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りょうしゅのおしごと

 少し疲れた様な、だが、その瞳には希望と言う光を宿した青年から受け取った手紙に目を通した俺は、「了解した、アンタが代表って事で良いんだな?」と確認した。


 その青年は自信を持って頷くと、「よろしくお願いします」と頭を下げる。


「グレッソチューン、後は任せるけど良いな?」

「分かりました。ささ、こちらへ、他の代表と顔合わせをしましょう」


 そう言って青年を連れて俺の執務室から出て行った。


「取り敢えず、面会はこれで最後だよな?」


 俺の背後で控えていたファティマにそう聞く。


『【肯定】後はいつも通りのスケジュールで大丈夫です』

『【嘆息】避難民が多すぎデス。頭悪すぎじゃないデスか? 聖王国』

「……それに関しちゃ同意するけんどもよ」


 ジャンヌのボヤキに思わず頷いた。

 あの後、聖王国のリティシア嬢は、定期的に難民をこちらに送って来る様に成った。こっちとしては有り難いが、それって定期的に送れるほどの難民が出るほど、小国群の戦火が拡大してるって事でもあるんで、悩ましい所だよな。


 ちなみに、家に難民を送ってくれるのには、件の難民リーダーも手伝ってくれているらしい。主に説得とか。やっぱ、同じ様な苦労をしてきた人間の言葉ってのは重いやね。リーダーに感謝。


 ファティマの入れてくれたお茶を啜りながら、少しばかり気を緩めて一息吐く。さっきまで空気を読んでソファーの端っこに居たラミアーが、さっそく俺の背後から圧し掛かって来た。


 しっかし、『人は城。人は生垣、人は堀。情けは味方、仇は敵なり』って言葉もあるくらいだ。土地だけぶんどっても、そこに暮らす人間が居なけりゃ意味はないと思うんだがね。小国群。

 そして、聖王国は宗教国家だろ? 土地より信者を増やさんといけんのではないんかね? 座して機会を待ってる場合なんじゃろか? まぁ、手を汚さずに漁夫の利狙ってる輩の考えなんて、知ったこっちゃないんだがね。


 そんな難民定期便の事もあって、交易船の追加とかマイクロバス型馬車での定期交通とか色々やる事も増えて行ってる訳だ。


 この辺、基本的にはエクスシーアにぶん投げてるんだけど、それでも俺が確認しなきゃならない部分もあるんでね。


 人が増えるって事は細かいいざこざも増えるって事でもあるんで、自警団をそろそろ騎士団にバージョンアップかな? 自警団ってのは読んで字の如し、自発的に警備をしてくれてる集団であって、実は権限とか無いんよね。実質、俺の部下扱いだったとしても、ボランティアは、ボランティアな訳だから。


 そもそも辺境伯って独自の戦力揃えても良い訳だし。まぁ、それでも国王様ん所には一筆書いとくか。

 こうやって、自分で仕事増やしてる部分もあるから、ちょっと自縄自縛だよなぁとか思う訳だ。


 ラミアーを引き摺りながら、執務机に戻って手紙を書いて封をする。


「んじゃ、よろしく」

「……かしこまりました」


 もはやルールールーもラミアーについては指摘すらしなくなったか。

 こうやってルールールーに渡しとけば、ルーガルー翁経由でDM送れるって、地味に便利だよなぁ。ただ、それ以外との連絡手段がねぇ。

 やっぱり、通信機欲しいよな。どうにかできんもんかね?


 通信に必要なのって、電波と、その送受信機だよな。電波の検知はアンテナ、コイル、検波して音声に変換するのは鉱物で出来るんだったけか? 前世で作ったラジオキットは黄鉄を使ってたんだったけ?

 要はアンテナと検知器、その増幅器と音声変換が出来れば良いって事だよな? いや、確か現在のイヤホンだと、その増幅器も必要だったんだっけ? ちょっとあいまいだな。

 装置を全くの逆流させれば送信も出来る……ハズだよな? 実際はそんな簡単なもんじゃないんだろうけど。


 てか、イヤホンそのものもコイルの為の銅線と磁石が必要なのか。


 そう言った知識って、どっかに無いかね? そう思ってファティマに視線を送るが、微動だにしやがらねぇ。うん。全く興味が無いって事だけは伝わって来たわ。

 聖武器ネットワークのアーカイブ知識って、コイツ等四姉妹の興味のある分野しか無いから結構偏ってるんよね。封印解除後は魔人族国の図書室の本を片っ端から入力したっぽいんだけど、それ以前の知識は特に。


 まぁ、その辺は俺の覚えてる限りの原理をマトスンに丸投げしとくか。そう思って、席を立つ。


「マトスンは研究室かね?」

『【肯定】おそらく、何やら同好の士と共に悪だくみをしている様でしたので』


 いや、悪だくみて。

 何かアイツ、最近、弟子ってか、孤児仲間やコボルトの若い奴等の同好の士と一緒に研究施設の拡大とかやってるんよね。


 まぁ、予算とかは普通に提出してるし、それに関しちゃ文句は無いってか、情報の漏洩にだけ気を付けてくれれば、仲間増やす事自体には賛成なんよ。

 どうしたって、人間一人で出せるアイデアなんてたかが知れてるし。切磋琢磨して、色んなアイデアを出してもらいたい所だわ。

 それが街の発展にもつながると思うし。


 何なら、ドワーフ連中にもその辺り声をかけておくか。

 腐食電池や電気を使ったメッキの知識と一緒に。

 電流が有れば態々水銀なんて危険な触媒使わなくてもメッキが出来るし、細工とかやるドワーフにとっては垂涎の技術だろうからな。セットで知識流しとけば、銅線の研究開発もやってくれるだろう。多分。

 逆にコイルと磁石が有れば電流も作れるようになるし、ここら辺で新しい知識の開示をしておくのも悪くないだろうさね。

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