲーム類のアイデアの出所がハッキリして無いから、絶対にないと言えんのだが……いや、十中八九、聖武器アーカイブからだろ、これ。


 で、そのテーブルなんだが、向かい合ったコボルトの子の片側は、何かカードを見て、その後目を瞑る。仕切の逆側の子は、同じ様に目を瞑っていたと思ったら、目を開けて、テーブルの上のカードを指さした。それを見ていたギャラリーがワッと沸く。


 ……なんだろう、ちょっとデジャブが有るなこう言う光景。特に前世で。

 後ろから様子を覗くと、カードは大きめ。そのカードに書かれているのは波型に星型、四角と丸にプラス。そんな図形が1枚につき1つ。うん。これ所謂ESPカードだ。


 本来はゼナー・カードっったっけか?

 超能力研究用のカードだ。


 ってこたぁ今やってるのは……


「テレパシーテストか」

「!! ご存知でしたか!!」


 やっぱり凄い!! とばかりに目を輝かせてくれるティネッツエちゃんには悪いが、ちょっと黒歴史なんよな。

 流行ったのよ前世では子供の頃!! それこそコンシュマーゲームで超能力訓練ソフトが出る位に!!

 俺もご多望に漏れずハマったさ!! やっちゃったよ図書館で『潜在能力開発~』みたいな本借りて来て必死に!! うん。まぁ、全く使えなかったけどさ!!


 で、こうして沸いてるって事は、出来てるって事だよね? 【念話(テレパス)】。いや、俺もファティマ達とやり取りしてるから、出来るんだって事は理解してるよ? 理解はしてるんだけど……


 こう言う、前世に有ったっぽい代物で出来る事を見せられると、何と言うか釈然としない物がこみあげて来るんよ。

 うん。これが理不尽な感情だとは分かっちゃ居るんだが。

 てか、見せたかったのがテレパシーテスト(これ)って事は、詰まり……


「もしかして、コボルトは大体のヤツが、()()出来るんか?」

「はい! これで、トールさまが欲しがってた、つーしんき? と言うのが出来ますね!」


 嬉しそうにそう言うティネッツエちゃんに、思わず顔を顰めた。

 いや、有り難いちゃ有り難いんだけんどもよ?


 ちょっと()()は使えねぇよなぁ。

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