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第一陣の到着

 あれから約二週間。やってきましたともさコボルトズ、in大森林の街。


そう言や、街の名前も考えんとか。もう、ディープフォレストとかで良いんじゃないかね? ……ダメか、そうか、残念だ。


 俺が街道作りに精を出してた間にもドワーフ連中、家作りに励んでくれてたみたいで、ルールールーの指揮の元、街中には日干し煉瓦のお家の群れが一画に。具体的には焼窯とか炉の建っている辺りに。


 ルールールーは俺の監視も兼ねてる筈だから、本来はあんま離れてるのは拙いんだろうけど、指揮できるタイプの人間がおらんので公都で色々買い込んだ後はジャンヌと一緒に即リターンして貰った。街道の方は俺とイブ、ファティマとオファニム、バラキとケルブが居ればむしろ過剰戦力。あ、後ラミアーも居たな。コイツは手伝ったり手伝わなかったり、時折消えたりしてたが。


 ルールールーとジャンヌも随分と不満げだったが、だって人材がいねぇんだからしょうがねえやん。教会(きょてん)の子供達の中にもオスローやマァナ、マトスンみたいに育って来てる人員は居るんだが、結構あいつ等特化型だから、図面見て指揮してみたいな事は苦手なんだよな。


 強いて言えばオスローなんだが、アイツもドワーフ連中相手だと貫目が足りんと言うか、あんまり強く出れないみたいだし。

 まぁ、それは冒険者として係わって来たからこそ、武器防具を任せている相手に文句を言えないってのもあると思う。


 何にせよ、経験も足らんのよな。まぁ、まだ若すぎるって事だ。あ、俺も子供だった。中身オッサンだけどな!!


 コボルト達は、まだ何もない広大な敷地に目を瞠ってる。一応の建物は建っているものの、飾り気のない、住めれば良いや的な煉瓦の家だけだからな。

 ドワーフ曰く、本格的な家を建てる時は、件の材木も使って立派なものを造るんだそうな。

 いまの建物の煉瓦も崩して再使用するらしい。その為に、今は()()()簡素にしてあるんだとか……なんか、その辺、エラく強調されたわ。


 もしかしてあれか? 俺がドワーフは武骨なものしか作らんとか思い込んでた事を知られたのか?


 まあ、構わんが。


「ここが、我等が約束の地(カナン)!!」


 何処の伝説だそこは!? ここには乳も蜜も流れてないんじゃが!?


「すみません、あまりの感動につい、一族に伝わる伝承を思い出してしまって……」


 相変わらず、前世と微妙に名称とかがリンクしてやがんな!!

 どうでも良いが、おまいらコボルトであってカナンの民じゃねえからな?

 ()()()()をした偉丈夫、グレッソチューンが、感慨深そうに目を細める。

 まあ、今までコボルト達は、権力者に見付からない様に隠れ住まなきゃならんかったからなぁ。


「ケッ!! 年寄りは辛気くさくて敵わねぇよなぁ!! ここが終点? 馬鹿言ってんじゃねぇよオヤジ!! こっからアニキの覇道が始まんじゃねぇか!! なぁ、アニキ!!」

「始まんねぇよ!!??」


 グレッソチューンと同じ褐色肌を晒して、ゲーグレイッツァがアホなことを言いやがる。何だ覇道って!!


 俺の望むのは心穏やかで退屈過ぎない日常だぞ!? 前世みたいに、おそらくは過労で倒れたりしない様に楽しく生きるんや!!

 覇道なんぞ、言葉の響きからしてその正反対やん!! こんな所に居られるか!! ワシは帰らせて貰う!! って、帰る場所、今日はここなんじゃがな!!


「と、トールさまが、そうのぞむのなら、が、がんばります!」

「何を!?」


 ほら、生真面目なティネッツエちゃんが本気にしちゃっただろ!? 変なこと言うなやゲーグレイッツァ!! 鼻息を荒くして両手を握るティネッツエちゃん。真っ白な肌を真っ赤に染めている。いやいや、君はなんでそんなに乗り気なのかな?


「やっぱり、こんなやつにまかせちゃ……」


 ああ、居たんだグーテンシュバッソ。だからそれは、おまいが敬愛してやまないゲーグレイッツァが言ってるだけだからな? まるで、俺は全ての元凶みたいな目で睨むなや。コイツも一応能力の制御はできる様に成ったんな。薄い褐色の肌を晒している。


 まぁ、今日ここにこれたコボルトは、全員、能力の制御は必須って事になってるから当たり前か。

 見れば、コボルト達は皆が皆、()()()()肌を見せている。


 青い肌ってのは、コボルトの唯一無二の特徴ではあったからな。それが分からなくなっただけでも随分と違うだろう。

 第二班からは、そう言った能力を制御できた連中だけじゃなくなる。そう言った者達は、ファンデーションで肌の色を誤魔化して行くって方針なのは、今までと変わらない。

 これ、製造している側だから出来る荒業ではあるよな。態々購入して使っていらっしゃるお貴族様のご婦人方が知ったら、噴飯ものの所業だと思うわ。


 まぁ、確かに見つかった時のリスクは大きいが、それでも強行したのは、コボルト達の中にも、ある種の閉塞感が有ったからだろう。当然だが、俺は強要していないし、強要するべきの物じゃないとも思ってる。つまりは自主的なもので、それだけ精神的に追い詰められていたって事でもあるだろう。


 確かに移住(これ)はコボルトが自分達で決めた事だ。だからと言って守らないって訳じゃない。むしろ彼等が前を向くと、未来を見据えると決めて行動したんだ。俺はそれを尊重するし、積極的に守りたいとも思う。


 コボルト達がどう思ってるかは分からないけど、俺は彼等をもう既に家族の様な物だと思ってるんだからな。

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