表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/1175

立場があるからしょうがない

「うわ! 美味しいよ!! お母さん!!」

「ん! んん!! もぐもぐズズー!!」

「有り難いねぇこんな温かいものを……」

「すげぇ肉が入ってる!!」


 芋煮だ芋煮。大鍋で作ると、何でこんなに美味しくなるんじゃろか?

 難民迎えに行くってんで、キャンピングカーに積んどいた大鍋で、主に根野菜と肉とを煮込んで味付け。

 その時に乾燥させた海藻で出汁も取ってるんで、味に深みも出てる。

 出汁を取ってる時、リティシア嬢、興味津々って感じで覗き込んでた。自分で送ってる物だけど、実際に使ってる所は見た事が無かったっぽい。

 まぁ、俺も色々と使えるとしか言って無かったし、この昆布ぽいもの以外は、大半が石鹸の材料になってるからなぁ。

 それでも、ウッカリ「海藻も美容に良いらしいんだよな」とか漏らしたら、一部は水で戻して食べる様に成ったわ。


 主に俺の周辺だけで。

 これについては、第二夫人(ママン)も御付きのジョアンナも、周囲には口を閉ざしてるらしい。

 そもそも海藻って、かなり限定的な地域でしか食べないっぽいからなぁ。

 それも大概が小麦粉といて、それの中に入れて揚げる感じ。あれはあれで美味しいんだが、サラダ風はまず見ない。俺が知らんだけかもしれんが。


 それはさて置き、炊き出しを行ったら、難民の皆さんが文字通り食い付いた。

 中には、『そんな怪しいヤツラから~』とかって喚いてる輩も居たが、あれが工作員かな? まぁ、シカトしとくけど。

 どんだけ大きな声のヤツが居た所で、大半の人達は本能には逆らえませんて。だって人間だもの。


「何を考えてる?」


 下手すりゃ涙を流しながら食べてる難民の人達とそれに無表情で給仕をするイブ達を眺めていると、難民のリーダーをやっている男が俺に近付いて来た。ってか、俺のパーティ基本的に感情が表に出るヤツ皆無なんな。ここでの対比で初めて気が付いたわ。


 随分と剣呑な雰囲気を出しながらコッチヘ来た男に、ミカとバラキがすくっと立ち上がったんで、首筋を撫でて落ち着かせてやる。

 うん? この質問は別に今俺が『俺のパーティー無表情っ娘ばっかだな』って考えてた事についてでは無いよなぁ流石に。


「下心はあるさね」


 俺の言葉に男が舌打ちをする。忌々しげな表情から察するに『やっぱりか』って所だろうな。


「俺の領地に来てくれれば嬉しいなと」

「で、鉱山奴隷にするって所か?」

「それは専門職が居るからなぁ。第一、奴隷とか要らん」


 男が眉根を寄せる。まぁ、俺が何考えてるか分からないって所だろうな。ただ、この場合は深読みのし過ぎでしかないんじゃがね。

 俺の思惑なんて、普通の住人増えねぇかなぁって事だけだし。ファーマーが足りんのよファーマーが!! 社会の基盤たる一次産業従事者が!!


 家の領地、二次三次は居ても一次産業従事者がおらへんのよ。まぁ、理由は大体分かってるんじゃがね。


「領主に頼まれたか? ご苦労な事だ」


 俺の事を領主だとは思わんのな……まぁ、思わんか。10才にも満たない子供にしか見えんだろうし。実際5才だし。

 リティシア嬢から大まかな話は聞いてるんだろうが、それでも半信半疑って所なんだろうな。

 そんな状態で、さらによその土地へってのはリスクしか感じんだろうさね。


 俺としても、納得して無い状態で旅を続けるって事には負担しかないとは思うし、無理強いするってつもりもない。


「いや、ただの希望だ。なったら良いな、程度の。実際、何が最上かなんて分からんだろう? 聖王国に骨をうずめるのが良いのかもしれないし、元居た場所を奪還できる方が良いのかもしれない」


 俺の言葉に難民のリーダーが反応する。この男的には元居た場所を取り戻したいんだろう。確かに、住み慣れた土地を取り戻せればそれが一番なんだろうが、それが難しいって事はこの男も良く分かってる筈だ。

 焼け出されたのか、単に避難したのかは知らんが、こんな遠い場所にまで避難しなけりゃいけないって時点で、村か町かが無事ってのは甘い考えだからな。


 それにこの状態で“取り戻す”って事は、“戦って”って言う事と1セットに成る。確かに聖王国の力に縋れれば取り戻せる可能性はある。だが、あくまで可能性だ。

 果たして戦って勝ったとして、彼等の故郷の土地が聖王国に組み込まれるかは分からない。もしかすれば、奪還された場所に含まれない可能性も、例え聖王国が全てを併呑したとしても、功績の高い人間に譲渡され、彼等がその土地には戻れない可能性だってある。


 そうなれば、結局は“新しい土地”で暮らす事を余儀なくされる訳だ。

 その時に故郷に近い所で、かつての暮らしに思いを馳せながら暮らして行くか、腹をくくって新しい土地で心機一転して暮らすのか。

 その選択は、結局本人の物でしかない。


 もっとも、全てが上手く行って、元通りの生活に戻れる可能性だって、もちろんあるけどさ。


「だから、俺が無理強いする事は無い。ただな、全く新しい土地でやり直したいって希望者が居れば教えてもらいたいとは思う。その時は俺が責任を持って連れて行く」

「お前がか?」


 そう言って俺の目を見た男は、しかし、その見下した様な笑みを止めると眉を顰め、舌打ちを一つして戻って行った。


 あの男。難民のリーダーだって分かってるし揺れてるんだろうな。このまま聖王国に行っても良いのか、自分の願望に他人を巻き込んで良いのか。分からない。だから揺れる。


 まぁ兎も角、俺が本気だって分かってくれてれば良いんだがな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ