特にうれしくも無い評価
サラマンダーの大群と遭遇した以外は、特に問題なく大森林の外まで向かう事が出来た。まぁ、概ね一直線で行く事が出来そうさね。
問題があるとすれば、伐採した後の木材がまた増えるなぁって事位か。
それに関しちゃ、薪としても使えるから問題ないっちゃ、問題無いんだがね。あ、後でドワーフに炭焼き小屋作って貰おう。うん。
確か炭って、木材を密閉して蒸し焼きにすれば良いんだったよね? まぁ、その辺も試行錯誤するか。
それはそれとして、あのサラマンダーは、何でサラマンダーだったんじゃろか?
ファティマ、澱んで溜まった魔力の属性と、それに釣られて出て来る精霊の属性ってイコールで良いのか?
『【仮定】そう……だと言われています』
あ、やっぱ、その辺はまだ解明されてなかった感じ? じゃ、逆にあの辺に火属性の魔力って有ったのか?
俺がそう言うと、ファティマがジャンヌの方をチラリと見た。
『【困惑】う~ん。もう消費しちゃってたのかもしれないデス、なのでそれ程多くは感じられなかったデス』
そこなんだよなぁ。俺が引っ掛かってんのって。森の中で、火属性の魔力ってそんなに溜まるもんなんじゃろか?
溜まるとしたら、そこには“火”にまつわる何かが有って然るべきじゃないんかね?
『【肯定】確かにその通りですね』
『【追従】デス』
とは言え、それを追求してもしょうがないっちゃしょうがないんで、“そう言う事が有った”って事を覚えておくしかないんだがな。
そうすると、そこはあえて手を付けずに迂回する方向で考えた方が良いかね?
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究明できるか分からん謎にはあえて手は付けずに、その辺は暇ができた時に冒険する事にしたんよ。あくまで後回し。時間が有ったらもちろん挑戦するよ。こう言った“謎”の探求も冒険者の醍醐味だと思うの。あくまで“謎”な? “ミステリー”ではなく。殺人事件は探偵に任せるさね。この世界に居るかは知らんが。
なので今は、迂回しての街道作りに勤しむ。コボルト達や他移住者が来られんと困るの俺だし。
「公爵の許可は得て来たぞ? 我が君よ」
「ん、お疲れさん。何かあったか? エクスシーア」
そんな感じで木々を薙ぎ払ってる所にエクスシーアが来た。まぁ、俺の代理人として挨拶にな、行って貰ってたんだわ公爵ん所。
来て早々、何か苦笑気味だな、元ガーディアン。いやまぁ、このタイミングだ、公爵と何かあったんだろうがよ。
「いやはや、何と言うか、貴族らしい貴族と言った御仁だったよ、我が君よ」
開口一番それかよ。俺に言われても困るぞ?
「当方とは一切関係ない他人なんで、苦情は受け付けねぇからな」
家の為に、子供切り捨てられるくらいには貴族だろうさ。
「そうだな、我が君とは色々と違っていたよ」
どう言う意味だ?
「慇懃、尊大、傅かれる事に慣れていて、忖度はして貰うのが当たり前。流石に顔には出さなかったが、本人が来ない事に不満はある様だな」
「さよか」
まぁ、三度目位か? 代理人で済ませたの。だって会いたくねぇもん。その代わり、袖の下は弾んだんだから勘弁してくれ。ってか、だからこその許可なんだろうけどさ。
「通行税と関税の割合も検討してた通りか?」
街ん中通ってこっちの街道に出る為に銀貨で2枚程度。商品の出入りは総額の2割の税がかかる計算だったが、まぁ、妥当な線だと思う。
そもそも、街道使って街中通るならって話だ。道なき道を行くならそんなもんは掛からんのよ。
「流石に、そのへんのバランスはある様だ。伊達に領主などやってはいないと言った所だろう」
そら良かった。優秀な領主である事はニーズヘッグの一件で分かってはいたけどさ。今後は関わりの薄い隣人として適度な距離を保っていければ良いと思いますな。
「じゃ、後は街道通して町作ってと、そう言や関所も作らんとあかんか? うん。頑張りますかね」
やること多いよな、いや、一人でやる事じゃねぇんだがよ。今ん所一人親方状態なんな。そう思って溜め息を吐いていると、エクスシーアは面白そうに口元を歪めた。
「と言うか、流石だよ我が君」
「何が?」
「先に魔人族国の方に話を通しておいた事だ」
ああ、いや、先にエリスの方から来たってだけなんだが? でもまぁ、先に国外の関税率の話が通ってたからこその、あの税率なんだがね。もちろん、国王には通達済み。
税率も含めて、『好きにやったら良い』との事。そう言えば俺の作ってる町、実質無課税だったわ。つまりは自治領みたいな物って訳だな。
国王がこれだけ譲歩してくれるのは俺個人の武力を認めているからだろうな。色々と情報は集まってるだろうし……これが、ただの伯父バカでない事を祈りたい。
本当の伯父では無いが。
それは兎も角、国内行くより国外に行く方が安いとか、そら公都なんざ通過しないだろうわな、ってぇ話。第一、ここでこの話こじらせたとしても、別の領主に話持ってくだけだし。
例え、ギリギリでも利潤が出るって言うなら、そんな話を他の領に持っていかれる方が損だからな。そのおかげで吹っ掛けるって事も出来なかったんだろう。
同じ国の領地なのにどちらかと言えば隣国風味と言うな。
「渋々でも、書面としてしたためられていれば、こっちのもんだし」
書面は正義。有効に使ってる限りは。
「だから、“流石”なのだよ。我が君。例え偶然が絡んでいたとしても、それを踏まえて利益に出来るのなら、それは優秀な為政者と言う物だ。そう言う意味では似ているのかもしれないがな」
「……えぇ」
多分生きてきた中で一番渋い顔をしてる自信が有る。今。




