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移住者は募集してるが、こういう輩は来なくて良い

 いや、何だこれ。街に戻った途端に俺達を迎えたのは、何と言うか、混沌(カオス)だぜ。みたいな?


 俺の屋敷の前で睨み合ってるのはコボルト自警団の皆と何やら立派な鎧を着こんだ武装集団。その両軍団を冷ややかに見てる2~3mは有りそうな人達で構成された一団に、そんな彼等を取り囲む冒険者連中は、ちょっとピリピリとした雰囲気を漂わせていた。

 あれって、もしかして巨人族(ギガンテス)ってヤツか? 初めて見た。長身で筋骨隆々な武闘集団って感じだわ。


 てか。


「おい、何やってるバフォメット」


 やけにニヤニヤと、そんな一触即発な状況を見てる人間態のバフォメットに俺は声を掛けた。


「おお!! ライッバル、トーーール!! 良い所に来た!!」


 いや、良い所ってか、やっと帰って来たとこなんだが!? 何この状況!!

 俺の名を呼ぶバフォメットの声に反応したのは、コボルト自警団と立派な鎧を着こんだ武装集団。巨人族達は胡乱気に俺を見、冒険者達はどこかホッとした様な様子を見せた。


「お前がオーサキ卿か。フン、本当に出掛けていた様だな!!」

「最初っからそう言っている!! 第一、お前、首領(ボス)に何だ!! その口の利き方は!!」


 いや首領は止めれ。てかそっちの派手鎧は誰様? うーん、つまりは派手鎧達が俺に用が有って屋敷に来たってか、押しかけて来たが、コボルト達がそれを居ないからって突っぱねたか、屋敷の誰かの通報で守りに来たって所か? そうなると巨人族は何でここに居るんだ?


「どうでも良いが、屋敷に入らせてくれ、やっと帰って来た所だ」


 それを聞き、コボルト達が道を開ける。派手鎧達はそれに対し、俺を通せんぼするかの様に前に立ち塞がろうとする。が、俺はそれを逆に邪魔する様に立ち塞がった。

 ルールールーに、移住者を連れて屋敷に入る様に指示して、改めて派手鎧達の方を見る。派手鎧はフンッと鼻息も荒く、俺に告げて来た。


「キサマをトラヴィス王子の配下に加えてやる! 光栄に思え!!」

「え? 断る。で、そっちの巨人族の人達は何でここに?」


 俺がそう言うと、巨人族の男達は鼻で笑う様にしてからお互いの顔を見合わせると、これ見よがしに溜息を吐いた。

 いや、何だよ。


「竜を狩れるほどの猛者が居ると聞いて来たのだが、これは噂に尾ひれがつき過ぎていた様だな、と思ってな」

「そうだな、じゃ、帰れ。はい、俺に対する用は済んだな、じゃ、解散!!」


 竜は狩るとか言える次元の問題じゃねぇわ! かなり本気で命懸けの対峙をしてたっちゅうの!!

 俺の言葉に派手鎧も巨人族もポカンとした表情を見せる。それを見たバフォメットが、さらに笑い声を大きくした。


 その声で正気に戻ったのか、派手鎧が顔を真っ赤にして怒鳴って来た。


「き、貴様!! わ、私はトラヴィス王子の代理としてきたのだぞ!! その私の命令を断るとは!!」

「命令って……派閥なんざ命じられて入るもんじゃねぇだろ。自分が支持したいと思うから入るんだ。『命令されました』『はい入りました』とかで派閥が決まるんなら、そもそも敵対派閥やら中立なんて物できるかよ」


 そんなに単純な物だったら、そもそも魔人族国で内戦なんざ起こらなかったんだ。

 あと、バフォメット、そろそろ笑い声がうるさい。


「なっ、なっ……」

「てか、派閥の勧誘なら、もうちょっと頭を使え。そのやり方で『まぁ光栄です入りましょう』なんて思うのは、最初っから派閥入りを熱望してるヤツだけだ。下手すりゃ、身の危険を感じて逆の派閥に逃げる所だぞ?」


 それとも、それが目的か? 相当な自信が有って、盲目的にトラヴィス王子とやらを信望でもしてなきゃ、こんな態度は取らんだろう。

 こんなもん、家臣の態度ってよりは狂信者の態度だ。もしかしたら、トラヴィス王子とやらにそれだけのカリスマが有るのかもしれんが、だとしてもやり口が最悪だ。


 わざわざトラヴィス王子だと宣言してここに居る位だ、敵対派閥は別の王子派か? 後でルールールーに確認だな。

 何にせよ、今、派閥になんぞ入るつもりはない。そんな柵に囚われる位なら、中立を宣言するか、国王(セルヴィスおじさん)所行くわ。


「き、貴様あぁ!!」


 剣を抜いた派手鎧に嘆息1つ。お前、ここが辺境伯領で、俺がその当主だって理解してるんか?


 お前が、どこの誰だろうと、俺にはここで()()()()()()()()()んだぞ?


 派手鎧の周りの仲間も、ギョッとして反応が遅れている。いや、こんな頭に血の上りやすいヤツ代表にして使者として来るなよ。代表にするなら、冷静に治められる奴を傍らに据えろ。

 いや、こう言うヤツだからトラヴィス王子とやらは、重用してんのか? 太鼓持ちとして。


 切り掛かって来た派手鎧を半身で避けてその剣を踏み折る。その勢いを利用して()()()放り投げると、お手玉宜しく空中で回しまくった。


 呆気にとられていた他の派手鎧達が、俺の蛮行を止めようと群がってくるが、その度にお手玉の玉が増える結果となったわ。


 そんな風に俺が派手鎧達をSEKKANしていると、突然、巨人族の中の1人が叫び出した。


「ムウッ!! あれは『漢天拿摩(おてだま)』!!」

「知っているのかっ!! ランディー!!」

「古代文明のあらゆる武術を網羅した『なぜなに武術』に記載されていた『蛇倶凛具(ジャグリング)』と言う幻の闘法で、敵を拿捕し、天高く投げ上げ、こする様にして回転させ投げ続ける事で、その遠心力によって脱出を不可能とした捕縛の為の技!! 成人男性を投げ飛ばす程の膂力に加え、こすり弾く為には繊細な手首のスナップと強靭なリストが必要だと言われておる、最高難易度の闘技じゃあ!!!!」

「「「な、何じゃとぉ!!」」」

「まさか、この地にその伝承者が存在して居ろうとはっ!!」


 してねぇよ!! そんな謎伝承なんざ!!


 思ってたより濃ゆいな! 巨人族!! あと、バフォメット!! テメェは爆笑しすぎだ!!!!

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