修羅場と言って良いのか
「来たのじゃ!!」
「あ、うん」
飛べるからって、窓から来るなよ女王様。
そうか、空中に対する備えもしなきゃならんのか。魔法兵団とか作らんとかね? 騎士団に空中疾走覚えさせるのとどっちが早いんじゃろ?
いや、空中疾走は俺でもオファニム装備でギリなんだから、普通は無理なのか?
『【肯定】普通は無理です。マスター』
「あ、はい」
何気に“普通じゃない”判定を喰らったんじゃが!? うん、自覚はある。
「……砦の事か?」
「うむ、それの事もあるが、そろそろ交通に関して色々と話さんといけないのじゃ!!」
それもそうか。お互いの国の砦も出来上がりつつあるんだから、そこの通行の取り決めをせんとか。
とは言え、俺の方は国王から犯罪者等の出入りに関して厳しく取り締まる事と、関税に関しての取り決めを国のそれに合わせて欲しいって位の事しか頼まれてはいない。
後は……あまり仲良くはしてくれるなって事位か。そっちに関しては俺個人はそこそこの距離感で付き合ってるつもりでは居るんだがね。
「どうしたのじゃ?」
「いや、そうだな、取り敢えず決めんといかん事が一つあったわ」
「何じゃ?」
「街へは門を使って入れ」
「うぬぅ……」
そもそも公式訪問なんだから前触れを出せよ。
******
とは言え、大体の事はあらかじめ話し合ってあるんで、後は細かい調整だけな訳で、話し合いそのものは早々に終わった。
で、隣国のゴスロリ女王が今何やってるかってぇと、俺の膝を枕代わりにしてゴロゴロしてる。あれ? 適切な距離って何だっけ? いや、これ、エリスがラミアーに対抗した結果なんじゃがね。
最近のってか、ちょっと前からラミアーは大体俺の視界の届く範囲から離れなくなった。いや、俺の視界の範囲ってか、ラミアーの視界の範囲か? これ。
何ちゅうか、おはようからおやすみまで(俺の)暮らしを見つめるラミアー、みたいな?
まぁ、これは、彼女が目を離した隙に死にかかった俺の責任もあるんだろうがね。それ以前にラミアー、俺の事同族っぽく思ってる節があったから、主に身体能力向上を切った時の見た目の共通点とか、そう言う所を含めてだとは思うが。
ただ、それでも空気は読んでくれるのか、執務に集中してる時はソファーの方でゴロゴロてるし、面会が有る時はソファーの端っこで大人しくしてるし……
これでも読んでくれてるんだよ多分。それ以外は大概引っ付いてるし。
で、エリスと話している間は端っこで大人しくしてたんだけど、話し終わった途端に、いつもの様に圧し掛かって来たって訳だな。
で、それを見たエリスが膝枕を要求して来たってか、無言で膝を枕にして来たんよ。
「で? その娘は何なのじゃ? 見た感じ、姉弟か? なのじゃ」
それ、全体的に白くて目が赤いってだけの共通点だよな? 異母姉なら別にいるらしいぞ? 会った事は無いが。
俺は首を傾げながら、ファティマの入れてくれたお茶を一口飲んだ。
「何だろう? ペット枠?」
魔物だし。
エリスがお茶請けのクッキーを齧りながら俺をジト目で睨む。
「……」
うん。自分で言ってても酷い話だと思う。ただなぁ適切な呼び方が無いのも確かなんだよな。
実際、ラミアーは吸血鬼で、人間って訳じゃぁない。だからと言って普通の魔物とは違う。ハッキリと言葉での意思疎通ができる相手だ。
だからこそ、扱いに困っているって部分はある。いや、最後まで面倒を見る気では居るけどさ。
「いやね、こう見えて、コイツ魔物ではあるんよ」
そう言うと、エリスの眉間の皴が深くなった。そうは見えんよな? だけどコイツ吸血鬼なんだぜ、と。そう言った事を含めて、説明をすると、今後は別の意味で眉間に皴を寄せた様だ。
「うぬぅ、成程、確かにそれは扱いに困るのじゃ。意思疎通は出来る、が魔物ではあると……」
「なんで、現状維持が最も適した状態かなと思ってな」
と、説明するとエリスは何か考え込んだ。まぁ、その葛藤も分からんではない。だからこそ、俺はペット枠と言う事に落ち着いたんだし。
何と言うか、ラミアーが俺に向ける愛情自体がそんな感じ? 猫が気儘に懐く様なって言うか。
暫くブツブツと何か考えている様子だったエリスだが、俺に圧し掛かってゴロゴロ行ってるラミアーに対し、我慢の限界が来たらしい。
いや、おまいも俺の膝枕でゴロゴロしてるじゃんかよ。
「あー!! のう、オヌシ様よ! 兎に角その女がオヌシ様から離れる様な場所は無いのかなのじゃ!!」
うん、何か、取り敢えずのライバル認定はした様だ。っても、俺はまだ結婚とか婚約とかするって事に感しちゃ、何にも考えちゃぁいないから、勝手にそんな風に考えられてもな、って感じなんだがね。
まぁ、そう言う事では無いんだろうがさ。
さて、ラミアーが離れてくれる場所ね。流石にトイレと風呂にまでは乱入はしないんじゃが、そう言う意味じゃぁねぇよなぁ?
「一応、戦闘の特訓とかやってる時は離れてるがね」
「良し!! ならば訓練場に行くのじゃ!!」
何かそう言う事になったらしい。まぁ良いが。




