常に傍らにいる危機
悩んだ時こそシンプルに考えなくちゃいけんかったわ。
ここが何処で、周囲はどんな状況なのか!!
「ファティマアアァァァ!!」
『【了解】サー! イエス! サー!!』
俺の掛け声で、ファティマが巨木を俺に向かって切り倒す。
それを鷲掴みにした俺は、その巨木で火炎巨人を叩き潰した。
確かに木ってのは燃える物だが、生木ってのは実は燃え辛い。内部にたっぷりと水分が詰まってるおかげでな。しかも今はジャンヌの魔法でビッショビショだ。早々燃えはしない。
その上でこの太さだ、燃えたとしたってカトゥ―ンみたいに一瞬で燃え尽きるってこたぁないし、何より重い。
マグマが飛び散るが、しかしそれが再び集まるって事はない。ニーズヘッグん時とは違って、破片すら生きてるって訳じゃねぇからだな。
そして、その飛び散ったマグマが、雨によって急速に冷やされる。本体に繋がっていない部分には、機能は適応されないらしい。
成程成程、電磁力場とやらで熱に対しての耐性が有るってのは分かった。なにせマグマの中にあっても平気らしいしな、なぁ、なら、単純質量には、どう対抗してくれる?
仲間が叩き潰された様子を見て、火炎巨人が後ずさる。つまり、それが答えってこった。
厄介ではあるが、脅威ではない。対応策さえ発見できれば、他の魔物と変わりはない。もっとも、コイツはアーティファクトであって魔物じゃないんだろうが。
1体を叩き潰しただけではあるが、俺の手に持った巨木は焼け焦げ、くすぶり始めている。だが、問題ない。コイツ等を叩き潰す為の木は、いくらでもあるからな。
さぁ、モグラたたきの時間だ!!
******
目に付いた火炎巨人を全て叩き潰した。ついでに出土したアーティファクトも全部潰す事に成ったが後悔はない。
流体を制御できる技術に関しちゃ興味は有ったが、その為に仲間を危険にさらす訳にゃいかんしな。
取り敢えず、壊れたアーティファクトは回収して置く。
「まだ、熱いだろうから冷えてから回収な」
『【了解】分かりました。マスター』
『【了承】オッケーデェス! オーナー!!』
「ん!」
確か、火炎巨人は18体いた筈だ。なら、その残骸も18個ある筈で……16、17……足りない? ぶっ壊しながら数を数えていた訳じゃない。目に付いた奴を片っ端から叩き潰してただけだからな。
1体分足りないって事は、上手く逃げられたって事か? しくじっちまったな。
その時、ふと熱を感じたのは偶然か必然か。
不意に振り返った先、アーティファクトの残骸の熱さを確認してたイブの、その後ろの土が盛り上がる様に動いたのが目の端に映る。
コイツ等は何をエネルギーにしてる? そもそも最初にイブやゲーグレイッツァがコイツ等にされた事は何だ?
コイツ等は、魔力とマグマの熱をエネルギー元にして、身体を維持している様なアーティファクトだ。
そんな奴らが、ダメージを負った時に、身体を維持する為にする事は何だ?
「イブ!!」
「!!」
振り返ったイブの表情が驚愕に染まる。ドロドロと形状を固定できないまでに弱体化している火炎巨人は、しかし、次の瞬間、形を取り戻す。
と、同時にイブが急速に魔力を奪われ、気を失って倒れた。
テメェ!!!!
気絶し動けなくなったイブに、この上、さらに魔力を取り込みたいのか、手を伸ばす火炎巨人に、俺は……
「やら、せるかよおおおぉぉぉぉ!!!!」
ドンッッッ!!!! と言う音を置き去りに、地面が爆ぜる。
次の瞬間には、俺の体は火炎巨人にブチ当たり、突き抜ける。
『【驚愕】マスター!!!!』
『【悲痛】オーナー!!!!』
高熱の為に目が濁ったのか、視界が白に染まる。ああ、頭に血が昇ってた! やらかした!! 何で俺は生身で特攻なんざした!?
焼け焦げる匂いがする。全身の神経が剥き出しに成ったかの様に激痛が走り、しかし、次の瞬間には、まるでそれらが全てが悪夢だったかの様に遠く感じる。
“寒い”
体中が震える様な悪寒と、痺れが切れた様な耐え難い麻痺感。
焦点が合わないままに白に埋め尽くされた視界と強張ったままで動かない体。思考が、鈍って行く。
ドウナッタ? いぶハ。ブジカ?
おれハ……




