反省してやらかした
赤い閃光が大森林内を走る。それは細く、長く、木々を貫いてなお伸びていった。
「……大気中だと威力半減するって話だったと思ったんだがなぁ」
「って、今度は何やってんですか!! 師匠!!」
大森林内で活動するにあたって、鍛え直しをしてたオスローが叫ぶ。
「え? 新必殺技?」
キックやパンチ程派手じゃないが、思ってたよりも飛距離と威力がある様だわ。
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レーザー光線の原理と言うのは、方向を整え収束させた光をエネルギーを加えて増幅させ打ち出すって物だ。
ほら、俺って遠距離攻撃手段がないわけじゃん? 前に聖王国の遺跡でえらく苦戦したんで、何か方法がないかなぁとか思ってた訳よ。
あの時と同じ様に瓦礫蹴っ飛ばすって訳にはいかねぇしさ。早々、都合よく瓦礫が落ちてる訳ないんだし。
で、俺のスキル的な物の中で何とか出来ねぇかね? っとか思ってたんだが、魔力外装で俺の周囲巡らせてるプラーナ。これって光であり物質な訳じゃん? でないと魔力装甲にまで凝縮できない訳だし。
で、その時俺に天啓が下ったんよ。
光であり物質でもある……光子……
そうだ! 光〇力ビームだ!! 目からは放てないが!!
「って訳でやってみたら出来ました。後悔はしてない」
多分、光〇力では無いが。
「やってみたらって、だから思い付きでそんな威力出されたら、色々な人の立場がないんですって!! 師匠!!」
思い付きじゃないよ? 多脚多砲塔戦車のレーザー参考にしたし。腕飛ばすよりは常識的だし。
あー、でもファンタジーっぽくは無いか? 今更か? タイトルつけるなら『異世界に転生したのに俺の周囲だけSFなんだが!?』って感じ? いや、充分ファンタジー要素もあるか。そうなるとタイトル詐欺になるな。まぁ、小説だったらって話だけど。そもそも俺、読み専だったからタイトルとか付ける事なんざねぇし。
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街道を外れたとこで何かが暴れてるって通報が有った。街道の警備は警戒してるコボルト達と狼達に任せているんだが、そのコボルト達が『自分等では力不足です! お願いしますよ首領!!』って言うんでその確認にイブやミカ達と一緒に来た訳なんだが。誰が首領か。
ゲーグレイッツァの案内で、現場近くにまで行ったら、地鳴りしてるし木が薙ぎ倒されてる音してるしで。うん。コボルトが助けを求める訳だよ。イブがタクトをぎゅっと握り、ミカやバラキが臨戦態勢になる。
で、そのまま、地響きのする方へと歩みを進めた訳なんだが……『幽霊の正体見たり枯れ尾花』っちゅうか何ちゅうか、またサラマンダーだったわ。十数匹がドッタンバッタンやってた訳よ。妖虫種を食みながら。
いや、こっちは正体もそれなりの危険度が有った訳なんだけんどもよ。ラミアーなんざ早々に【瞬間移動】で逃げっちまうし。
こっちから手を出さなければそれ程しない内に消える筈の精霊を見つけ、思わずイブ達と顔を見合わせちまったわ。
と言う訳で、サラマンダーの匂いが苦手なミカとバラキを連れて離れて、ドッタンバッタンしてるのは確認できるって程度に場所を離れる。だって倒すのNGなんじゃもん。放置しとくしかなかべや。
で、イブと一緒に犬達をもふる事30分ほど。音も止んだんで、サラマンダーが消失してる事を確認した俺達が、さて帰ろうかって時に、ここまで案内してくれてたゲーグレイッツァがキョロキョロし始めた。
「何か、変な感じだぜ、アニキ」
ゲーグレイッツァの言葉に、俺は思わず眉根を寄せる。いや、残業やだなぁとか思った訳じゃないよ?
俺のその様子を見たイブが首をかしげるが「何でも無い」と手を振っておく。
いやさ、そう言えばここって、前にもサラマンダーが暴れてた場所なんよな。それに気が付いて、多分ここには何かあるだろうとは考えてたんで『やっぱりか』って思ったってのもあるが、それに加えて、ゲーグレイッツァの“何か変な感じ”と言う随分と曖昧な言葉に、嫌な予感がビンビンして来たんよ。
普通の鉱床ならこんな言い方はしないし、遺跡が有ると言うなら、少なくともゲーグレイッツァなら、ソレと分かるだろうからな。
「どんな感じなんだ?」
「うーん。あれだ、遺跡とかに近いんだろうが、あれ程大規模じゃなくて、でも、何と言うか広範囲に反応はあるっだけどさ、ただ、すっげぇ種類の金属とかなんか色々な反応が有るって言うか……」
……って事はあれかね。遺跡そのものではなく、古代文明のオーパーツ的な何かが埋まってるって事かね? 古代文明の研究所だったっぽい遺跡が近くに有る訳だし、何某かのアーティファクトが埋まってる可能性は零じゃないが……
掘り出すか? また多脚多砲塔戦車ないと良いんだがなぁ。まぁ、今回はパーティーフルメンバーいるし、相手が多脚多砲塔戦車だったとしても圧勝できるとは思うが。
そもそも、どうもこの辺、【魔力渦】とやらが溜まり易いっぽいんじゃないかなぁ。珍しいとかってサラマンダー、見るの二回目なんよ? それって、何か理由が有るって、絶対。
もっとも、街道沿いにそんな危険スポット残しとく訳にゃぁいかんから、解消するけどもよ。




