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グッドラック

 移住の希望者は、最終的には若い夫婦や子供のいる家族なんかを中心に50名ほどが集まった。全体の四分の一程度だな。

 それでも、ここに来て交渉をしているのを見た時に考えてた人数よりは多い位か。


 件の声の大きい村人は、今も考え直せとか何とか言っているが、もしかして連れてきた人数で報酬が変わるんじゃろか?


 そんな男を冷ややかな目で見ている難民リーダーも、そいつの態度からか、聖王国に入った後、自分達がどう言う働きを期待されてるのかって事を薄々感づいてるっぽい。

 まぁ、その選択は尊重するが、後悔だけはしてくれるなよ、と。


 今、俺達は、俺とファティマ、ジャンヌを中心に、街で買って来た馬車を魔改造している最中だ。イブとラミアーには、昨日仲良くなった子達と遊んで貰ってる。当然だが、彼女達も移民の中に入っている訳だ。

 ミカ達は昨日と同じく、その御守(おも)り。今夜は労いの為に、存分にモフってやらねば。


 さて、何で魔改造が必要かといえば、全員を馬車に乗せる為だ。

 だって俺達はキャンピングカーに乗る訳だし、難民改め、移住民の皆だけ歩かせるって訳にはいかないだろうさ。


 普通の貴族用の馬車は、6人程度乗れる物に3、4人が乗る訳だが、商人やらが使う様なやつは、荷物を乗せられる様な荷馬車で、イメージとしては幌馬車なんかが近いか。そっちだと、横座りで12~15人位が乗れる。とは言っても乗れるだけだがね。


 そのタイプでも今のままだと、5台から必要に成る訳だけど、マックス定員乗っけてだと馬一頭だと流石に馬力が足りんからな。二頭立てだと10頭必要って事になる。内湾通過したら再び使う気でいるんで、馬車(これ)も船に乗せて行きたいんだわ。

 そうすると馬も必要って事になるんたが、流石に馬まで船に乗っけてってぇ訳にもいかない。

 そもそも御者が出来る人が居るかも分からんし。


 なんで、まずやるのが馬車をマイクロバスサイズに拡張。確かあれって運転手を含めて27人位乗れた筈だから、これで2台にまで減らせる訳だ。


 購入してきた木材を手刀でバッスンバッスン切ってると、何人かの子供が興味深そうに作業を見ていた。


「興味あるのか?」


 そう聞くと、皆、頭をコクコクと縦に振ったんで巻き込む事にする。

 運んだり、持って貰ったり程度なら、それ程危なくもねぇだろ。

 簡単なお手伝いを頼むと、嬉しそうに手を貸してくれた。

 この中に、未来のマトスン候補が居るのかね? いや、あれ程変態でない方が良いんだがね。マジで。 


 2台の改造馬車の他に、普通に荷物を積む荷馬車を追加して、その上で全部連結。ぶっちゃけケルブならこれ全部引っ張れるだけの馬力はある。


 当然車輪は、サスペンション付きゴムタイヤに換装。床は毛皮にして直に座れる様にして、全体的に補強をした後、水に浮かぶ仕様に。


 キャンピングカーで牽引して、船の所まで行ければ、引っ張り上げるのは俺が出来るからな。


 ラミアーに言えば、【念動力(テレキネシス)】で馬車を持ち上げてもらえそうだが、最初っから頼る気満々ってのも情けない気がするんで。


 まぁ、見栄だ。だって男の子だもん。


 ギミックを確認すると、手伝ってくれていた子供から歓声が。うん、自分たちが作ってた物がこんなオモシロだったら楽しいと思うよな。


『【愉悦】これで、将来、巨大ロボを造る時の優秀な人材が増えました』

『【愉快】こうして、オーナーの覇道が、また一歩進むのデス』


 おい、おまいら。


 ******


 馬車の用意が出来たんで早速出発。

 本当なら彼等がちゃんと街に入れたのを確認してからの方が良いんだろうが、街の役人と顔合わせて難癖付けられるのも面倒なんで、そこは勘弁してもらう。


 元々リティシア嬢からの依頼ってかお願いなんだから、彼女に間に入って貰うってのも有りなんだろうが、流石に国の方針と違える様な事の矢面に立たせるのもどうかと思うんで、だったら、関係のない第三者が個人的正義感でやったって方が波風は立ちにくいだろう。特に本人達が既にいないって状況ならなおさらな。


 自分、聖王国が難民を誘導してるなんて、知らんかったとですよ。って事でなぁ。


 そもそもが難民で、聖王国の住民ですらないんじゃが、そんな正論で納得できるかはまた別の話。

 向こうからしたら、有益な手駒を掻っ攫われた様な気分に成るだろうし。

 無用ないざこざは避けて通るが吉って話なんだわ。


 馬車が出来上がったら出発するよって事は事前に通達済みなんで、移民者の旅支度はすっかり済んでいる。それを見送る側もだ。


 同じ村の出身なのだろう。抱き合って涙を流す人達もチラホラ。聖王国はこれから侵略侵攻を仕掛けるだろうし、例え本国が戦火に巻き込まれなくても、必然、国の出入りは厳しくなる。そうなれば、これが今生の別れになる確率も高いからな。


 ああ、そう言う事か。リーダーは勿論、義勇軍に入るつもりで居るんだろうが、下手に聖王国(ここ)に残ってると、徴兵される危険があるもんな。だから移住者は若い夫婦と、子供のいる家族連れがメインなんだな。新天地に未来を託すって意味で。


 つらつらと別れの言葉を重ねる人達を眺めてはいるが、どうにもその言葉が尽きる事はなさそうな感じ。

 気持ちは分かるんだが、何時までもこうしている訳にもいかないんよ。

 無粋かも知れんが「行くよ」と声を掛ける。


「皆を頼んだぞ」

「おう」


 難民リーダーに声を掛けられ、俺はそう応えた。

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