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魔法を夢見るお年頃

 ウリに背中を追わせて、オスローを強制的に走らせる。


「限界だと思った所からが本番だ!! 疲れ切った所から、どれだけ頑張れるかで地力が決まるぞ!! ほら、走った走った!!」

「……ふひゃう」


 そうは言っても、まだガリガリだ。精々、後10分程度走ったら休ませるか。

 オスローを追い越しながら声を掛けつつも、俺はそう思った。

 俺自身も今は身体能(フィジカルエン)力向上(ハンスメント)を切った状態だが、伊達に生まれてからずっと動き回っていた訳じゃない。

 体力の落ち切った5歳児に負ける程、軟弱な生き方はしていないのだ。


 平原で走り込みながら、石や背の高い草などを避けつつ走り、身体を動かす鍛錬をする。最低でも身体能力向上無しで狩りが出来る状態にしたいからな。

 イブとキャルは教会菜園を任せている。肉も大事だが野菜も大事だ。俺達みたいな子供にとっては特に。

 俺自身も、そろそろ離乳食に移らなければならないだろう。ミカもがんばってオッパイを出してくれているが、俺以外の兄妹(いぬたち)は、既に固形物を食べてるからな。さすがに限界だろう。


 あ、オスローが倒れて動かなくなった。10分持たなかったか。

 ウリ、自慢気に踏み付けるのはやめてやれ。オスローが泣いてるから。


 ******


 オスローを休ませるついでに、俺はアドアップとブーストの訓練をする事にした。

 身体能力向上を起動し、体内の魔力を循環させつつ、全身の細胞に送り込む。

 あれ? 前に同じ事をしてた時に何か考えてたような?


「あ!!」


 声を上げた俺に、側で寝転んでいたバラキが「何? 何?」と顔を上げる。

 忘れてたわ、魔法!! 魔法の練習だ!!

 一回失敗した後、イブの機嫌をとったり、兄妹を拾ったりしてたから、すっかり意識の外に成ってた。

 あの時は身体能力向上のオフができなかったが、今はオフれる。

 つまり、あの時とは違うのだよ! あの時とは!!


 うぬぅ、だがこのトール、日常の中で魔法を忘れていた!!


「では、早速……」

「クゥン……」

「え? 何?」


 魔法の練習をするため、発動させてた身体能力向上を切ると、何かミカが俺の服の端を咥えて上目遣いで見てきた。

 成る程、サポートしてくれる相手が居ないところで魔法を発動する事に不安があるのか。

 確かに、イブが初めて魔法を使った時の事もあるしな。


 あの時は大変だった。だが、あれは、規格外のイブの魔力量が有っての事じゃ無いのか? 確かに俺も生まれながらに色々と常識外れではあるが、イブ程の魔法の才能があるとも思えんのだが。

 そんな事を考えていると、それが顔に出ていたのか、ミカがのし掛かって来た。ちょ、ま、今は身体能力向上を切ってるからぁ!!


 ミカがそんな事をしてくれば、当然バラキものし掛かって来る。


「ちょ、マジでどけって! 潰れるから!! さすがに二頭とか潰れてまうっちゅうねん!!」


 ウリ!! 「面白そう」みたいな顔でこっち来んなや!! マジでやめろ!! 三頭とか無理やっちゅうの!!!


「いい加減に、しとけやコラァ!!」


 俺は身体能力向上を発動し、上に乗っかって来ていたミカ達を吹き飛ばす。それを読んで居たかの様に、シュタッと着地した彼女等は、「終わり? もう終わり?」みたいな表情で首を傾げた。

 ほほう? (あお)ってやがんのか?


「良い度胸だ!! やってやんよ!!」


 俺が猛ダッシュすると、ミカ達は嬉しそうに散会し、平原を縦横無尽に走り始め、俺は、それを必死で追いかけ回す。

 傍から見ると「うふふ、こっちよぉ~」「ははは、待て待てぇ~」みたいな音声が聞こえて来るような光景だろうが、こっちは本気の追いかけっこだ。誰がこの群れのボスか叩き込んでやらぁ!!


 ちなみにこの光景をぶっ倒れながら見ていたオスローは、「っぱネェっす」と思っていたそうだ。

 ……あれ? お前って、そんな三下キャラだったっけ?


 ******


「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 神は(エロイム・)我を(ハショ・)見放した(エティー)


 やっぱり使えんかった! 使えんかった! 使えんかった! 使えんかったぁ!!


 俺が魔法を使うって事に対し、渋っていたイブを宥めて誉めて頼み込んでまで、フォローをお願いしたにもかかわらず、魔法はピクリとも発動しいへんかったわ!!

 色々とややこしいってのは理解したから、段階を踏む事にしたんよ。困難の分散ってやつだな。

 とりあえず魔力庫から魔力を取り出す所までは何とかなった。そもそも、その辺りはブーストだろうとアドアップだろうと変わりは無いからな!!

 だが、魔法を使おうと、魔力庫につぎ込んでいた魔力を取り出してもみても全く魔法へと変換されねぇ。


 弩畜生!!


 そんな俺に、イブもオロオロ。もしかして、この結果がわかっていたけど、俺がどうしてもと言ったから、渋々だったのか?


 あれ、可笑しいな、瞳からなぜか熱い物が……


 身体能力向上のせいで魔法が使えないと言う俺の想像は明後日の方向だったって事なのか?

 もしかして最初から前提が間違ってたのか? 俺の体の中を巡ってる()()は、魔力なんかじゃ無かったって事か?


 確かにイブの魔力と、俺のソレとは“ちょっと違うなぁ”とか思ってったさ。だけど、そんなもん、個体差程度の物だって思うじゃん。

 実際、屋台のおっちゃんとかケモ耳のおばちゃんとかもちょっとづつ違ってたしさ。


 まぁ、参照できる個体数が少なすぎて結論は出ない。

 ここは、俺が魔法を使えなかったって事実だけを認めて収めてやろう。どちくしょう!!


 俺が魔法をここまで求めているのには訳がある。

 いや、せっかく魔法なんてファンタジー現象のある世界に生まれ変わったんだから、使ってみたいって俺の野望が無いって訳じゃない事は認めるけど、それ以上に割とひっ迫した理由がある。


 それは、俺達の攻撃時の火力の低さだ。

 確かに、アドアップを覚えたお陰で多少の攻撃能力の低さの改善は見られたが、それでも、特にイブと比較した場合に、俺は火力が低い。


 そもそも、イブを狩りや戦闘の場に引っ張り出す気のない俺としては、彼女を頼りにしない方向で戦闘力を上げる必要がある。


 一応、前世の記憶を頼りに格闘術モドキも研究してるが、あれは、対人戦闘がメインになるから、魔物とか出てきた場合、参照は出来てもそのものずばりが使える訳じゃない。


 それでも、どういった場合にどんな風に考えるとか、格闘技の思考理論自体はひどく役に立つ。自分がこうやって格闘術モドキを使い始めると、特にそれを感じる。

 ちょっとしたシュチュエーションで、「あ、これって、そう言う意味があったんだな」ってな。


 それはともかく、魔法が使えないとなれば、それに代わる攻撃手段を考えなければならない。


 幸いと言って良いかは判断に困るが、転生してからは俺は身体能力向上なんて不思議技に開眼してるし、それを使う際に対して、根源と成って居る物……俺は魔力だと思っていたのだが、こうなって来ると、別の物の可能性もあるが、まぁ、当面は魔力としておこう。

 その、魔力の扱いにも長けて来ている自負はある。


 全身の細胞に行き渡らせる事で、全身の能力を引き上げる身体能(フィジカル)力向上(エンハンスメント)

 その状態で、さらに細胞に魔力をつぎ込む事で、特に身体能力をアップさせるアドアップ。

 それとは別に、全身を巡る魔力を加させる事で能力を加速度的に上げるブースト。


 ……見事に身体能力の引き上げだけだな、俺。


 ともかく、今以上に自身の能力について研究しないとなぁ。

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