なんだかなぁって話
目の前で、ドワーフ連中によって極限まで効率化された建築が行われている。
規格化された建造物は、柱を組み込んだパネル状のブロックに迄突き詰められていた。プラモデルだった物がレ〇ブロックに成ってんだが?
今日の為に雇われた冒険者が、ブロックパネルとブロックパネルの間に接着剤よろしく接続用の樹脂液を塗りたくると、それを隙間なく並べて床を造り、同じ様にして壁用のパネルを立てて接続して行く。
確か、あの接着用樹脂液はヴィヴィアンの新発明だったか?
「先日エクスシーア商会の新製品として職人向けに売り出されました」
ルールールーがそう言う。え? これもエクスシーア商会の商品なんだ。へぇ。
あっと言う間に一階が建ち上がり、冒険者連中が休息を挟む。その間に職人が通し柱で補強。
確かに接着剤つけてブロックパネルはめ込むだけなら技術は要らんから冒険者だけでも充分やね。
ただ、継ぎ目とかで雨が染み込んだりせんのかね? これ、防水性とかどうなってんじゃろ? とか思ってたが、そこは以前キャルが発明してた樹脂布が活躍してた。
ああ、コレ貼って防水してんのか。つまりウチの商品俺が買って使用してるわけね。最終的には家買った人間が金払うと言っても、コレ何てマッチポンプ?
トントン拍子に組み立てられて行く建物を眺める俺達の後ろに、ドヤ顔で胸を張るキャルとヴィヴィアン。
コイツ等がここにいる理由は、別に自分達の発明した商品の使われ方を見るのが目的って訳じゃない。
今日、ここに立てている建物は、何を隠そうヴィヴィアンの店なんよ。
うん。ヴィヴィアンも公都から家の領に引っ越して来た。理由は言わずもがな。こっちの方が魔法薬の原料になる植物が豊富だから。植物オタクのヴィヴィアンが来ない理由なんて端から無かったんだわ。
二階部分の部品をポイポイ投げては受けとり接続。その姿、もはや大道芸。いや、身体強化の魔法とか有るからできる芸当ではあるが、冒険者の膂力、ッパねぇっすわ。
「すげえな。人間、あんな真似もできるんな」
うん、分かってるから『お前が言うな』的視線で見ないでくださいルールールーさん。
そうやって冒険者が組み立てやってる端から、パネル同士を鎹とボルトナットで補強して行く職人達。ボルトナットは俺のアイデアってか前世の記憶からの再現。規格化されたこれらも建築速度の加速化に一役買ってる。
いや、凄いやねドワーフ。成体産業革命と言うか、工業化しなくてもこれだけ正確な規格化できるとかさ。
ここでやってる規格化がどう言うネットワークで伝わってるのか、ドワーフが次々に集まって来ていて、街の一区画は完全にドワーフ村に成ってんのよ。
まぁ、コボルトが鉱床見つけてはガブリと一緒に掘りに行ってるから、それがドワーフが集まる一因ではあるんだろうがね。
ああいう坑道掘りもドワーフの得意とする物の一つではあるが、それに関しては流石にコボルト達の方に一日の長がある様で、坑道掘りに好き好んで従事するドワーフは少な目。自分達で掘らなくても良質な鉱石が取れるってんで、「むしろもっと鍛冶ろうぜ!」ってな感じで盛り上がってる……らしい。
何か、特殊技術持ってる奴とか、力自慢の奴とか……一般人が集まらねぇなぁ。いや、来てくれた連中には感謝しかねぇんだけんどもよ。
「とーる、落ち込んでる?」
白い腕が後ろからにゅっと生えて、俺を抱きしめる。前までは頭全体を包み込む様だったのに、あれから成長をした俺には、ちょうど肩を抱きすくめる感じに成っている。5、6才位だった体形が8、9才くらいに育ってるからな。プラーナのおかげじゃろか? ただ、毎晩の様に成長痛がなぁ……寝ててもミシミシ言っててうるさいし。
『【驚愕】個体名【ラミアー】!!』
「ん? 来たんだな」
てか、また気配がなかったな。ってこたぁ態々【瞬間移動】で来たんか。屋敷出る時は何か気怠そうにソファーに寝転んでたんで放置してたんだが。
ファティマのモップを躱して後ろにラミアーが逃げる。
「ラミちゃん!!」
「きゃるー!!」
ハイタッチ。仲良いなおまいら。
「ラミアーさん?」
「ゔぃゔぃゔぃ?」
名前を呼んだまま、お互いにピクリとも動かない。何だこの緊張感。てか、コイツ等はコイツ等で屋敷で会ってから変わらんな。
ヴィヴィアン、実は結構前から俺ん所転がり込んでたんよ。まぁ、さっきも言ったが、こっちに来ない理由の方がないからな。
ただ、態々、俺の屋敷に来んでも、宿屋に泊っとけって話なんだが、「ルールールーさんの親友なんですから、追い出すなんてひどいですぅ」とかって謎理論で居座ってたんだがね。ルールールー首激しく横に振ってたんだが?
まぁ、相手にするのも面倒だったし、部屋も空いてたから放置してたんだが、この間ティネッツエちゃん所遊びに行ってて久しぶりに帰って来たラミアーと対面してから、こんな感じに。いや、ホント何が有ったおまいら。
まぁ、多分だが、ラミアー、こう見えても吸血鬼って魔物だし、薬効マニアでもあるヴィヴィアンからしたら、ぶっちゃけ素材な訳だ。
で、ラミアーの方もヴィヴィアンに、昔酷い目にあわされた科学者ってか錬金術師に似た臭いを感じて警戒が先に立ったんだろう。
けど、お互い俺の知り合いって事で手が出せず、こうなってるんじゃないかと思うんじゃが、どうだろうね?
俺としちゃ、騒ぎを起こさなけりゃ構わんと思ってるんだが……
『【憤慨】どっちも元々居た巣に帰れば良いんです』
巣って、辛らつだなファティマ。




