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巻き込まれ型イベント

 回され過ぎて気持ち悪くなったのか、地獄絵図となって地面に突っ伏した派手鎧達は、眉根を寄せたイブに魔法で水ぶっかけられた後、適当な空き家に押し込めた。びしょ濡れのまんま。


 はい、すいません。もうちょっと考えて対処すべきだったと反省しています。

 相手に対する態度がじゃなく、汚物の後処理の事を考えての方な。


 ガブリ、そんなもん嗅ぐな。香辛料からは逃げるのに、こういうもん嗅ぎたがるのは何でじゃ?


 それでなくても屋敷前だってのに盛大に汚しちまったな。イブとジャンヌが放水して下水に流してくれてるのを見て、申し訳ないやら有り難いやら。

 しかしまぁ、上下水道ちゃんと整備しといて良かったと思うわ。いや、決してこう言う事する目的で作った訳じゃねぇんだが。


 取り敢えずルールールーの方に、ルーガルー翁経由で国王に連絡入れて(ちくって)くれって言っておく。こうしておけば、誰か回収しに来んだろ。


 屋敷に戻ると、なし崩しで巨人族が応接室に案内されていた。いや、帰れよ。


 屋敷の天井は高めに取ってあるおかげで、巨人族相手でもそこそこゆとりがある。そもそも巨人族が出入りするなんて事想定して無かったんだがね。

 絨毯の上に胡坐掻いて座ってる巨人族と向かい合わせに俺とイブ、ラミアーがソファーに座り、足元にはミカとバラキそしてジャンヌが斜め後ろに侍る。もっとも、ラミアー、俺の頭を抱きかかえる様にして後ろからもたれ掛かってるけど。何か最早そこが定位置になりつつあるよな。

 まぁ、それは良いんだ。

 俺はファティマが入れてくれたお茶を飲んで唇を潤しつつ口を開いた。


「で、何で巨人族(コイツら)居るん?」

「ブハッ!! 言われておるぞ? タイガージョン」

「うぬぅ」


 『うぬぅ』じゃねぇよ。理由がないなら帰れよ。いや、巨人族(こいつら)よりもっと疑問があるヤツが居るんじゃが?


「バフォ……テモ・ハッパーボ卿。お前もだ」


 むしろ、何でお前が居るバフォメット。


「いや、巨人族(コイツら)が強者を紹介して欲しいと言うのでな、強者と言ったらライバル、トールであろう?」

「傭兵国のギルド長紹介しとけや、傭兵国冒険者ギルド所属S級冒険者」


 俺を巻き込むな。それでなくとも忙しいんだ。


「いや、アヤツは指導者としての腕は確かなのだが、実力的にはライッバル、トーーーールには及ばんのだよ」


 マジか。


「いやいや、第一、俺が竜狩りできる程の猛者じゃないって事で決着がついただろ? はい、帰れ」

「い、いや、それは貴殿が『漢天拿摩』ができる程の強者だと見抜けなかった我々の落ち度だ!!」


 済まんが、あの人間お手玉で手の平返されてもな。実際、俺に竜“狩り”なんざできない。倒したのは倒したが、それは死力を振り絞っての事だからで、僅かな幸運があったからこそ、こっちに転がり込んだ勝利な訳じゃん?

 狩りってのは、安全マージンを十分にとって、対象を追い仕留める行為だ。方法を知り、十全な手段を行使できれば、十回やって十回成功できる物でなくちゃいけない筈なんだ。

 そこに運なんて要素は必要ない。いや、そこに絡む運は“出会う事が出来る運”位か。


 だから今も、俺は“竜種”を()()()なんぞとは一片も思っていない。

 そんな心情を感じ取ったのか、バラキが俺を見上げたんで、その頭を撫でる。


「我々とて、弱者を連れて帰る訳にはいかなかったのでな!! その事について謝れと言われれば、頭を下げよう!! もし望むなら、巨人族名物『謝罪油地獄濡留塗流猫不和威斗』をやって見せても良い!!」


 何だその不穏極まる様な名称の謝罪は、ちょっと見たいと思っちまったじゃねえか。そして多分、見て後悔する類のものだ。


「謝罪は要らんよ、で? 俺に何をさせたい」

「うむ、そうか? チラッとでも見てからでも……」


 見せたいんか!? てか、ごっつい巨漢が若干頬染めながら、チラチラとイブとラミアー見ながら言ってる時点で見る気が無くなったわ!!

 よし! 後ろの巨人族、その樽から手を放せ、いつの間に用意したそんな物。むしろ室内(ここ)でやる気だったんか、おまいら。それは部屋ん中でやっても大丈夫なもんなんか!?

 イブも首をかしげているし、てか、家の娘達の前でそんなんやらせられるか!!


「いらん! 要件を言わないんだったら帰れ!!」


 ツッコミがインフレ起しそうだわ!!


「うぬぅ、本当に見る気は……」

「ない!」


 俺に断固としてやらせる気が無いと分かると、巨人族のタイガージョンと呼ばれていた男は、渋々話を始めた。

 って、見せたかったんか? 見せたかったんだな? 特にイブやラミアーに!! やらせるかよ!! とっとと話せ! そして帰れ!!


「うむ、我々の住むヴァルモートは、選ばれし強者が日々切磋琢磨し、己が心技体を磨き高めて居る桃源郷なのだが」


 すでにツッコミたくなったんじゃが!? それはどんな桃源郷よ。てか、それは桃源郷と呼んで良いのか?

 まぁ兎も角、タイガージョンとやらの話を要約すれば、『ヴァルモートの聖域に何か邪悪なモノが住み着いたんで助けて下さい』って事らしい。

 いや、これだけの話を「やれ、何々族の筆頭がどうこうして」とか「なにやら一族があれこれして」とか「その時、なんたら族の誰それが」とか情感たっぷりに身振り手振りを交えて無駄に熱く語るどころか、後ろの連中も実演交えて演舞始めやがるし、聞き終わった頃には日は傾いてるし無駄に疲れたわ。


 ただ、まるで演劇でも見てる様な物だったのか、イブさんもラミアーも凄い食らいつきっぷりで、楽しそうで何よりだわ。

 途中、何処で聞きつけたのか、キャルにヴィヴィアン、グレッソチューンにゲーグレイッツァ、ティネッツエちゃんに果てはグーテンシュバッソまで見に来て、ファティマとマァナが用意した軽食(ポップコーン)を食べつつも、身を乗り出す様に聞いていた。


 そして聞き終わると皆がみんな目を輝かせて俺を見る。タイガージョンの野郎、最後の語りで「こうして我々は龍殺しの英雄たるオーサキ辺境伯に助力を願いに来たのである!! さて、かの英雄の決断は!!」とかって、俺を巻き込みやがったんだわ!!


 お前、さっきは俺の事力不足だとかなんだとか言ってたよなぁ?


 キラキラとした仲間達の視線が痛い。


 あかん、これ断れんヤツだ。そしてバフォメットが俺をニヤニヤしながら見てるのがムカつく。

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