準備は進むよどこまでも
件のナントカ侯爵が家の商会に触手を伸ばしてきてたのは、豚商会が機能不全を起こしてるから、代わりに手足に成る商会が必要だったって事も有るが、エクスシーア商会が成長著しいとは言え、まだ新規の商会で、その後ろ盾と成って居る俺が十代の若造(公称)で、付け入るスキがあると思ってるからだ。
まさか、若造の俺が国をまたいで活動して居る様な諜報組織と伝手があるとか、公爵様の第二婦人と伝手があるとか、ましてや聖王国の公爵令嬢と伝手があるとか思ってもみなかったんだろうな。
最も真実は、ナントカ侯爵が思っているよりも更に若造ってか、幼児だし、実は国王にも伝手がある訳だがな?
まぁ、俺と国王に関しちゃ、一応内密な関係って事になっている訳だけど、ちょっと調べれば……いや、ルーガルーのジジイが居るんだ。根性ババ色で腹黒な上に性格がねじ曲がっちゃいるが、能力だけは高いからな、あのクソジジイ。
アレが動いてる以上、情報が洩れる事は無いって事か。裏でどれだけ消された人員がいるんだろうねぇ、くわばらくわばら。
それは兎も角ナントカ侯爵との決着は一応ついた。向こうが腹ん中で実際、どう思ってようとだ。国ん中でどれほど影響力があったとしても、周辺諸国の全ての貴族までどうこうは出来なかったって事だぁね。
特に、美容に関する女性の貪欲さに関しては、特に、ね。
おかげで、こっちは売上と賠償金で、懐が温かくなりましたとも。ありがとうございました。
これから、色々と物入りだったんで助かりましたよと。
さて、そろそろ、大工の募集と入植者の募集を開始しますか。
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街に、ね、入植者が来てたんだわ。
いや、それ自体は嬉しい事なんだがね。まだ募集は掛はしたけれども、受理されて掲示される前なんだが?
まさか来るとは思わなんだぞドワーフ。
「なに、お前さん所は、随分と色々面白そうなもの発注してくれるんでな、ましてや今、街を造っとると言うではないか。なら、ワシらの手が必要かと思ったんでな!」
どうやら、エクスシーアやマァナから話を聞いて来てくれたらしい。
とは言え、だからって、いきなり来てるとは思わんかったわ。大森林の中だぞ? ここ。良くこんな所まで来れたよな。街道整備もこれからなんじゃが?
そう、ドワーフ達、自力でここまで来てたんよ。それも家族連れで。見た所冒険者を雇ってる様子もないし。
いや、冒険者を雇ってれば来れるってレベルの場所じゃないが。
とか思ってると、ドワーフの親方、呵々大笑して「やわな人間種とは違うさ」と不敵に笑って言い切ったもんだ。まったく、頼もしい事で。
「良いが、まだ住居すら出来てないぞ?」
俺達もキャンピングカー暮らしだしな。
「場所だけ指定してくれたら良い。むしろ窯から作れる分、こっちにとっても都合が良いわい」
そう言う事ならと、外周付近の、出入り口にも近い場所を指定して於いた。材料の搬入とかあるしな。将来的には冒険者ギルドとかも近くに作りたい。素材とかの解体もこの一角でやってもらいたいし。
そして運び込まれる酒樽と酒樽と酒樽……いや、酒樽だけでどんだけあるねん。最終的に運び込まれた酒樽は持ってきてた荷物の実に三分の二に及んだわ。その癖、野営に関する荷物は一切無いと言うね。
「何を言う! 酒樽は中の酒は飲料水だし、椅子にもテーブルにも出来るだろう。それに空に成れば薪にだってなるんじゃぞ!! は? テント? 大地がありゃ寝転がれる、それで問題ないんだから、そんなモンいらんわい」
もう、ね、どっから突っ込めば良いんだか。これが、むくつけきおっさん共だけなら良いんだが、どうも奥さん連中も子供達も同意見らしくうんうん頷いてる。良いんかドワーフ。おまいらの生き方それで。
いやまぁ、そっちがそれで良いってんのなら、もう俺に言う事なんざ無いんだがよ。
取り敢えず、掘って余ってる残土とまだ乾燥しききってない材木ん所に案内しとく。
「これ使って貰ってかまわんから」
「う~ん。石材なんかは無いのか?」
石材ねぇ、そっちはコボルト連中が来てからと思ってたから手を付けてなかったんだよな。
「すぐに必要か?」
「防壁造りにゃ必要だろうが」
そう言やそうか。まだ、2m程度の土壁しかないしな。早急にグレッソチューンかゲーグレイッツァを呼んで来んといけんか。




