好意の方向
グーテンシュバッソは中々に直情的な性格らしい。いや、少年らしい少年と言うべきだろうかね? ジョンとかそういうタイプと同じで。
『そんなのだめだ』ってのは、ティネッツエちゃんを連れていくって事に対してだろう。イヤ俺だって本気でティネッツエちゃんだけを連れて行こうとか思ってた訳じゃ無いんじゃがね。
連れて行く時は、親御さんとも話をして、家族で移住する気は無いか考えて貰ってから、その上でオッケーが出ればって、そう言う事じゃなく。それも考えてはいたが、違くて。
喧嘩や揉め事を起こす様な輩を連れてく位なら、ちゃんと言う事を聞いてくれる人の方が良いって意味だかんな?
「この幼女気に入った、これから俺の女にしてやる」的な意味じゃないからな?
何か、コボルト共の反応見てると、勘違いがあるようにしか見えんのじゃが。違うからな? だからラミアー、俺の頬を引っ張るのやめてくれ。
「だから、おまえみたいなやつに、つれてかれたら、どんなめにあうのかわからないし……」
「いや、行く行かないはティネッツエちゃん本人の意志の問題だし、お前に言われなきゃいけん事じゃないだろ? 第一、『おまえみたいなやつ』ってのは飽く迄、お前の主観で有って客観的評価じゃない。そう言う意味なら、俺は何も他人に恥じるような事なんざしちゃいないし、お前みたいなやつとか言われるほど、親交が有る訳じゃないはずだが、俺の何を何処まで知ってるって言うんだ?」
そう言われて、グーテンシュバッソが口篭る。
まぁ、十中八九、コイツがティネッツエちゃんが連れてかれるのを阻もうとしてるのは、大なり小なり、この娘に好意を抱いてるからだろう。
つまりは嫉妬心。同年代で気になるあの娘が居れば、男子諸君なら必ずかかる必患の患い。
可愛いあの娘に、ついちょっかいを掛けちゃうてぇアレだ。
グーテンシュバッソが、そんな感じにティネッツエちゃんにちょっかい出してるかは知らんが。
ただ、俺に反発したいだけって可能性もあるが、チラチラ、ティネッツエちゃんの方を見ながらな感じ、前者なのは確実だと思う。
エモいのう。遥か昔にどこぞに置き忘れた感情やなぁ……
おっといかん! 俺、今はまだ幼児だ!! 枯れちゃダメだ、枯れちゃダメだ、枯れちゃダメだ、枯れちゃダメだ……
俺の青春はまだ始まってなかった!!
ふう、危ない所だった。このままでは、再び魔法の使えない魔法使いに成る所だったぜ。
「だって、おまえこどもだし!! ティーだって、まだこどもなんだからな!!」
「才能の有無と年齢の幼さは関係ない。才能を上手く使える様に導くのが先人の仕事だ」
「ウグッ」
感情で反対はしてても、理屈は飲み込めるんな。まあ、あんまり正論で追い詰めるのも何だし、この辺にしとくか。
「別に、必ず連れて行くって言ってる訳じゃない」
希望を見出したかの様なグーテンシュバッソと何故かガッカリするティネッツエちゃん。いや、何となく俺に対して好意的なのは感じてるが、多分敬愛的なそれだと思うぞ?
だから頬を抓るのは止めてくれラミアー。お前が俺に纏わり付いてると、ファティマの機嫌が悪くなる。
「ただな、ティネッツエちゃんは、優秀だ。そう言う意味では付いて来て貰いたいとは思ってる」
「なっ!!」
「だがそれも、さっき言った通り、ティネッツエちゃん本人の意思と親御さんの許可有っての事だと思ってる。つまりはそれ次第だ」
俺の言葉に、希望を託すかの様にティネッツエちゃんを見るグーテンシュバッソ。
だが、肝心のティネッツエちゃんは、そんな視線には気付きもせずに、口を開いた。
「わたしは、とーるさまといっしょにいきたいです!!」
途端にその瞳を絶望の色に染上げるグーテンシュバッソ憐れ。
今までどんなアプローチをしてたか知らんが、ティネッツエちゃんの中の評価は、そんなもんみたいだぞ?
ただ、マイナス感情は感じられないから、まだゼロってだけの話で、これから育てて行けるかもしれん。好意の反対語は無関心だって話もあるが、マイナス感情よりは良いと思っとけ。
が、そうなると、近くに居れないってのは致命的な急所になる。
ティネッツエちゃんの両親との話し合い次第になるが、グーテンシュバッソも、パパン、ママンを説得できなければ、それっきりになる可能性大だ。
俺には応援以外の事ぁできんが、兎に角頑張れ!!




