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戦闘訓練をしたんよ

「な、何でこやつがここにおるのじゃ!?」


 俺の監視目的らしいですよ? それも傭兵国ギルドマスターから頼まれた。

 屋敷から少し離れた場所にある訓練所に来た俺達は、そこで自警団と冒険者の一部を鍛えているらしいバフォメット……人間態だからテモ・ハッパーボって呼ばんとあかんのかね? に、遭遇した。

 こいつ、毎日の様に出かけてるとか思ってたが、訓練つけててくれてたんか。う~ん。向上心のある相手に対しては悪い奴じゃぁないんよなコイツ。邪悪ではあるが。邪悪な奴ではあるが。


 エリスはバフォメットの人間形態も見た事あるからか、驚いてる様だ。うん。俺も大概麻痺してるが、そう言えばコイツ、魔族じゃんかね。普通は忌諱すべき相手だったわ。失敗失敗。


「客人扱いだ。あまり気にするな。これでもS級冒険者らしいぞ? テモ・ハッパーボ卿は」

「え、S級? テモ・ハッパーボ? なのじゃ?」


 混乱してる混乱してる。うん。気持ちは分かる。色々と納得できないって事も。


 う~ん。これ、傭兵国のギルマスが実は魔族だって事も情報共有しておいた方が良いのかね?

 グラスやらから話聞いてる限り、結構な人格者として通ってるらしいんじゃが……

 魔族はなぁ、個人の欲望と周囲の状況が合致してる限り、それ程拙いって状況には成りにくいんだよなぁ。今みたいに。

 基本、欲求には忠実で、我慢するって事をしないから、長年その状況で治まってるなら、欲望を着実に消化してるって事でもあるんで、下手にちょっかい掛けん方が平和なんよね。

 それこそ『藪を突いて蛇が出た』って状態に成かねんからなぁ。


「まぁ、何かあったら、俺がどうにでもするから」

「オヌシ様がそう言うなら構わんのじゃが……」


 納得は行っていない様だが、それでも矛先を納めてくれた。まぁ、自国の内戦を引き起こす原因となった輩の内の1人だしなぁ。


「オンオン!!」

「アオン!!」


 訓練所の隣に有るドッグランから、俺の匂いを嗅ぎ取ったのか、ミカとガブリが来てくれた様だ。俺が執務室に籠ってる間、犬達は犬達で狼達の訓練をしてくれているらしい……あれ? ドッグランの方にもミカとバラキの姿が見える。

 ()()分身してんのかコイツ等。ホント、どうやって分身してんだ? ウリとかガブリとか男衆は出来ないみたいなんだが、固有スキルみたいな物なんじゃろか?


「おお! ミカにバラキか!! 元気にして居ったか? 久しぶりなのじゃ!!」


 そう言って二人をもふる。

 さて、俺も身体を動かすとするかね。そう思い、後ろ手にラミアーの頭をポンポンと叩くと、彼女はスルリと俺から離れ、適当な距離を取ってくれた。

 軽くストレッチをした後、バフォメットに声を掛ける。


「テモ、良いか?」

「うん? もう執務は良いのか? 吾輩は何時でも良いぞ? ライバル、トールよ」


 俺は、パッシブで発動してる身体能(フィジカルエ)力向上(ンハンスメント)の他には魔力外装だけを纏うと、ファティマに対して手を伸ばす。


「ファティマァ!!」

『【了解】サー、イエス、サー!!』


 聖斧形態に成ったファティマを手に、バフォメットと対峙した。


 ******


 人間態の時のバフォメットは、一応と言う枕詞はつくが、双剣を構える。いつもだと素手だからなぁ。巨人族との旅の時は、このスタイルだったんだが、初めて見た時はちょっと目を疑ったわ。

 両手に剣だろ? どんな風に使うのかと思ったら手首のスナップ使って、まるで刃の壁でも作るかの様に仕掛けてくるんな。

 いや、この使い方、ナイフでやる様なやり方だろって思ったんだが。流石の膂力だったわ。


 けど、基本的にステップワークを使いながらの牽制なんで、ボクシングを剣技に落とし込んだらこんなんだろうなって感じで、成程、これがバフォメット流の剣かって思ったわ。


 ただ、それでも、バフォメットが武器を使わない理由が良く分かる。いや、決して剣技が劣るって訳じゃぁ無く。


「ふむ、ここまでか」

「だな」


 キィィィィィンッ!! と言う音が響き、剣の刃部分が放物線を描き飛んで行く。


 バフォメットの手には、根本から折れた剣。確かに使ってるのは刃を潰した練習用の剣ではあるが、その分丈夫さは折り紙付きなんだがね。

 それでも、コイツの力に耐えきれずに折れっちまうって訳だ。音速も超えてはいないんだがなぁ。


「力が有り過ぎるのも考え物ってか?」

「いや、それでも、ライバル、トール以外の者との対戦で剣が折れる事など無いのだがな」


 手元の柄だけに成った剣を見ながら、何故か呆れた様にバフォメットが言う。

 あれ? 俺も原因の一つにされてねぇか? 俺、関係無いよな?

 周囲を見れば、俺とバフォメットとの1戦に見入っていた自警団やら冒険者やらが呆然と見ていた。


 あかん、俺に同意してくれそうな輩がおらん。


 そんな中で、エリスだけが「また、腕を上げたようなのじゃ」と、なんか頷いてて、ラミアーは無邪気に拍手をしてた。


『【懇願】次はボク!! ボクを使って下さいデス!! オーナー!!』


 いや、俺、1戦やったばっかなんじゃが? っても、確かに身体を動かし足りてないのも確かなんよな。


「……テモ・ハッパーボ以外とだぞ?」


 まだ、槍の熟練度高くないし。


『【了解】オッケーデス!!』


 そんな感じで、俺は槍の訓練をしつつ、他の参加者全員を次々に打ち負かしていった。当然、フォローはしない。


 獅子は我が子を千尋の谷に突き落とし、這い上がってくるのをじっと待つとですよ!!


 さあ! 這い上がってくるが良いぞ? 若人よ!!


 って、今は俺のが年下だったわ。

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