各々言い分は有る様だ
ケルブの背に乗っかって、ファティマと一緒にコボルトの村に着いた時、真っ先に迎えてくれてのはグレッソチューンでも、ゲーグレイッツァでもなかった。
「お、おまちしておりました」
緊張の為か、顔を赤く染めたティネッツエちゃんが俺に挨拶をする。ってか。
「肌の色!!」
「はい!」
青ではない。普通の肌の色。
「そうか、成し遂げたんだな!! がんばったなぁ!!」
「はい!!」
思わず頭を撫でた俺に、一瞬驚いた様に目を瞠ったティネッツエちゃんだったが、その後、頬どころか肩口くらいまでをさらに赤くして、嬉しそうに目を細めた。
抜ける様に白い肌のせいか、赤味が目立つ。
と、俺の背中から抱きすくめてくる白い腕。
「むう」
「ラミねーさま!!」
居たのかラミアー。気ままに神出鬼没だなコイツ。何か猫みてぇだよな。
ラミアーっつったら蛇じゃないんじゃろか? 蛇の性格なんざ知らんが。
『【警戒】少しべたべたしすぎではないですか? 個体名【ラミアー】は』
……え? 個体名なん? 種族名じゃなくて? なら種族名は何なんじゃ?
『【回答】種族名【吸血鬼】かと。それはそれとして、引っ付きすぎでは? マスター』
……コイツ、日中も動き回ってるよな。つまりはデイウォーカー?
『【返答】おそらく【真祖】ではないかと。強力な【超能力】で身を守っているのだと……ですので、ちょっと距離を取った方が良いと愚考します。マスター』
ちょっと超能力で身を守っている事と、離れないといけない理由についての関係性が分からんが、確かにちょっと動きづらいやな。
「ラミアー離れろ」
「むう!!」
頬を膨らませながらも、ちゃんと離れてくれはするんよな。後でプラーナあげるから、今は離れててくれ。マジでファティマがおかんむりだし。
聖武器、能力のある相手には基本友好的なんだが、ラミア―の場合、人間よりも魔物寄りな上、当初は俺を利用しようとしてたせいか、あんまり好かれてないんよなコイツ等に。
それでも一応、捕まってたファティマ達を助けたのはラミアーだし、俺が、その行為を放置してる事も有って、あんまり五月蠅くは言わないんだが、それでも我慢できなくなる時があるらしい。
何だろうな、前もあったが、この修羅場風味。八方美人で優柔不断な真似をしてるつもりは無いんだが、何でこうなるんだか。
うん。取り敢えずは気分を変えて行こう。
「グレッソチューンか、ゲーグレイッツァは居るか?」
「えっと、はい。いるにはいるんですが……」
何か歯切れが悪いなティネッツエちゃん。何かあったんじゃろか?
******
本格的にアホじゃねえかと。
「すみませんオジキ! このガキがあまりにも分からんちんで!!」
「はあ? そっくりそのまま返すわオヤジ!! 手前ぇこそ、大人しく代表続けてれば良いだろう!?」
包帯ぐるぐる巻きで罵り合う親子。言い合いから発展しての大喧嘩でお互いに身動き取れなくなった挙句にこれって。
奥さん困り顔でオロオロしとるんじゃが? 取り敢えずおまいら、強制プラーナ注入な?
二人してひっくり返してからの首筋鷲掴みで、強制プラーナ注入での高速治癒。注入量マシマシで。
「うひゃあ!?」
「うほう!!」
奥さんすらドン引きの弛緩した表情を晒しての回復で、二人の負った怪我を治癒しとく。
「あのな、俺は諍いの種を撒きに来たんじゃねぇし、させたくもねぇのよ。そうやって大喧嘩するんなら、おまいら二人は連れてかんからな?」
「ええ! そんな!!」みたいな目で見てくるけんどもよ。普通に考えて、態々喧嘩の火種になる様な輩を何で連れてってもらえると思うんよ。
「おまいら連れてく位ならティネッツエちゃん連れてくわ」
俺がそう言うと、ティネッツエちゃん本人は少し驚いたような顔をした後、赤くなってモジモジし始め、グレッソチューンとゲーグレイッツァは、何か複雑そうな表情をした。
「そんなのだめだ!!」
あん? 張り上げられた声の方を向くと、何てったっけ? グーテンモルゲンみたいな……ああ、思い出したグーテンシュバッソだグーテンシュバッソ。
窓の外から室内へ身を乗り入れて俺を睨んでる。
駄目だ、ね。そう思うんなら納得できる理由を示してもらおうじゃん? なぁ。




