これもテンプレ?
俺達がその場に着いた時、そこを支配したのは『理解不能』の4文字だった。
切り立った岩山深い谷間道で襲われてるであろう商隊と、襲っているであろうむくつけき男達。
それらが一斉にこちらを見て、そして思考を止めた。
「ファティマ!!」
『【了解】サー、イエス、サー!!』
御者台から飛び出した俺は、ファティマをぶん回し、唖然として棒立ちに成っている、山賊であろう男共を叩き伏せる。
この頃、同等以上と闘ってないから戦い方が雑に成ってねぇか心配になって来るな。いや、鍛錬は怠ってないんだが。
けど、バフォメットに模擬戦とか頼むのも何かな。喜ばせそうでなぁ。
じっと手を見る。
まぁ、良いか。
「イブ、頼んだ」
「ん!」
俺がそう言うと、イブが土魔法で檻を作り、吹っ飛ばした男達を逃げられない様に処理した。
さて、状況確認をせんとな。殺気やら粗野な気配なんかからの感じだと、ぶっ飛ばした方が悪人っぽいと思ったんだが、どうなんじゃろ?
「一応、確認しとくが、あんたら商隊の護衛って事で良いんだよな?」
「……」
「お~い!!」
割と良さげな革鎧の男に声を掛ける、が、『え?』みたいな表情のまま俺と言うか俺の後方を凝視してる。
うん、まぁ、インパクトあるよな。逆立ちしてる半裸の巨人族。
逆立ちのまま全力で走らせてたからゼーゼー息荒くしてるし。動き辛いってんで、上半身の防具は全部脱いだ。
当然だが、巨人族の全員が全員今ここで逆立ちをしてるって訳じゃない。
道中力尽きたヤツはマイクロバス型馬車に容赦なく突っ込んでおいた。
で、そんな感じで残ったのが8名の猛者。タイガージョンも勿論その中に入ってる。流石リーダーを任されただけはある? いや、逆立ちで走る事なんざリーダーの資質に関係は無いか。
あ、巨人族的にはリーダーじゃなく『筆頭』と言うらしいから、そう呼んでやらんとだな。
「おーい! あんたは商隊の護衛なんだよな!!」
ちょっと揺さぶってやると、男はハッとした様に俺を見て、目を瞬かせ、2度見をした。いや、何よ。
「あ、ああ、俺達が商隊の護衛を受け持ってる『戦慄の稲妻』のマホガニーだ」
合ってたらしい。
「ええっと、あんたらは?」
そう言えば、パーティー名とか別に決めてなかったな。
「俺は、C級冒険者の……」
「ああ!! あの方は!!」
俺が名乗ろうたした時、『戦慄の稲妻』の魔術師らしき少女が素っ頓狂な声を出した。
「テモ·ホッパーボ!! S級冒険者の!!」
「「「なに!!」」」
ああ、バフォメットが顔を出したのか。と思って、マイクロバス形馬車の方を見たら、直ぐに引っ込んだ。
……面倒臭かったんだろうな。アイツ、強いやつとの戦い以外、興味ないし。
ああいや、己を高めようとする奴も好物だったか。
巨人族と交流があるのも、その辺が理由かね? 脳筋っぽいし。
「き、君はテモ·ホッパーボのパーティーメンバーなのか!?」
「違うよ」
「そ、そうか……」
大人気だな、さすが有名人。そしてさっきからチラッチラッと見てくるのは、紹介して欲しいからかね。わざわざ聞かんけど。
バフォメットのインパクトで、逆立ち巨人族の事は頭から消えたっぽい。まぁ、どっちにしろ話が進まんのだが。
そして俺の右腕に抱き着いてるイブと、足元にすり寄ってるバラキの機嫌が段々悪く。まぁ、俺がシカトされてる形だからな。
ほら、機嫌直せ。俺は気にしないから。そんな意思を乗せて、二人の頭を撫でてやる。
さて、どうするかね。いや、普通に状況を尋ねれば良いんだろうが、その後、バフォメットについて根掘り葉掘り聞かれそうでなぁ。
話は進めたいんだが。
何か、巨人族、腕がプルプルしてるし。いや、逆立ち続けなくても構わんのよ?
そんな事をしていると、商隊の馬車の方から恰幅の良い男性が、護衛を伴ってこっちに近づいて来た。商隊の商人さんかね?




